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気候変動メディアシンポジウムに参加してきました!

こんにちは!actcoinの堀井です。
1月31日渋谷のスマートニュース社のイベントスペースにてオフラインのみで行われた気候変動メディアシンポジウム(主催:一般社団法人Media is Hope)に参加してきました。Media is Hopeはメディアと企業・視聴者をつなぎ、気候変動に関する報道の活性化に取り組んでいる団体です。actcoinではデイリーアクションのカテゴリー「気候変動解決に向けて」のアクションの監修を担当してくれていることもありますが、この日はメディアを視聴する市民の一人として自分ができるアクションのヒントが得られたらと思い足を運びました。
 
会場には120人近くの参加者が集まり、メディア関連の方々の参加が多いようでした。登壇者はメディアの方を中心に国際機関、専門家、市民と幅広いセクターから参加していて、とても興味深く感じました。

◾️登壇者
<メディア関係者>

・香取啓介氏(朝日新聞 編集局科学みらい部次長)
・石井百恵氏(テレビ新広島 報道部副部長・SDGs関連担当記者)
・八田浩輔氏(毎日新聞 ニューヨーク支局専門記者)
・大庭美菜氏(ライター・エディター、Jane Goodall Institute Japan / 元VOGUE JAPAN)
・熊田安伸氏(スローニュース プロデューサー、J-Forum/D-JEDI理事)
・大竹紘子氏(ハースト婦人画報社 サステナビリティマネージャー)
・新町真弓氏(講談社FRaU事業部長・FRaU Web編集長)

<国際機関>
・国連広報センター 根本かおる所長
・Covering Climate Now* CO-FOUNDER Mark Hertsgaard氏
 *世界50カ国500以上のメディアが参加する気候変動報道連携プラットフォーム
<科学者や専門家>
・江守正多氏(東京大学 未来ビジョン研究センター教授、気候科学者)
・今田由紀子氏(東京大学 大気海洋研究所准教授、イベント・アトリビューション専門家)
・夫馬賢治氏(株式会社ニューラルCEO、サステナビリティ経営・ESG投資の専門家)

<企業や実践者>
<市民(視聴者・読者)>

・小林 悠氏(小学校教員、「#暑さの原因報道して」署名の発起人)
・一般社団法人Media is Hope 共同代表 西田吉蔵氏/名取由佳氏

気候変動報道のメディア連携の重要性とは?

2022年に始動した1.5℃の約束(Media is Hope提供)

最初のセッションではメディア連携について国連、メディア、専門家それぞれの立場からの想いが語られました。2022年に立ち上がった国連広報センターと有志のメディアで推進されたキャンペーン1.5°の約束は、国連としても他の国で例のない初の取り組みだそうです。本来競合となるメディア同士が「気候変動を止め、未来に豊かな地球を残す」という一つの目的のために連携をしていることにとても希望を感じました。

実際に視聴者はキャンペーンを知ったことで危機感や自分ごとと捉えるようになった。という意識の変化が現れているという調査結果も発表されました。ただ2年目になっても意識の変化から行動変容がおきた様子は見られませんでした。しかし接触したメディアの数が多ければ多いほど行動につながる可能性が高い。というポジティブな結果も見ることができ、メディアが連携し多様な角度で気候変動を報道することが人々の行動変容にとって効果的かつ重要なのだと感じることができました。

印象的だったのは、気候変動が人間活動によることを知っている人の9割近くがテレビ、ラジオからであり、全体で見ると若者の方が知らないという事実です。従来のメディアだけでなく幅広くメディアが連携することが必要です。

気候変動報道に必要なこと

セッション2では署名活動、雑誌、新聞などで気候変動を取り扱ったことで見えた希望や課題について話を聞くことができました。登壇者の一人である小学校教師の小林さんは、暑さのため夏に校庭や体育館で遊ぶことができない子供達の環境の変化に危機感を覚えたことで、海外ではトップニュースで報道される気候危機の報道が日本で少ないことに違和感を感じ、メディアに対して気候変動を報道するよう求める「#暑さの原因報道して」という署名を立ち上げました。現在18,285名の賛同を集めています。このように市民が声を上げることも、見られないトピックは取り扱えない。となりがちなメディアを後押しする大きな力になっていると感じました。

気候変動の報道に対して視聴者からポジティブな反応が得られたという報告もある中で印象的だったのは、毎日新聞ニューヨーク支局の八田さんによる日本の報道に対する課題意識でした。日本の報道数自体は多いけど、どれも広く浅い。ガーディアンのように深く長い記事が必要なのではないか?さらには、格差、差別、貧困、ジェンダーに絡めた気候変動の記事がすごく少ないこと。また、マイボトルなど「​​一人一人にできること」というメッセージが強くなり過ぎているという指摘も。もっと根本的な社会システムの話や、利他や地球の裏側の人に想いを巡らせるような記事が今後必要だと話されていました。

他にも専門家による「気候変動が偶然ではなく温暖化が原因だという証明をする研究についての発表」もありました。気候変動に対して知っておきながらどこか懐疑的な人たちにこの課題を届けるためには、科学者や専門家の裏付けと共にメディアが警鐘を鳴らすことが重要だと感じました。

メディアが企業として取り組む脱炭素化

セッション3では報道するメディアの説得力に大きく影響するであろう、メディア自身の脱炭素化の取り組みについてMedia is Hopeによる調査結果や実例が紹介されました。「気候変動問題の担当部署の有無」「自社による再エネの導入は?」「自社の温室効果ガス排出削減目標の設定はしているか?」などが問われ、回答した32社のうち18社が自社での再エネを導入していたり、担当部署には社長やCEOなど経営層が自ら担当しているところが多いことも驚きでした。メディア企業が率先して実行していることで気候変動の報道がより力強いメッセージとなり他の企業に影響することを期待したいと思います。かつては企業の中でもマイノリティだったが、今ではサステナビリティ部門に30人以上も人がいる。という企業内の嬉しい変化も聞くことができました。

気候変動に警鐘を鳴らすメディア自身はどう取り組んでいるのか、自社使用電力に100%再エネ導入のメディアも。一斉アンケートの結果を公開!

気候危機のソリューションジャーナリズムと視聴者・市民としてできること

マーク・ハーツガード氏のビデオメッセージを試聴する参加者

最後は、気候危機の本質的な問題と解決策を示すソリューションジャーナリズムについてCovering Climate Nowの共同代表マーク・ハーツガードさんからのビデオメッセージを聞いた後、メディアと企業、視聴者がどのように連携するべきか、登壇社と参加者が意見を交わすディスカッションが1時間ほど行われました。「市民がどのようなアクションを起こすとメディアは取り上げやすいのか?」というテーマで中海テレビの事例を参考に、地域と企業と住人で考える場の必要性など様々な意見が挙げられていました。

Media is Hope AWARD 2023下半期・年間賞を発表!

会の最後にはメディアとして気候変動を伝えることに大きく貢献した方々がMedia is Hopeより表彰されました。1月のKANPAI for GOODのゲストに来てくださった田村祥宏さんは昨年公開された映画「Dance with the Issue」で年間作品賞を受賞されました。actcoinに関わってくださっている方のソーシャルアクションが評価されとても嬉しく思います。actcoinもプラットフォームとして、このようなメディアの方々の素晴らしい取り組みを知ってもらえるよう連携を積極的に進めていきたいと思います。

【Media is Hope AWARD2023 受賞者一覧】
<2023年 下半期>
個人賞:テレビ朝日 山口豊氏
媒体賞:東京新聞
<2023年 年間>
個人賞:ハフポスト日本版 中田真弥氏 / 日刊工業新聞 松木喬氏
媒体賞:朝日新聞社
ソリューション賞:ハースト婦人画報社
ソーシャルメディア賞:露木しいな氏 / RICE MEDIA
ワールド賞:毎日新聞 八田浩輔氏
作品賞:映画「Dance with the Issue」(監督:田村祥宏氏)


受賞者のみなさま

おわりに

視聴者として特に印象的だったのは、マーク・ハーツガードさんが最後に力強く伝えてくれたメディアがすべき2つのポイント。「気候変動の事実を伝えること。そして、変化を生み出すためには政治の協力が必要なことを伝えなければいけない。」ということでした。日本では政治の話があまり日常的にされない空気感がありますが、そのことで投票率が低く大きな変化を埋めないままここまできてしまったように感じます。メディア間だけにとどまらずメディアと市民が連携し、気候変動をトップイシューとして政策に取り入れることの重要性や、実際に政策として打ち出す議員について知れるような報道を盛り上げていけたら今までにない大きな変化を埋めるのではないでしょうか。ムーブメントにまだ伸び代がある日本だからこそ起こせるポジティブな変化に向けて市民としてできることを考えていきたいと思いました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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