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NEWS PICKUP: 自然とデザインをつないで考えるためのヒント 1月

あけましておめでとうございます。

昨年は、フードフォレストの土壌をつくったり、デザインラボの設計を進めたり、南アルプスのふもとに手に入れた森で、自然とともにつくるための種まきをそろりそろりと進めてきました。本年は、少しずつその芽が出ていく様子を、日々の活動のレポートやリサーチを通して発信してゆきます。本年も、どうぞよろしくお願いします。

新年最初のnoteは自然とデザインをつないで考えるためのヒントをピックアップする「NEWS PICKUP」。デザイン、アート、ビジネス、環境活動、サイエンス等の領域を横断し、ACTANT FORESTメンバーそれぞれのリサーチに役立った情報を集めました。

ロンドンのリワイルディング計画や、パレスチナで農業/芸術/科学の融合を試みるアートコレクティブなど、メンバーの今年の気になるトピックを紹介します。

01:パレスチナの自然保護区、文化の再構築を目指すアートプラットフォーム

今年のターナー賞最終候補となったCooking Sectionsが、ガザ空爆を受けたパレスチナへの連帯として、賞金をすべてSakiyaに進呈するというステイトメントを発表した。Sakiyaは、アーティストのニダ・シンクロノットらが設立したアート/科学/農業の分野を横断するレジデンシープログラム。パレスチナ、アイン・キニヤ村の自然保護区を拠点に、自給自足的な農業や暮らし、文化の学際的な研究・実践・教育活動を行っている。イスラエルの占領がもたらした農地の収奪とモノカルチャー化、新自由主義と都市化の進行。これらに対し、土地の修復/農業の実践を起点に、現代のアートや科学を結びつけることで、失われつつある伝統的な知識文化や協力関係を再構築し、持続可能性を育もうとする試みだ。


02:ベルリン街路樹の水やりをデジタルで管理するプラットフォームGieß den Kiez

Gieß den Kiez(日本語にすると「近所に注ぐ」)は、樹木への水やりをコーディネートするプラットフォーム。ベルリンの樹木が、樹齢、樹種、水の需要、などの個別情報とともに地図上にマッピングされていて、枯れる危険度の高い木々に対してのメンテナンスを市民に呼びかける仕組みだ。ベルリンの街路樹・植木の625,000本が、インタラクティブに可視化されている。市民は、近所のどの木に水が足りてないのかを知り、いつどれだけ水をやったかを記録することができる。また、特定の木を担当したい場合は、登録することもできる。日本の都市でも、同じような仕組みを導入できるはずだ。


03:飼育員はロンドン市民、バッタを再野生化するCitizen Zooの試み

ロンドンのCitizen Zooは一般の市民を飼育係として、かつてイングランド東部に生息していたバッタの生態系を復活させようとしている。「市民飼育員」というコンセプトのもと、「普通の人が自分の家で動物園の飼育員になって、バッタを繁殖・飼育する」仕組みをとる。講習を受けた飼育員(ボランティア)は卵と飼育キットを受け取り、数週間生育後に湿地帯に放流する。英国の自然保護団体や環境省からも支持を得て、絶滅危惧種の飼育プロセスを民主化するこの取り組み。まさにDIYリワイルディングとも呼べる活動だ。数年、数十年後、ロンドンの風景はどう変わるのだろうか、今後の動きにも注目したい。


04:ドイツの森が百家争鳴

ドイツの森が揺れている。ドイツは、元々林業が盛んな場所で、多くの森が林業を目的として育てられてきた。しかし、ここ数年続いた酷暑と干ばつ、虫害により、2018年から全森林の2.5%以上となる30万ヘクタール以上の森が枯れてしまった。原因の1つは林業に適した種類ばかりが植えられるモノカルチャー林業とされている。こうした森の再生を巡って、大論争が起きている。自然に任せてそのままにするべき。多様な木を植えて、強いものが残るようにするべき。いやいや、将来の温暖化を見据えて北米産の木を植えるべき。などなど、百家争鳴だ。国の規制や土地の所有、エコ運動なども絡んでくるから話は複雑になる。しかし、これまでのやり方を変えなくてはならないことだけは確かなようだ。


05:コントロールを他者へと手放す創造のプロセス

「elements(エレメンツ)」というプロジェクトの作品展示。そのPRを担当している友人に誘われて渋谷の東にあるMethodのギャラリーを訪れた。関西を拠点とする建築家の井上真彦、アートディレクターの置田陽介、グラフィックデザイナーの横山道雄の3人による共同プロジェクトだそうで、予め綿密に計画するのではなく、三人の創造性をかけ合わせながら半分偶然に任せてスタディを進めるスタイルをとっている。他者性に開き、主体のコントロールを潔く手放す風通しの良さが、三人のセンスと相まって、見たことのない造形に結びついていた。そして、そのプロセスそのものが楽しげに見えることになによりも心を動かされた。自然という他者に開いてデザインリサーチを進めるACTANT FORESTの参考として、今後も注目していきたい。


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