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2023年上半期 優れていた温泉10選

はじめに


2023年、早くも折り返し地点を過ぎてしまった。

今年は長期休暇を取れるタイミングが重なったことや、退職・無職化イベントが発生したこともあり、例年以上に充実した温泉ライフを送れているように思う。

ざっと数えたところ、少なくとも21都道府県、70施設以上の温泉に訪れているようだ。

訪れた温泉のカウント。Googleマップからの簡易サルベージなので、十中八九ヌケモレがあるが。

ここで半年間を振り返って、特に優れていた温泉を10件ピックアップしていきたい。
もっとも、はじめは宿泊した宿それぞれの個別記事を書こうとしていたものの、分量の大きさに挫折してしまった。
「特に優れていた宿」と「特に優れていた温泉」は必ずしもイコールではないので、こちらについては年末に「良かった宿10選」を振り返ることができればいいな、と考えている。

前提

筆者は以下のタイプの温泉を特に好んでいる。

  • ぬるい温泉

  • 泡付きのある温泉

  • 酸性の温泉、鉄やアルミニウムを含む温泉

そのため、訪れる温泉選びや、ピックアップする温泉の基準には個人の嗜好が大いに含まれていることにご留意いただきたい。

優れた温泉10選

1. 北海道 豊富温泉 ふれあいセンター&川島旅館(再訪)

どちらも書きたかったし同一源泉だからいいだろう、ということで2施設をまとめて紹介することにした。いずれも6月に訪れ、2022年以来の再訪となった。

1年の間に温泉むすめ・豊富水由が顕現していた。町全体で盛り上げていく意志を感じられた

日本最北端の温泉郷、豊富温泉は石油を含んだ温泉として有名で、ごく小規模な温泉街が形成されている。
ふれあいセンター は温泉街唯一の共同浴場で、長期滞在者が多い豊富温泉の湯治場的側面を持つ施設でもある。

湯治客向けの案内。2022年撮影

「湯治客向け」の浴室は微加温された38℃前後のぬるめの湯がドバドバと掛け流されている。
油分がとにかく豊富で、湯船の見た目や香りはまるで工場排水のようであるが、トロトロすべすべの優れた湯感は他に類を見ない。
特に朝一番の入浴時は驚異的な脂分量。湯上がりは油分が体中にべっとりと付き、体を拭くタオルも変色してしまうほどだ。

川島旅館の内湯、湯の花の量はふれあいセンターに匹敵する

宿泊した川島旅館は、油量や源泉投入量こそ朝イチのふれあいセンターより控えめだが、1.5~2人サイズの小湯船に無加工の源泉が掛け流されているのが良い。
日によって湯の状態は変わるそうだが、31~32℃の濃厚ぬる湯に長時間浸かっていと、皮膚のコンディションが明らかに改善することが実感できる。

川島旅館は2泊して、両日とも満足のいく食事だった。おいしいバターアヒージョ

2. 青森 嶽温泉 小島旅館

4月上旬でもまだ残雪があった

2022年冬の嶽温泉は湯量・湯温の低下という異変があり、過去に宿泊経験もある山のホテルが倒産、閉業するなど悲しいニュースが続いた。
春になっても湯温は回復しなかったものの、小島旅館が「ぬる湯」として再開したと聞き、4月上旬に駆けつけることにした。

熱湯とぬる湯の湯船がある、訪問時はどちらもぬるくて良い

嶽温泉は熱い湯の記憶があったが、このときの湯温は高温泉で35℃、低温泉で31-32℃。
完璧な温度に調整された酸性硫黄ぬる湯がドバドバ掛け流される湯船を独泉できる、最高の体験となった。

湯量低下が完全に回復したわけではないようだし、そもそも嶽温泉自体が景気のいいエリアではないため先行き心配ではあるものの、個人的にはぬる湯を大いに歓迎している。このまま営業が続き、再び訪れる機会があることを心から望んでいる。

3. 秋田 乳頭温泉郷 鶴の湯旅館(再訪)

有名な撮影スポット

姉妹館の駒ヶ岳温泉の無料送迎を利用して訪問したことはあるが、宿泊先としたのは今回が初めて。
鶴の湯旅館は山深い乳頭温泉郷の中でも奥地にあり、日本一有名な秘湯という矛盾めいた紹介をされることも多い一軒宿だ。

写真は日本秘湯を守る会より引用

鶴の湯の象徴である巨大な露天風呂では、いたるところで新鮮な硫黄泉がぶくぶくと湧いている。
源泉はけっこう熱いので季節によっては厳しそうだが、訪問時(6月中旬)は37℃-40℃のぬる湯で、長時間の湯浴みを楽しむことができた。

人気施設かつ混浴露天ということもあり、休日の日帰りなどは混雑や治安の悪い状況に出くわすこともあると聞くが、深夜・早朝時間帯は非常に静かで、1時間以上独泉できる時間帯もあった。
湯自体が優れていることは言うまでもなく、宿泊することでより優れた体験ができる温泉だと感じた。

宿泊客のみ利用できる貸切湯。
内湯は秘湯感に優れた佇まいで、露天は川の水で加水するワイルド仕様

食事の満足度も期待値以上に高く、次回田沢湖エリアに訪れる際には宿泊先に頭を悩ますことになりそうだ。
(前日に宿泊した妙乃湯も非常に良かったので)

駒ヶ岳温泉も非常に優れた温泉宿で、予算1万前後なら上述の川島旅館(ビジネスプラン)と並んでまず一番におすすめしたい宿。2020年撮影

4. 秋田 日景温泉(再訪)

2020年ぶりの再訪。4月中旬、前述の小島旅館の翌日に宿泊した。

温泉が好き、温泉宿に泊まるのが好きと伝えると、「どこの温泉がおすすめ?」という質問がほぼ必ず来る。その答えとして第一候補として挙げるのが、この日景温泉である。1泊1万円後半~の手頃な価格帯、モダンな内装と良質なサービス、おいしい食事、すぐれた温泉…とすべての要素が高得点であり、安心して勧めることができる。

2020年に撮影した「うるげる湯っこ」の写真。今回訪問時と比べて明らかに析出物の量が少ない
湯船も写真右側に寝湯スペースが増設され更にパワーアップしていた

とくに温泉は圧倒的である。複数の源泉と多種多様な湯船があり、ゴム臭と甘い香りが混ざった高濃度硫黄泉や、泡付きを感じる含二酸化炭素硫黄泉を楽しむことができる。
湯船のつくりや源泉の種類にもよるが、全体的に泉温もぬるめ。(1・3号混合泉は源泉38.4℃
貸切の湯船が多いので、熱くても自由に加水調整できるのもありがたい。多少薄めたところで劣化するようなヤワな泉質ではない。

まげわっぱのきりたんぽ鍋。エリア的にはほぼ青森県だが、秋田の郷土料理が出てくる

食事も安定して美味しく、前回宿泊時に気になった部分も改善され、さらにパワーアップしていた印象を受けた。

5. 福島 微温湯温泉

これまで再訪エリアばかり挙げていたが、微温湯温泉は完全に初訪問。

「ぬるゆ」という素晴らしい名称、酸性含鉄含アルミニウム泉という、好きなもの全部乗せの泉質で以前よりずっと気になっていた。しかし、隘路を進んだ山奥にあり、送迎も提供されないことから訪れる機会を逸していた。

今回、行きは福島空港からの乗り合いタクシー(\4,000!)、帰りは10km徒歩下山という方法を取って訪問した。

圧倒的投入量

分析表で31℃、実測値32.5℃のぬる湯がドバドバのオーバーフロー。
金気、酸、硫化水素臭、キシキシ感など「強い」湯ではあるのだが、湯温もあり浴感はさっぱりと軽い。

山奥でスマートフォンの電波があやしいということもあり、一日中温泉を堪能した。
帰路はなかなかしんどかったが、ぜひまた再訪したいと思う。

猫がいる温泉宿としても有名

6. 新潟 駒の湯山荘(再訪)

ドバドバ爆泡

2022年最も優れていた温泉宿、として挙げた駒の湯山荘に6月末に再訪した。詳細は過去記事を参照。

前回は冬季閉鎖直前ということもありけっこう寒かったが、今回はすばらしいコンディションで31℃の爆泡ぬる湯を満喫することができた、

岩魚のなれずし、「一度滅びた郷土料理」を文献から復活させたらしい

食事も変わらず優れていて、岩魚のなれずしや棒鱈といった郷土料理、山で取れた山菜などを味わうことができた。
宿主のキレのあるトークも健在で、送迎の車内では (コンプラ的にここでは書けないような)爆笑トークが繰り広げられていた。

湯之谷温泉郷はバス便が改悪されるなど逆風気味ではあるものの、また近いうちに再訪したい。そして栃尾又にも宿泊したい。
上述の空港タクシーで只見方面と組み合わせても楽しそうだ。

7. 大分 拍子水温泉

離島に自転車を持っていくと車以上に旅程で無双ができる

GWに自転車&船で訪問。徳山→竹田津→伊美→姫島というルート。

姫島は伊美港から船で20分ほどにある人口2000人弱の離島で、ジオパークに認定された豊かな自然環境やクルマエビの養殖産業で知られている。あとタブロイド紙に闇とか明るい北朝鮮とか書かれたりしてる

ジオパーク「拍子水」。同じ液体が湯船に注がれている

「拍子水」は姫島の名前の由来にもなった鉱泉で、「温泉」の認定温度ギリギリの24.9℃の含二酸化炭素泉である。
温泉施設ではこの鉱泉がかけ流しで注がれていて、24℃前後の源泉湯船と41-42℃の温かい湯船の交互浴が楽しめる。

加水率が記載された分析表。すべての温泉施設に導入されてほしい

源泉浴槽は冷たい水風呂が得意ではない筆者でも無理なく入ることができる温度で、非常に優れた泡付きがある。温かい湯船もすばらしく、湯が変質する「加温浴槽」ではなく、熱湯を加える「加水浴槽」である。泡付きこそ弱まっているが、薄めても確かな金気と炭酸感を楽しめた。

唯一の心残りは宿が満室で泊まることができなかったことと、昼食の時間がなくクルマエビを食べそこねたこと。次回はもう少しゆっくり滞在したい。

年に一度の「おせったい」を受ける機会をいただいた。
郷土料理のさつまいも麺料理「いもきりのけんちゃん」

8. 大分 くにさき六郷温泉 海門温泉

拍子水温泉の翌日に自転車で訪問した。指宿の「開聞温泉」もよいところだが、こちらは大分に位置する。
源泉温度40.3℃、湯船38℃の濃厚な湯は大分県でもトップクラスの塩分濃度とのこと。
強いオーバーフローがあり、湯は非常に新鮮である。

成分総計23,532mg

無限に入っていられるぬる湯なのだが、塩気、炭酸味、鉄臭に加えて油臭も強く感じる非常にパワフルな湯で、湯上がりはどっと疲れてしまった。

「くにさき六郷温泉」にはこの他にもいくつかの施設に訪れたが、いずれも泉質に優れていて、おんせん県おおいたの底力を感じる体験となった。

9. 熊本 人吉温泉郷 華まき温泉

6月中旬に訪問。

微加温38℃の大浴場も悪くなかったが、清涼泉と名付けられた源泉無加工の家族湯が白眉。
34℃の圧倒的爆泡は無色透明の湯が白濁するほどで、1時間の貸切時間があっという間に過ぎてしまう。

「混ぜると白濁する」はこちらの記事を参考にした
38℃オーバーフローの大浴場。こちらも相対評価としては文句なしの★5

ただし、非常に素晴らしい湯をそのまま提供していただいていることに感謝する一方で、たとえ湯守が適切に調整したとしてもここまで浴感が変わってしまうのか…という思いも抱いたのが正直なところ。

人吉はちょうど水害から復興しつつあるところ。鉄道の再開が見通せないのは苦しいところだが、まちなかの温泉旅館が再開したり、新しい店舗がオープンするなど、街に活気を感じられた。

次回は温泉宿に泊まりたいと思う一方で、夕食に訪れたすし店が非常に優れていたので、どのような滞在にするか非常に悩むところ。

銀座出身の親方が地元で開いたすし店。地物と豊洲のハイブリッドでレベルが高い

10. 鹿児島 薩摩硫黄島 東温泉


海の色が鉄分で赤く染まり、まるで崩壊後の世界のよう

薩摩硫黄島は薩南諸島にある火山島。「イオージマ」ではなく、「いおうとう」と読む。

今回は週2便のセスナを活用することで1泊2日の旅程とした。
トカラ列島や小笠原諸島ほどではないものの、気軽に訪れるには難易度の高い離島である。
※なお、2023年現在航空便は運休中、とのこと。ギリギリのタイミングでの訪問だったようだ…

曇り空でもこのロケーション、圧倒的絶景

東温泉は集落から徒歩20-30分のところにある絶景の野湯。
野湯らしく脱衣場もないが、良く整備されていて湯船も清潔に保たれている。

湯船は3つあり、訪問時は上が50℃強、中央が適温で42℃前後、奥の湯船は波に襲われてほぼ海水、という状況だった。
硫化水素臭と強酸味、強い金気の圧倒的パワフル湯。
長時間入っていた割には肌への負担が思ったよりも軽かったが、飲泉時の厳しさは玉川温泉(秋田)に匹敵する印象を受けた。

ロケーションが最高なのは言うまでもなく、わざわざ足を運ぶ価値がある、唯一無二の湯だった。

宿泊先のおいしい食事。1泊3食\7,500は強い

総括・お気持ち

ここ最近は以下のように感じることが多い。

  • 飲食店と異なり、温泉は良くも悪くも期待値通りであることが多い。事前調査で良さそう、好みだ、と感じた温泉は実際に訪れても良いもので、そうでない温泉が予想外に優れていることは稀である。

  • 1日に何軒も温泉を回るのは疲れるし、同じ地の微妙な源泉の違いには正直なところ、よくわからない部分が多い。

  • 優れた温泉=優れた温泉宿であるとは決していえないが、温泉が優れていればだいたい許せる。(たとえば、渋御殿湯とか)

最近は1日に何件も温泉をめぐるような旅は頻度を減らし、温泉宿でダラダラするような旅を計画することが多くなった。
これは単に10時-11時チェックアウト、14時-15時チェックインとすると寄り道するタイミングがほとんどない、ということも一因である。

一方で、旅先の貴重な食事体験を宿のテンプレ会席で消費したくない、という感情もあり、未だに良いバランスを見つけられていないのが正直なところである。

グダグダとお気持ちを垂れ流してしまったが、温泉が好きであること、これからも旅を続けていきたいという気持ちは変わらない。
下期にも優れた温泉や温泉宿に出会う機会があれば嬉しく思う。

7月上旬訪問。中巨摩地区広域事務組合老人福祉センター。
現時点で下期No.1温泉かつ、ここを超えられる気がしない


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