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学びに影響する特性―聴覚情報処理障害

「他人の話をちゃんと聞かない」とか、「何回同じことを言わせるのか」とか言われて、叱られてしまう子どもの中には、声は音として聞こえているけど、情報として認識できていないことがあります。

こういう子どもは、聴力には全く問題がありません。聞こえてくる音を「外耳」→「鼓膜」→「耳小骨」→「蝸牛」→「聴神経」と、正常な経路で脳まで伝えることはできます。

問題はその後です。脳内に電気信号として伝わった音は、意味を持つのかどうか、持つ場合どのような情報が含まれているのか、脳内で分別し処理されます。この機能がスムーズに働かないと、「聞こえてはいるけど理解はできない」ということが起こってしまいます。

このような症状は、『聴覚情報処理障害』(Auditory Processing Disorder)と呼ばれます。雑音と人の話し声を聞き分けることが難しかったり、よく聞き間違いをしたり、長い話を理解できなかったり、ということが起こってしまいます。

このような症状がある子どもは、学校の授業についていくのが大変です。質問に答えられなかったり、指示が理解できなかったりすることもあれば、板書が出来ないということも起こり得ます。

聴力検査で何の異常もないのに、このような反応をする子どもがいたら、大人はどう考えるでしょうか?「この子は注意力がない」、「この子は他人の言うことを聞かない」、「いつも反抗的な態度をとる」などと思ってしまうのではないでしょうか?

もちろん聴覚情報処理障害がある子どもが悪いわけではありません。ですが、周りに理解者がいないと、子どもにとっては「何も悪いことはしていないのに理由もなく叱られてしまう」という状況になってしまいます。理由もなく傷つけられる状況が何年も何年も続くとしたら・・・もし自分に同じことが起こったら私たちは絶え続けることができるでしょうか?

聴覚情報処理障害は、普段のコミュニケーションにも深刻な影響を及ぼします。友達同士との会話の理解にも支障が出るので、いじめのターゲットになってしまうこともあります。

聴覚情報処理障害は診断が非常に難しい障害です。また、どの障害でもそうですが、障害の程度は個人差が大きく、重度の聴覚情報処理障害もあれば軽度の聴覚情報処理障害もあります。

聴覚情報処理障害について十分な知識がある人が身近にいれば、聴覚情報処理障害の診断ができる耳鼻科医を紹介するなど、適切な対応ができることもあるでしょう。ですが、実際には、たとえ知識があっても、それを適切に応用できないこともあります。

判断が難しい聴覚情報処理障害に適切に対応する方法はあるのでしょうか?大人にできることは、多感覚でコミュニケーションできる環境を提供することだと思います。

聴覚からの情報処理に障害があっても、目から入って来る情報が適切に処理できるのであれば、聴覚情報処理の問題を補うことができます。普段から、一方的に話すだけでなく、図解しながら話したり、キーワードを書きながら話したりしてくれる環境があれば、聞く力が弱い子どもでも、それを周りに気取られることなく理解することができます。

大人にも聴覚情報処理に問題がある人はいます。子どもと話す時だけでなく、大人と話す時にも視覚情報や触覚情報など、多感覚で情報処理できるようになれば、コミュニケーションのストレスを大きく軽減できるでしょう。

ちょっとした気遣いで、相手を尊重することができ、お互いに快適に過ごすことができます。もし、コミュニケーションがうまくとれずにやきもきすることがある場合、多感覚のコミュニケーションをぜひ試してみてください。

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