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途上国の問題は対岸の出来事ではなかった【ACEトークvol.7:前編】

※2021年10月29日にYouTubeライブ配信した「ACEトーク」のレポート記事です 

世界の子どもを児童労働から守るためNGO職員として活動しているACEスタッフたち。なぜこの仕事についたのか?何を感じ、何を思いながら日々業務に向き合っているのか?毎月一人ずつACEのスタッフをゲストに迎えて仕事にかける思いや、NGOで働くのってぶっちゃけどう?というようなお話を、ACE啓発・市民参加事業の杉山綾香が司会として聞いていきます! 

早くも迎えた第7回は「あきらめかけた『NGOで働く』を遠回りで実現したスタッフ」、普段は司会進行を務める青井彩乃さんがゲストです! 

青井彩乃さんのプロフィール

Ayapedia_青井彩乃

細く長く持ち続けた国際協力への興味関心

杉山(司会):改めて、青井さんの原点を教えてください。小学生の時に観たTVが印象的だったというところがきっかけなんでしたっけ?

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青井:思い返すとそうなんだと思っています。

小学3-4年生の時の担任の先生が、ドキュメンタリーとか色々なTV番組をみせてくれる方でした。その中で、「貧困国の子どもが朝早く起きて、遠くまで井戸に水を汲みに行ってそこから一日が始まる」みたいなのを観て、小学生ながらに「なんでこんなに違うんだろう」っていうことに衝撃を受けたんです。生まれたところがただ違うだけで、その子が悪いわけでもなんで?っていうことが不思議だったし、なんでこんなことにならなきゃいけないの?っていう理不尽なことに憤りを覚えました。一番初めのきっかけは多分それだったんじゃないかな。

杉山(司会):小学校3年生の時に「生まれたところが違うだけでなんでこんなに違うんだろう?」って疑問を持つってしっかりした3年生ですね。

かといって小学校の時に何かアクションを起こしたとかではなかったんですね?

青井:そうですね、特に何か個人的に活動をしていたわけではありませんでした。でもその小学校は総合的な学習の時間が多く、「海外のことを調べよう」みたいな授業もあったので、海外に対する関心はあり続けました。貧困と格差だけではなくて、海外のことって知らないことがいっぱいで面白いなという感じで興味が深まっていきました。

杉山(司会):なるほど、小学校の時に総合の授業が多かったんですね。

中学校・高校のときも国際問題に関心があったんですよね。小学校3年生の9歳とか10歳とかの時の思いを持続するって難しいし、忘れちゃったりするのかなって思うんだけど、授業以外では何か特別な団体とかサークルとかに所属していたんですか?

青井:そういうわけではなかったんです、中学校からはずっと吹奏楽部でホルンをやっていたので、なかなか他の活動に参加する時間は取れませんでした。それから常に国際問題について考えていたわけではなかったんです。でもなんか気になるなという感じでした。たまにTVとか見て、「なんで世界はこんな風になっちゃうんだろう」って折に触れて思うことはありました。

「なぜ?」と思っていた途上国の問題は、人の手によって作り出されたものだった

青井:高校の時に、世界史が好きになったんです。1年生の時は好きじゃなかったけど、高校2-3年生の時の世界史の先生がすごく面白くて!まるで大河ドラマみたいに、歴史的な人物のストーリーを臨場感たっぷりに教えてくれる先生で、世界史って面白いなって思うようになりました。それで授業で近現代を学ぶ中で、アフリカをヨーロッパの国々が分割していったこととか、パレスチナとイスラエルの問題とかもでてきたあたりで、なんとなく気になってきた途上国の問題と、好きだった世界史が繋がったんです。私が対岸から「あの子たちかわいそう、こんなひどい目に遭って」って思っていたことが、私も先進国側に生まれた者として、その状況をつくったシステムの一部だったということを自覚しました。途上国の状況はただ単に、運悪くそうなってしまったのではなくて、先進国の人間が作り上げたもので、それで途上国がしわ寄せをくってるっていうのが衝撃的でした。人間が作ってしまった状況なんだから、こんな不条理な状況を変えなきゃいけないと思ったのは印象的で、今も覚えています。

もう一つ、受験生の時に図書館でルワンダの虐殺の渦中の女の子の本を読んだのですが、それがすごく怖かったのが印象的でした。平和に暮らしていたはずなのに、友達がある日突然敵になっちゃったりとか、押し入れに隠れて怯えて過ごしたりしないといけなかったということが書いてあって、「そんなことが世界で起こってるなんて」とすごく驚いたのを覚えています。

杉山(司会):なるほどね。だから外大にいって世界のことをもうちょっと学びたいって思ったんですね。小学校の時には「なんで生まれながらにこんなに違うんだろう」って少し他人事みたいな感じで、原因も分かってなかった漠然とした思いが、世界史を学ぶことによってそのシステムがどう構築されてきたのかわかって、「自分もシステムの一部だったんだ」っていう衝撃が、青井さんの今につながっているんですね。

【NGO職員のキャリア】児童労働から子どもを守る「ACE」啓発担当 青井さんの場合【ACEトークvol.7】 12-32 screenshot

スタディツアーに行って気づいた、「今の自分にできることは何もない」

杉山(司会):アヤペディアに書いてあったけど、大学の時にカンボジアのスタディツアーに行ったんですね。青井さんが海外に行くイメージがないから意外でした笑「現地に行って自分の非力さを痛感した(アヤペディアより)」とありますが、当時具体的にどういった点で非力さを感じたかを教えてください。

青井:2つあります。

1つ目は現地に行ったとき、子どもにも物乞いされたり、お金ちょうだいって言われたりしたんですけど、カンボジア人のツアーガイドさんに「お金あげなくていいから」って言われて、あげなかったんです。みんな学生だったし。でもなんか後から振り返ったときに、「本当にそれで良かったのかなぁ?」って思ったんです。確かに根本的な解決にはならないけど、そのお金をあげていたら今日のご飯が買えたのかもしれないって思ったりもしました。現地に行って、当事者になっちゃったから、どうしたら良かったんだろう、でもなにもできないなあ。っていうところで非力さを感じました。

2つ目はスタディツアーの中でもうちょっとボランティア活動とかもするのかと思ってたんです。ちょっとだけ子ども達と触れ合う時間はあったんですけど、でも基本的には施設の見学をして、色々教えてもらったり、地雷博物館に行ったり、義足を作るところに行ったりしただけで終わってしまって、意外と何もしないんだなって思いました。でも、じゃあ自分たちに何ができるのかって考えた時に、何もできないなって。見て回って勉強するくらいしかできない、私には今なにもできないんだって思いました。

杉山(司会):「なんとかしなきゃ」って思いからスタディツアーに参加して、本当は課題解決のところのサポートをしたかったけど、実際のカリキュラムは見学とか見てることが多かったんですね。その点で青井さんの中でマッチするものが少なかったんだろうけど、でも気づきもたくさんあったんじゃないですか?

青井:そうです。行って良かったし、意義もありました。そして、何もできないって気づくことができた機会でした。

杉山(司会):なるほど~。それで、じゃあそれをするために、どう仕事をしていこうかって思ったんですね。

その続きは後半で!

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noteの後編はこちらから! 

YouTubeアーカイブ動画はこちらから 

第7回ACEトーク「あきらめかけた『NGOで働く』を遠回りで実現したスタッフ」青井彩乃さん出演回のアーカイブ動画は以下からご覧ください。


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