鑑賞

鑑賞され尽くして褪せていく生け花の息
たえだえに落とした水滴が机を濡らし
生きるがゆえ腐る可能性を含む熱は
逃げ場を求めひとの目に映り憑る
牡丹の汗 芍薬の露
色褪せていくをよしとして切られた首から
緑青の血が水に流れだしていく
やがて床にひたひたと蒸発した血は伸びめぐり
一室は腐敗の臭いに咽せる
こんなにいきぐるしいところだったか
誰か 窓を 開けて 逃がせ この臭いは

ひびく声は影で
ああ 鑑賞者の不在が際立つ
花は鮮やかに保たれたようにみえるが
空洞だった
ある朝 ある夕刻
かさりと崩れてしまうだろう
視線の不在に耐えうるものだけがそこに在ることを許され

耐えきったものだけが次の鑑賞者を迎える
佇んだ花がその目を焼き千切らんと迎える

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