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#7 雪隠と留学 [第1部インドネシア編] ep.I 「でかけます」

2016年8月、太平洋上空

―――いつもより二時間長い誕生日は一方では初めてのバーボン、もう一方では見知らぬ異国の香りを届けていた。

『雪隠と留学』シリーズは大学在学中の海外研修と留学を含む日本語版の体験記。第1部はインドネシア編。これまで同様多言語で投稿。

 大学二年の夏。日本語教授法という外国人に対する日本語教育を学ぶ授業の一環でインドネシアはジャカルタのスカルノハッタ国際空港へ向かう。自称「ジャワ島のパリ」、バンドンにある大学で約十日間のインターンシッププログラムとは名ばかりの半分以上観光の学生六名教授一名の短期研修だ。

そのうち二人は時差のおかげで二時間延びた二十歳の誕生日を機内で味わっている。どういうわけか七人のうち一人(それも誕生日の一人)が全く離れた席で見ず知らずの外国人に押しつぶされそうになっている。本人曰く、なかなか刺激的な香りが漂っていたという。もう一人は静かにバーボンを傾けていた。

 この宗教大国での十日間を境に今の人生が二分しているといっても過言ではないだろう。いうなればネシア前とネシア後だ。結果として後のスペイン留学への決意はこの海外研修で固まさった。出発前は選択肢にもなかったというのに。

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インドネシア第一夜。空港近くのホテルにて一泊。

 空港まではインドネシアの大学が手配してくれたバンが迎えに来てくれた。待ち合わせ時間になっても連絡も姿もなかったので教授は少し慌て始めた。事前に渡された空港の案内図で記された場所に行ってもいなかった。10分後、電話があった。待ち合わせと反対側に来てしまったとのことだ。

 ボロボロの車をなんとなく想像していたので乗ってびっくり。かなり綺麗で新車の匂いがした。1週間前に卸したばっかりのほぼ新品とのことだった。運転手は日本語を少し話せるインドネシア人で、翌日ホテルから大学までの移動も担当しているとのことだった。ホテルは空港から車で約10分。

 空港のあるジャカルタから大学があるバンドンまでは車で早ければ5時間程度、渋滞にはまれば到着はいつになるかわからない、と言っていた。インドネシアの渋滞は日本ではお目にかかれない壮絶さだという。

バンに全員が乗り込んだところで運ちゃんが一言。
「でかけまーす」

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次回予告『#8 雪隠と留学 [第1部インドネシア編] ep.II 「ボルケーノ」』

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現在、海外の大学院に通っています。是非、よろしくお願いします。