見下しているのではなく必死に見上げているのである
イラストはいま作っている動画のために描いたもの。動画も近々公開します。
「○○という現象に名前が付く」ということは結構ある。何かが表現できて、伝わる、伝えることができると人は安心するのだろう。
しかし、名前が付いたせいで気軽に使われるようになって、本来だったらそんなものではなかった現象まで同じ名で呼ばれるようになってくると、そういうつもりではなくても「これが○○か」と間違った伝わり方をして、その名でよばれるようになることがある。
それと関係あるかどうか。
「マウンティング」という言葉がある。元々は動物が交尾のために強さを誇示するとか、力の差を確認するための行動……と認識していたのだけど(格闘技とかでも「マウントポジション」っていうのを昔から聞いていた)
最近は、もう、マウンティングで検索すると「女子がマウンティングする理由!」みたいなページが一番上にある。
主に会話の端々に、「私はあなたよりも上の立場です」というのを混ぜ込むことによって、人より優位にたとうということのようだが……
確かにそういう人はいる。何の話でも、自分のほうがすごいというのを上にかぶせてくる人。女性に限らない。
私は自慢話をよくしてしまう。マウンティングしようとしているわけではない。でも、たまに相手にそう取られてしまったことを感じて、後で「失敗したな」と思うことがある。
私が自然と自慢話をくちにしてしまう原因に、最近思い当ったのでメモしてみる。本当に、最近になるまで気づいていなかったのだ。
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私は保育園に通い始めるのが遅かった。最後の1年以下しか行っていない。それまで、話の分かる大人としか接していなかったのに、同年代の5歳の子どもの集団に初めて出会った私はたいそう戸惑ったんだろう。毎日保育園に行くのが嫌で、叫んで、泣いて拒否して、できる限り休んだ。
引っ越した先での入園だったから、知り合いもいないし、だれとも仲良くなれない。
夏休み、沖縄の祖父が亡くなって、1か月ほど沖縄に滞在することになった。子どものころの記憶だからいろいろ間違っているかもしれないけど、とにかく、そこで私は祖母に「保育園でみんなと仲良くできない」と相談した……のだろう。祖母は、自分たちが作っている、タカラガイのネックレスを保育園の子どもたちの人数分くれた。
「これを渡して、友達になって~といいなさいね」
私は帰ってから、祖母の言うとおりに、みんなにネックレスを渡して「なかよくしてね」と伝えたんだったと思う。
するとみんなの顔つきが変わった。仲良くしてくれるようになったわけだ。
私はキョーレツに記憶されているその体験から、私が何か、相手に良いことがある立場であれば、相手から好かれて仲間に入れてもらえるのだと学習してしまったのかもしれない。
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その後小学生になってもそれは続けられた。でもうまくいかない。
誰かにものをあげるのは成功するばかりでないと知ったので「私はこんなすごいものなので、あなたは友達になりたいと思うでしょう」と思わせる手段を使った。素直にとってくれる友達は「すごいね。好きだよ」と言ってくれたけど、それ以上に「いつも自慢ばかりしている」と言われることが多くなった。
持ち物も言動も、目を付けられる対象になって、私は無視されたりばい菌扱いされるという典型的ないじめられ方をした。そこでも私は空回りするように「私はこんなにすごくて!こんなちからがあって!こんなものを持っている、友達になったらあなたに良いことがある人物なのです!」
……と主張を続けていた。
いまだにその癖が抜けない。
親にも「クラスの子や先生にいじめられている……かもしれない」と遠回しに相談した。ほんとうは親にだって、「私はすごくて、できる子で、友達だって多い、だれからも好かれる親も自慢の子どもです」と言いたいんだから、弱みは見せられなかった。「いじめられるなんて、あなたがダメなんじゃないの。まだ好かれる人物には遠い」とよく言われていた。「あなたと友達だとはずかしいのだから」一緒にいることが恥ずかしくない人間にならないといけないと。
私は何も持っていない場合はひとから興味をひかない、好かれない、嫌われて無視されてしまう存在なのだ。絶えずメリットを提示して、何かがすごくて、上手にやれるタイプだから、好きになってほしいと訴え続けた。
私の自慢癖は、相手より優位に立とうなんて野心のあるものじゃない。
暗闇の穴の底で、手を伸ばして必死に自分の宝物に光を当てながら
「私はこんなものを持っていますよ。私と仲良くすると、こんなものが手に入りますよ……」と、叫んでいるようなものなのだ。
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