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摂りすぎたカロリーと無駄遣いの果てに

前回のサムギョプサル肉戦(にくさ)から約4ヶ月。わたしたち三姉妹は鶴橋に降り立った。

神戸のアフタヌーンティーにも旬のフルーツを使ったパフェにもオシャレなランチにも何度も気を取られそうになったが、"韓国のチキンを食べる"という目的のもと、4ヶ月ぶりに鶴橋に来た。

わたしたちは、わたし(長女)と1歳違いの双子(次女、三女)というめずらしい姉妹構成だと思う。歳が近すぎるから数え切れないほど喧嘩もするが、歳が近すぎるゆえに一切気を使うことも無く学校の友達よりも仲が良い。

自由気ままで食べることが大好きな3人は、「今日はいっぱい食べよう!」というわたしの掛け声のような言葉と"美味しく食べればゼロカロリー"という三女のモットーを掲げ、電車を降りた瞬間から「ご飯ください」と言いたくなるような匂いが立ち込める焼肉ロードを超えて目的のチキン屋さんへ辿り着いた。

空腹と欲望に任せて食べたいものを食べたいだけ注文し数分待つと、続々と注文した食べ物がやってくる。

いただきます!!!と3人で手を合わせ、ひとつのお皿に一斉に手を伸ばす。

まずはトッポギ。甘い、けど辛い。コレが癖になる味。オデンが入っていることに心の中で拍手をしながらこっくりと甘辛いタレに絡んだ弾力のあるトッポギを咀嚼する。うん、おいしい以外の言葉が見つからない。

お次はチーズボール。これはわたしがずっと食べたかったもの。上にかかったチーズ味のシーズニングとカリカリのドーナツ生地を通り過ぎたら醍醐味ののびるチーズ。これがおいしくない訳がない。ちゃんとのばしてはいチーズも恒例。

お次は餃子。皮がモチモチでサイズも大きい食べ応えのある餃子も言わずもがなおいしい。皮のせいなのか大きさのせいなのか日本の餃子とはなんだかちょっと違う。冷凍の王餃子を買うか一度真面目に検討。

そしてとうとうメインのチキンが到着。「腹減ってる時に一口だけ食べるともっと腹が減る」というハイキューの宮治のセリフを思い出しながらかぶりついたチキンはサクサク、いやザックザク。タレのよく絡んだヤンニョムチキンもザックザク。韓国のYouTuberの人が食べていた気持ちいい音がするアレとおんなじ!

食べ終わるころにはもう気持ちいいぐらいの満腹、満足。デザートまでぬかりなくという認識は3人共通だったようで、立ち並んだコスメのお店を廻り歩いてお腹をすかせる。

いい感じに満腹も落ち着いたところでデザート。選ばれたデザートはトゥンカロン。クリームもたっぷり挟まっていてぷっくりかわいいマカロンだ。

あれもいいな、これもいいなとショーケースに張り付いて選んだトゥンカロンはひとりひとつずつ。

メレンゲ生地とこっくりとしたチェダーチーズのバタークリーム、熱々のコーヒーがよく合う。わざと別々の味を選んでひとくち交換しよう!も恒例。次女が選んだあまじょっぱい塩キャラメルのトゥンカロンも、三女が選んだあっさりとしたバナナとイチゴのトゥンカロンもおいしかった。こうすると3つの味を楽しめるのだ。これは三姉妹で生まれた特権のひとつだと思う。

可愛い見た目の甘味に癒され店を出た。目をつけていたコスメも手に入れ帰ろうとする道中にも誘惑が沢山ある。

顔もわからないアイドルのグッズやなんとなく読めるハングルすら楽しい。異国の雰囲気漂うスーパーや商店街も。色んなところで足を止めながら辿り着いた最終目的地は韓国の輸入食品ばかりを扱うスーパー。

以前も70円でジュースを嗜んだことを思い出し、お目当てのジュースを手に取る。

50円のチルソンサイダーと、70円のぶどう味のボンボン。凍えるような寒さの中、わたしはシュワシュワのサイダーをごくり。味はスプライトのようなシンプルなサイダー。寒空の下で飲むのは苦行のようだが、見た目の可愛さで数十倍の特別感がある、そんな飲み物。

あれ、あれれ。

三女が以前飲んで忘れられなかったらしい梨ジュース(1.5リットル)と、マイチュウを我が家へのホワイトデーのかわりに購入。本当に抱えて帰るんかとわたしは引き止めたが三女の梨ジュースへの想いは頑なだったようだ。これで鶴橋での用事は終わり。早速マイチュウを開けて、ハイチュウに似てるだのどこかで食べたことある味だの言いながらわたしたちは帰路へつく。

プリクラとガチャガチャとUFOキャッチャーのために梅田に寄り道するのもお決まりだ。

電車の中で各々SNSをチェックしながら「今日も楽しかったな」「チキンおいしかったな」「また鶴橋に来よう」などとぽつぽつ話す時間はなんとも寂しい。これはわたしだけかな。同じ家に帰るのに。

わたしたちは食べている間、あまり話をしない。基本、「おいしいな」「な」以上。あとはお店で流れているこの曲を知っているとか知らないとか、後ろの人が山盛りのキャベツとチキンムをおかわりしていたとかそんなことぐらい。友達同士だと色んな話をして満足感を得るものを、わたしたちは好きなものを好きなように食べられる3人でお腹を満たして満足感を得る。それが最高にたのしくて心地いいという認識は3人共通だ。

そして家に帰ってまた「今日はたのしかった」「思い出しただけでアレは笑える」とあれこれ思い出してホクホクな気持ちになりながらお土産話を母に話す。

摂りすぎたカロリーとガチャガチャやUFOキャッチャーに費やした無駄遣いを振り返ればぎょっとするけど、カロリーや無駄遣いと引き換えにわたしたちは何物にも変え難い満足感を今日も得た。

わたしたちのおいしいとたのしいはいつも隣り合わせで、わたしたちの周りをゆったりと包んでいる。同じ家で予定を立てて同じ家を出て同じ家に帰る、そんなお出かけをあと何回できるだろうか。わたしたちが大人になっても、今と変わらないおいしいとたのしいに包まれていたい。

我が家にお土産にしたキムチと韓国海苔。狙いすましたように、今夜の晩ご飯はビビンバだった。

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