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【乙庭植物図鑑】20230203 アジアンタム モノクラミス (= ハコネシダ) (Adiantum monochlamys)

これまで、著書や歴代ブログやwebメディアなど、さまざまな媒体に植物の解説を書いてきましたが、結構情報が散逸している状態になってきたので、マイペースではありますが、note.に私の植物や植栽に関する知識をまとめていきたいと思います(ライフワークにできたらいいな😊)。

今日は、日本原産の常緑性アジアンタムとして私自身最近注目しているシダ植物、 アジアンタム モノクラミス (= ハコネシダ) (Adiantum monochlamys)を紹介します。
※以下、ハコネシダと表記。

撮影:2024年2月3日 苔玉仕様で植えたハコネシダ

ハコネシダは、屋内観葉植物としても人気のあるアジアンタムと同じホウライシダ属の植物です。観葉植物のアジアンタム同様の優美な葉が観賞価値の高く、かつ耐寒性があり冬季常緑性。屋外栽培で美しい葉を通年楽しむことができる日本原産のシダです。

観葉植物として多く流通しているアジアンタムは、主に熱帯アメリカを原産とするアジアンタム ラディアヌム (=コバホウライシダ) (Adiantum raddianum)系統の品種が多いのですが、耐寒性が弱いため日本での屋外栽培には適しません。

属の基本種であるホウライシダ(Adiantum capillus-veneris)も、世界の熱帯から温帯にかけて広く分布し、日本でも四国〜九州などに自生が見られるものの、耐寒性は低く、ごく温暖地向けの素材といえるでしょう。

ハコネシダは日本では、本州〜九州に分布し、山間部の崖面などに着生して生息しています。ホウライシダよりも耐寒性があり、日本の一般地でガーデニング素材として用いるアジアンタムの仲間としてたいへん有望と乙庭でも注目している植物です。

撮影:2024年1月 鎌倉市内にて。 住宅地の擁壁継ぎ目に根を張ってに着生していました

山が近くにあるような土地では住宅地の擁壁や側溝脇の垂直面などに着生している姿も散見されます。乾いた垂直面に着生しているので、乾燥に強いような印象も受けますが、ホウライシダ属全般に見られる傾向として、根は多少水分が少ない環境にも馴染みますが、葉は空気中の湿度をたいへん好みます。

撮影:2024年1月 鎌倉市内にて。 同じ場所ではイノモトソウやオニヤブソテツなども着生していました

ハコネシダは、山中の自生地では霧がかかるような場所に好んで生息しており、空中湿度が高い場所を好みます。
庭に地植えする場合も、湿りがちの半日影〜日影の環境、つまりシェードガーデン素材として利用するとよいでしょう。

庭植えする場合の土質はあまり選びませんが、湿度を好みますので、ある程度水もちの良い土に植えます。

耐寒性はありますが、強い凍結や霜で傷むことがあります。葉の乾燥を避ける意味でも北風が吹き抜けるような場所は避け、暖かい場所を選んであげるとよいです。

やや植え付け時の急激な環境変化に敏感で移植の際に傷みやすい傾向があります。植え付け時に根を崩し過ぎないように、環境が大きく異なる場所にいきなり定植しないように、やや注意が必要です。


■ アジアンタム モノクラミス (= ハコネシダ)
■ 学名 : Adiantum monochlamys
■ ホウライシダ科 耐寒性宿根草 冬季常緑性
■ 花期 : 春
■ 草丈 : 30cm程度(崖面などに着生していることが多い)
■ 耐寒性 : 強い
■ 耐暑性 : 強い
■ 原産地 : 日本(本州、四国、九州)朝鮮南部、台湾


最後に私 太田敦雄の著作や掲載誌をいくつかご紹介します。
2024年1月16日発売(本記事執筆時点では発売前)のガーデニング雑誌「Garden&Garden vol.88 (Spring 2024)」。
巻頭特集「風景ガーデニング」にて、私 太田敦雄 / ACID NATURE 乙庭 を8ページにわたり掲載いただいています。私の設計案件の中でもこれまで一般誌で解説紹介していない2つの住宅を実例に写真豊富に、自分が思い描く植栽風景を形にしていく思考のコツなどについて解説しています。私のページ以外も人気ガーデナー、ガーデンデザイナーさんの多様な植栽事例をお楽しみいただけます。


私と、おぎはら植物園の荻原範雄さん、フローラ黒田園芸の黒田健太郎さん・和義さんご兄弟との共著作「グリーントータルプランツブック」。前半の1/3を私が執筆担当しており、実例も交えた植栽論と植物の解説をしています。


私の最初の著作本「刺激的・ガーデンプランツブック」は、出版社のご都合で現在絶版となっていますが、この本に書いた内容も含めて、今後の出版物に盛り込んで、なんらかの形で情報としてこれからも手に入るようにはしていきたいと思っています。


noteの「乙庭植物図鑑」では、これまでの著書では解説していない植物も積極的に取り上げていく予定です。
自分だけの特別なお庭造りの参考になれば幸いです😊✨




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