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デザインクオリティを素早く高める社内ユーザーテストのすすめ

こんにちは、プロダクトデザイナーのミカサです。

レシピ動画サービス「クラシル」を運営するdelyでは、ほとんどの新機能/改善施策のデザインプロセスにおいて、ユーザーテストを実施しています。
ユーザーテストは、プロダクト開発において、デザインの品質を高める上で非常に有効な手法です。

しかし、ユーザーテストの実施には時間的コストがどうしてもかかってしまいます。リリース前にうまくUIを設計できているかをチェックしたくても、「ユーザーさんを集めて本格的にユーザーテストを実施するにはリソースや時間を割く余裕はない。。。」といった状況もあるかと思います。

そんな場面で、できる限り時間的コストを省略してユーザーテストを実施するには、どうすれば良いでしょうか?

『デザインクオリティを素早く高める社内ユーザーテストのすすめ』
・前提:ユーザーテストとは?
・社内ユーザーテストのメリット
・社内ユーザーテストの具体的な進め方
・まとめ

前提:ユーザーテストとは?

ユーザーテストとは、被験者にプロトタイプを操作してもらい、自分たちが想定した通りに使えているかどうかを観察/分析するユーザーリサーチの手法の1つです。

ユーザーテストを実施することで、プロダクトのデザインフェーズで予想することのできなかった問題や、ユーザーさんが使いづらい箇所を発見することができます。

よって、本格的な実装に入る前(あるいはリリース前)に、発見しうる問題点を改善することで、クオリティを最大限まで高めた状態で新機能や改善施策をリリースすることができます。

言うまでもなく、ユーザーテストはプロダクト開発においてデザインの品質を高めるためには欠かせないものです。

しかし、当然ながらユーザーテストを実施するには被験者を集める必要があります。社員の友人や知人、実際にサービスを利用しているユーザーの皆様を対象に募集をかけたり、リクルーティング会社に依頼するなど、一般的に「リクルーティング」と呼ばれるステップがもっとも時間がかかります。
「募集開始→日程調整→諸々の事前準備→テスト実施日」までにトータルで2週間は必要になるでしょう。

どうすれば、この時間を短縮することができるでしょうか?

そこで、「社内」にいるユーザーさんに協力してもらう 社内ユーザーテスト を実施するという手段があります。

社内ユーザーテストのメリット

社内の人を対象にユーザーテストをやるというと、

「ユーザーテストなんだから社内の人を対象したら意味がないんじゃない?」「社内の人なんだから当たり障りのないように都合の良いことを言うんじゃない?」

と思われる方もいるかもしれません。

しかし仮にそうだとしても、誰が操作していようと、起こり得る問題は起こるし、目の前で起きた問題は発見できるものだと考えています。ユーザービリティ上の問題は、操作している様子を注意深く観察すれば自然と問題となる箇所を発見することができます。

実際に社内ユーザーテストを行なっていますが、設計段階では想定しなかったクリティカルな問題を、毎回必ず発見することができています。その結果として、クオリティの高さが担保された状態でユーザーさんに届けられるため、ユーザーテストをきちんと開発プロセスに入れていなかった頃よりも、施策の成功確度は格段に上がっています。

リソースが豊富ではないチームで、生のユーザーさんをリクルーティングする余力がなくとも、社内からの協力を得ることで問題点を発見することができます。なにより、ユーザーテストの実施人数が「0」であれば、発見できる問題も「0」のままです。1回もユーザーテストをしていない状態と比較すれば、必ずクオリティに大きな差ができてしまうはずです。

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もうひとつ、社内ユーザーテストには大きなメリットがあると考えています。

一般的に、ユーザーテストは「5人にテストをすれば十分」とされています。(以下図)

画像引用:「5人ユーザーでテストすれば十分な理由」

5人にテストをすれば、おおよそ85%の問題は発見できるといわれています。85%も問題を見つけることができれば、あとは修正してリリースすれば良いと思うかもしれませんが、そうではありません。プロトタイプを修正した後、また同じ5人(状況によっては減らしても良いかもしれません)に繰り返しユーザーテストをします。

なぜ、「繰り返し」が必要なのでしょうか?

プロトタイプとは仮説にすぎず、それをユーザーテストで検証し、問題点を発見します。みつかった問題点を改善するためにデザインし直します。そうすると、修正したプロトタイプはまた新たな仮説となるため、改めてユーザーテストで検証する必要が出てきます。このようにユーザーテストを複数回にわたって繰り返すことで、洗い出せるだけの問題点をより多く改善することができます。

こうした仮説検証を繰り返す「反復」こそが、プロダクトの使い心地を追求する上では欠かせないものとなるのです。

社内ユーザーテストは、被験者のリクルーティングにかかる時間が社外から集める場合よりも早くなるため、「プロトタイプ作成→ユーザーテスト→プロトタイプ修正→ユーザーテスト→プロトタイプ修正→ユーザーテスト…」の改善サイクルをより早く回すことができます。

つまり、反復デザインを素早く行うという観点では、社内ユーザーテストは非常に有効な手段の1つであると、僕は考えています。

社内ユーザーテストの具体的な進め方

とはいえ、被験者が本当に誰でも良いかといえば、そうではありません。
実際にクラシルの社内ユーザーテストを実施する際には、以下のような基準を引いています。

・日常生活でクラシルを使って料理をすることがある(1ユーザーであること)
・UI設計やプロダクト開発を専門としていない(PM/エンジニア/デザイナー以外)
・該当の施策に直接的に関わっていない(施策の背景を知っているとバイアスがかかるため)

例えば、セールス、CS(カスタマーサクセス)、コンテンツ制作の料理人、マーケティングなどの方々にご協力をいただいています。

ユーザーテストに使うプロトタイプの準備の頃合いをみてスケジューリングを行い、協力を呼びかけるためのSlackのチャンネルで募集します。

募集の様子

前述したように、ユーザーテストは問題点を改善するために繰り返し行います。1回目のテストで見つかった問題点を修正したプロトタイプを作り、再度同じ人に2回目のテストを実施します。

繰り返しの様子

ざっくりですが、テスター募集→ユーザーテスト実施→振り返りまでで2日間、プロトタイプ修正で1~2日、再度ユーザテスト実施で1日ほどの工数です。初回プロトタイプの制作or実装工数を除けば、1週間でユーザーテストのサイクルを回すことができます。

また、オフィスに専用のユーザビティラボがなくても、騒がしくない環境で、空いた机さえあれば、実施は可能です。普段は、お決まりのオフィスの空きスペースを利用しています。
テスト中の手元を録画する際には、本格的なカメラと脚立を用意しなくても、iPhoneとスマホアームを使って録画するので事足ります。録画したデータは、社内共有のGoogleドライブに追加して、振り返りのために使ったり、同席していないメンバーでも確認できるようにしています。

dely社の簡易ユーザービリティラボ

ユーザーテストは、必ずチームメンバーに同席してもらいます。(デザイナーと、PM、プロトタイプが実装したものであれば実装担当のエンジニアの3人で実施するケースが多いです。)
発見した問題点を議論するために、ドキュメントに起こす作業や口頭で結果を伝えるためのコミュニケーションコストが発生しますが、関わっているメンバーが同席していれば、問題の背景の認識が揃っているため、すぐに問題点の修正に入ることができます。

ユーザーテストに限らずユーザーインタビューでもそうですが、「百聞は一見にしかず」です。人づてに聞くよりも自分の目と耳で一次情報を入れてもらうことが何よりも重要ではないかと考えます。

(※この記事ではユーザーテストそのものの具体的な方法論については省略しています。『ユーザビリティエンジニアリング』という本に詳しく書いてあるのでおすすめです。)

まとめ

理想から入れば、日常的にプロダクトを利用している社外のユーザーさんを対象にすることがもっとも望ましいかもしれません。しかし、フォーマルなユーザーテストがリソースの問題で実施できないがゆえに、1回もユーザーテストをしないよりかは、社内で1回でもユーザーテストをして1つでも多くの問題点を発見した方が良いのは言うまでもありません。ユーザーテストの実施人数が0のままであれば、発見できる問題は0のままです。社内ユーザーテストを活用して素早く改善サイクルを回し、デザインのクオリティを上げていきましょう。

【最後に】
ユーザーテストにご協力いただている社員のみなさま、いつもお忙しい中お時間をいただき、本当にありがとうございます。良いプロダクトを作っていくには、みなさまのご協力が欠かせません。今後ともよろしくお願いします!

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red
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