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『虎に翼』法とは船のようもの。さぁ大切な人たちをすべて乗せて船を出そう。

 法とは何だろう。人と人の間にある壁を壊し、溝を埋め続けながら、寅子は自らに問い続ける。法は武器ではない。法が船のようなものだとしたら、その船を操縦するのは、弁護士であり、検事であり、裁判官である。彼らによって、船は多くの人を幸せに導くか、闇への航海となるかがかかっている。寅子の人生は光に満ちていたが、それは暗闇が幾度なく現れても、光を照らし続けた結果だった。
 そんな寅子をティーンから老年期まで演じた、伊藤沙莉の熱演は朝ドラの氷の枠を完全に溶かしていた。その笑顔は私たちに毎日幸福を運んでいた。そして、彼女の成長と変化を、リアルでとても説得力を持って演じた名演。

辛いこともいっぱいあった。戦争のシーンはないが、これだけ戦争の醜悪さを見せるドラマはそうない。

 夫が戦地に赴くときのシーンは涙が溢れ続けた。夫役の仲野太賀の熱演。笑顔で安心させたいが、それができない。その不器用さにスチュアート・マードックの穏やかなボーカルがのる。誰が朝ドラとベル・アンド・セバスチャンが絡むことを想像したか。色んなところで、朝ドラの枠を溶かしていた。 
 キャスティングも嬉しかった。

父役の岡部たかしは僕のアイドル。頼らないが、いつも明るいのがいい。母役の石田ゆり子は熱心で献身的。

 寅子は2人の子だというのが、よく出ている。明るさと熱を彼女は受け継いでいた。

女子部はずっと仲間

 彼女は夢を描いていたが、一人ではなかった。ずっと5人、いや6人で横に並んでいた。そう、juxtaposed with you.

夫を失ってからもロマンスがあった。あの恋の回は忘れがたい。優美、かわいい!

 社会問題も現代性を意識しながら脚本に巧みに盛り込み、いつだって盛りだくさんで、ほぼ停滞することがなかったのは、主演の伊藤沙莉と脚本の吉田恵里香の力だろう。2人の今後にトゥーマッチな期待をしつつ、すべてのクルーとキャストにありがとうを言いたい。最高の時間を過ごした。よく笑い、泣き、よく考え、いつだって刺激になり、ときにはシェルターになった。

百年先も憶えてるかな
知らねえけれど
さよーならまたいつか!

米津玄師より

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