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被災者を癒やす自衛隊の入浴支援 ~陸上自衛隊需品学校教導隊が答えてくれました。

Q 入浴支援が初めて実施されたのは、いつですか。

 1957年、700人以上の犠牲者を伴った諫早大水害(長崎県)の被災地で実施したのが初めての入浴支援です。

Q 入浴支援の目的は何でしょうか。

 野外入浴セットは隊員個人の保健衛生を維持するとともに、部隊の士気を高揚させ、戦闘力を回復するために使用されます。災害派遣においては、自治体のニーズに応じて、入浴支援施設を開設し、被災地の保健衛生および被災した方の心身の安定に寄与する事を目的として入浴支援を実施します。

Q 入浴支援活動で活躍する部隊はいくつありますか。それぞれ部隊の特色を教えてください。

 現在、陸上自衛隊では、約20の部隊が入浴支援用の装備品を保有しています。また、部隊ごとに「のれん」「のぼり」が異なり、地名や名産品にちなんだ名称が描かれています。写真の「弘法の湯」は香川県の善通寺駐屯地に所在している第14後方支援隊ののれんで、弘法大師生誕の地であることが由来です。また、「京の湯」は京都府の桂駐屯地に所在している中部方面後方支援隊ののれんであり、所在地が由来となっています。

2018年西日本豪雨災害時。香川県・善通寺駐屯地に所在する第14後方支援隊による「弘法の湯」

Q 入浴の設備について教えてください。

 入浴施設は基本的に湯沸かし器と天幕3張を使用した脱衣所および浴場で構成されます。浴場は、約3.7tの浴槽が2つと10口のシャワースタンドが設置されています。取水は、開設する地域の状況により異なりますが、装備している浄水セットによる河川などからの浄水または自治体の給水施設を利用します。排水は、施設付近の下水口へ排水します。施設を開設する場所はさまざまです。訓練などでは敵に発見されないよう山中に開設しますが、災害派遣活動では被災地近くの駐車場やグラウンド、公園などに開設することが多いです。入浴可能人数は、1時間に約100名です。現在は感染症対策を考慮して3密を回避する入浴支援が求められており、1時間に約30名を限度に入浴支援を実施しています。

湯が張られた浴槽
脱衣所

Q 入浴施設を快適にするために工夫していることはありますか。

 さまざまな工夫を実施しています。1つ目は、対象者が幼児から高齢者までと幅広いため、脱衣所と浴場に踏み台、手すりおよび乳幼児用のベビー
ベッドなどを準備しています。2つ目は、季節に応じた工夫であり、浴槽の湯温については夏場、冬場で入浴者が心地よく入浴してもらえる温度に調整
しています。また、室内の温度管理についてもストーブ、スポットクーラーを使用して、快適に感じられるよう工夫しています。その他、日々、マットの洗濯、浴槽のモップ掛けなどを行い、常に清潔な状態を維持する努力も欠かせません。

Q 利用者からはどういった反応がありますか。

 災害派遣で利用された皆さまからは感謝や労いの言葉をいただき、笑顔になって帰ってもらっています。また、入浴支援を通じて子どもから大人までさまざまな方と仲が深まり、地域の話を聞く機会を得るなど、触れ合いが生まれ、自衛隊に興味を持っていただいています。

Q 海外で入浴支援を実施したことはありますか。

 海外における実績はありません。

浴槽を組み立てる様子
湯を沸かすボイラー設備

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