ブラジャーと死と生き方と
日頃より素敵な女性でありたい、と言ったり書いたりしてますが、その実中身が伴っておりません。
ズボラだし服も毛玉だらけだしちょいちょいヒゲも生えるし。義務を果たさず権利を主張するなと何度言われたことか。
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これまで2度ほど妊娠出産をしているが、よくよく考えたら最初の妊娠以来ブラジャーを新調していなかった。
いや、ブラジャーって結構買うのめんどくさいんですよ。
毎回サイズを計らないといけないし、お店のお姉さんから実はココもお胸なんですよー!って生身の肉を鷲掴みされるし、えー!しゅごーい!……なんて小芝居は必ず発生するし。それなりに時間を取られる。
ブラジャーのサイズを合わせるんじゃなくて私がブラジャーに合わせにいけばいいんじゃない?とネットで購入したこともあるけど、やっぱり合わない。不思議なもので、こんなズボラでも合わないと使わなくなっていく。
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最近、ある経営者の取材に同席し話を聞く機会があった。朝早い時間での集合のため、いつもより早く起きてインタビュー会場に向かう。
その日私は朝から胸の辺りに少し違和感があった。なんだか苦しいような。早起きだったから眠いのかな、急いで駅の階段駆け上がったから息切れしてるのかな、と思いながら参加していた。
インタビューのテーマは忘れたが (おい)、健康や瞑想の話に続き、死を感じた時の話に及んだ。生と死について。家族のこと、仕事のこと。そんな話をしていた。
私は死ぬとき何を考えるかな。やっぱり子どものことかな……。親が亡くなったとき、自分が手術したとき、妊娠中のトラブルで入院したとき…… それなりにいろいろあったけど考えたことないかもしれない。
そんなことを思いながら、胸の圧迫感を感じつつ取材の時間は終了した。トイレを借りて胸のあたりを確認する。
ブラジャーからワイヤーが突き抜けて胸に突進していた。
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ブラジャーにはカップの下半球に形状を保つためのワイヤーが入っている。それがブラジャーを突きぬけ、その丸い形状を生かして胸部に進出していた。
こんな感じ↑
それはまるで終戦近くの女学生が竹槍で突撃してくるような。壁ドンで例えるなら壁に手首くらいまでは埋まっている。(ワイヤーの先は樹脂で覆われているのでほんとの意味では刺さってないけど)
その時に真っ先に思った。
「え、これが死因はいやだ」
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突然ですが、みなさまバビルサという動物をご存知でしょうか。
インドネシアなどに生息するイノシシの一種で、頭に向かって湾曲しながら伸びる牙が「頭に刺さって死に至る」という話が広まったことから、『自分の死を見つめる動物』と呼ばれているらしい。
こんな感じ↑
ちなみにこのバビルサ、私の人生の一冊である「行け!稲中卓球部」に出てきて知った。そういやそれもおっぱいの話だった気がする。
ブラジャーからワイヤーが飛び出しているのを見たとき、真っ先に思い出したのがバビルサ。そこから飛躍して死を思う。
いや、人間いつ死ぬかなんてわからんじゃんね。今日だってこのあと何が起きるかわからない。
救急車で運ばれたときに下着の上下の組み合わせが違ったら恥ずかしい~とか、そんな比じゃない。ブラジャーのワイヤーが刺さって死ぬ、とか絶対嫌だ。
死と生き方についての深い話を聞いた20分後、私は表参道のおしゃんな下着ショップで8頭身の美人に無言で肉を鷲掴みにされカップに詰め込まれていた。都会だと小芝居挟む余地はないんだな…と無の境地でしたが無事にブラジャー購入しました。
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素敵な女性でありたい、でもその前にどう生きるか。
できれば、どんな時でも大事な人のことを思える自分でありたい。そのためには少しでも生き方に豊かさと余白を持ちたい。余白がないなら器を広げればいい。
胸だって、肉をかき集めてカップは一段レベルアップした。器は広げられる。たぶん。
なお、ブラジャーの寿命は1~2年程度らしいです。定期的に買います。
(お店のお姉さんってなんで「お胸 」 って言うんだろ)
いやもうほんとそんなお気になさらず、あ、でもよかったらちょっとオススメの壺があるんです、どうですか、まあそんな遠慮なさらずに。