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小説・物語食卓の風景

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郊外で何不自由なく暮らしていたリタイヤ男性が失踪。家族や周りの人たちの戸惑いを軸に、家庭によって異なる家事のあり方について考えます。育児真っ盛りの娘、子どもがいない夫婦の姉、シン…
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物語食卓の風景・夫婦の時間①

物語食卓の風景・夫婦の時間①

 真友子はさっそく航二の行動を観察することにした。美紀子と別れて家に帰ったら、航二が風呂に入っていて、スマホがダイニングテーブルに置いてあった。いくらなんでも心の準備ができていない、とドキドキしながら真友子は寝室に入って上着を脱ぎ、ペンダントを外す。

 シャワーの音が止んだ。そうか、今日は私がいないからシャワーにしたんだ。お風呂ぐらい洗って入れてくれたらいいのに、あの人は私の帰りが遅いとシャワー

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物語食卓の風景・東京の2人⑩

物語食卓の風景・東京の2人⑩

 帰る道々、真友子はじっくりと考えてみた。あの航二が浮気? 確かに私たち、セックスレスになって長いし、家族ではあるけれど、夫婦と言えないような感じになっていたかもしれない。いるのは当たり前なんだけど、特別「この人が好き」とかもう思わないし、日常を共有できればそれで満足していたような気がする。夫婦なんてそういうものかと思っていたけど、違うのかな。ふつうの夫婦って、どんな関係なんだろう?

 航二は最

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物語食卓の風景・東京の2人⑨

物語食卓の風景・東京の2人⑨

「というわけで、真友子、会えば何か展開することがあるし、心に引っかかっていることがなくなる可能性もある。お母さんと会うかどうかはともかく、少なくとも妹さんと会って話したほうがいいんじゃない? 出張のついでだったら気軽に会えると思う」と美紀子。

「そうですね。ついでの数時間なら。母はねえ、会っても関係が変わらないような気もするんですよ。あの人、人の話を聞かないし、私には重い。また嫌味を言われるんじ

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物語食卓の風景・東京の2人⑧

物語食卓の風景・東京の2人⑧

 美紀子は夜の道を自転車で帰りながら、先ほどの由芽の話を思い出していた。

 あの子、本当にしっかりしていたわ。あの樹にあんな娘がいるなんて。それに窓ふきが好きなんて、私には想像がつかない。きっと奥さんは、相当頭が良い人ね。そういう人に出会って感化されたから、家事に協力的で社会派のディスカッションを楽しむような人になったのね。私といたらきっと、家事のことでケンカしてばっかりだったんじゃないかしら。

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物語食卓の風景・東京の2人⑦

物語食卓の風景・東京の2人⑦

 美紀子は、元夫の佐藤樹の娘、由芽に先日会ったときのことを思い出す。あれはよく晴れた春の日だった。空気も爽やかで、何だか楽しい気分になっていく。「今日は自転車で行こう!」と思い立ち、約束した店へ向かう。

 由芽は指定したカフェに座って待っていた。緊張した面持ちで、店内をキョロキョロしている若い女の子の姿は、ドアを開けてすぐわかった。

「お待たせしました。長沢美紀子です。佐藤由芽さんですか?」

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物語食卓の風景・東京の2人④

物語食卓の風景・東京の2人④

 美紀子は口を開いた。

「実はこの前、元夫から呼び出されたの」

「そうなんですか!いったいどういう話で?」

「彼とは長い間連絡を取り合っていなかったんだけど、兄から様子を聞くことはたまにあって。故郷の大阪に戻り、もといた会社に再就職したらしいの。今度は実績を積んでいたので、カメラマンとして。それで再婚もして子供もできたらしかったの」

「なんか彼、幸せになったっぽいですね。えー、ずるい」

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物語食卓の風景・東京の2人③

物語食卓の風景・東京の2人③

 結婚と離婚、そして流産まで思い切って今まで黙っていた過去を話し始めた美紀子。そこで話すのを止め、食べかけのケーキにフォークを入れ、口へ運ぶ。ゆっくりと咀嚼し、お茶を飲む。目の前では、真友子が真剣な眼をして身を乗り出している。ここから先は、美紀子にとっても話しにくいところだ。お茶が口の中に残った甘い断片を洗い流していく。

 その間にも、どのようにあの頃を説明しようか、考えを巡らす。今となっては遠

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