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利き手骨折!ギプスで挑んだ小学校受験(後編)

10月校に無事合格をいただき、あと2週間ほどで本命の試験を迎える頃、
手術で切開した傷がギプスの中でかゆくなってきた。
痛さよりも耐え難いと訴える娘。
ギプスと皮膚の間に細い棒を入れて優しく掻いてやることしかできない。

一校合格をいただいたことで少し心に油断が生まれてしまったか、
頑張りに限界が来てしまったか、ここにきてスランプを迎えてしまった。
手術をしてもしっかりこなしてきたはずのルーティーンがこなせない。
ごねる娘。焦る私。

今まで右手で簡単にできてきたことができないつらさ。
必死の練習でできるようになったことが一瞬でできなくなったやるせなさ。
娘を理解してやりたいのに、試験を前に焦ってしまう。
術後は結果はどうでもいいと思えたのに、色々克服できるようになるとまた欲が出てきてしまう。どうしようもない母だ。つくづく自分が嫌になる。

幼児教室の先生にアドバイスを求めた。
「今までしっかり積み上げてきたでしょう。どんな時も休まずに二人三脚で頑張ってきたでしょう。大丈夫。自信を持って。リラックス、リラックス。」
先生の言葉に救われた。そうだ。頑張ってきたんだ。
結果はどうなっても後悔しないと思えるほどに、頑張ってきたんだ。

ストップウォッチを持って最後の仕上げだと思っていた演習問題はやめて、
頭がなまらない程度の簡単な数や言葉のペーパー、迷路、点図形など楽しくできるものに変え、あとは体を動かしたりお手伝いをさせながらポジティブに楽しく超直前期を過ごすことにした。

10月31日、第一志望校前日。
試験前最後の受診日に奇跡が起きた。
なんとレントゲンの結果、骨がくっついたので骨を留めていた3本の釘を抜き、ギプスを外してくれた。
久々の自由。痒い所が自分で掻ける!
試験の時は軽く腕を固定したほうが安全だとシャーレを用意してくれた。
もちろんまだ手に不自由さは残るが、ギプスに比べれば格段に楽になった。

11月1日、第一志望校試験日。
最寄りの駅を降りて、志望校までの道のりを手をつないで歩いた。
何度も下見に来た、姉が通うあこがれの学校。
「私もおねえちゃんと同じ学校に行きたい」と夢見て頑張ってきた。
校舎が見えてくると、それまでふざけていた娘は背筋を正した。
守衛さんに大きな声でご挨拶をし、受付を済ませる。
「行ってまいります!」と満面の笑みを浮かべ、試験会場へと入っていった。大丈夫だ。きっとしっかりやってくる。会場で娘を待つ私の心も穏やかだった。

晴れやかな顔で帰ってくる娘。
どんな試験だったか、どんなに楽しかったかを話し出して止まらない。
「できなかったこともあったけど、精いっぱいやってきた。
絶対絶対、お姉ちゃんと同じ制服を着るんだ。」
朝は一歩一歩、覚悟しながら踏みしめた志望校までの道を、
戦いを終えた娘は、軽やかなスキップで戻っていった。

合格をいただいた後に、姉が「これ見て」と妹の机の引き出しから
一枚の紙を持ち出してきた。
そこには、
1 やるときわやる
2 がんばればできる
3 なかないでつずける
と、5歳の覚悟が綴られていた。
どうやって小さな我が子が、こんなに逞しく困難を克服していけたのか、
そう思うと胸が熱くなり、涙が止まらなかった。

小学校受験は「親の受験」と言われるが、それだけではない。
もちろん親のリードは必要だが、幼い子供達の底力を侮るなかれ!
子供の力は無限大!

結論。入試直前に利き手骨折をしても、合格することはできる!

もし同じ経験をされる方がいたら、どうかあきらめずに心を整えてほしいので、以下どのように問題解決にあたったかをまとめておく。

①医師に入試を控えていることを伝え、治癒経過の予測を聞く。
どこまではできてどこからはできないのかをある程度把握しておく。
②志望校に電話連絡を入れ、試験日前後の医師による状態予測を伝えておく。
⇒学校によって様々な指示がある。
診断書を必要とする学校、試験前日に最新の状況の報告を求める学校、「了解しました」だけの学校。
③医師にどこまで負傷部位を動かしていいのかを確認し、できることを続けていく。
④焦らず、家族でできることを最大限に準備する。
⇒面接で骨折について聞かれたときに、家族一丸となって困難を克服できる家庭であるとわかってもらえるように。それぞれの家族がどういう役割を担ったのかを明確にしておく。
⑤子供に「挑戦できること、挑戦してはいけないこと」の境目を教えておく。
⇒試験を受けるのは子供。先生に「これはやめておこうか」などと言われてもできることには「やらせてください!」できないことには、できないながらも他にできることを探して提案できるように教育しておく。

また、親も子供も「こんなことでは負けない」「大丈夫だ」と思えるようにするには、やはり年長の9月までにやり残しをなくし、苦手を最小限にしておくことが肝要。心のゆとりが自信を生み、困難の克服に一役買ってくれるはず。






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