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多様性を受け入れるために大切なこと-違いよりも共通点を探してみる-


6月14日に“World Report”の シリーズ第2回を、ニューヨーク在住の渡邊裕子さんをスピーカーにお招きしてオンラインで開催しました。テーマは「分断が深刻化するアメリカ社会のいま」でした。

その中で、2020年の米国大統領選挙で負けたドナルド・トランプ氏は、敗北宣言をしなかった大統領だというお話がありました。
一方で印象的な敗北宣言としては、2008年のバラク・オバマ氏に負けたジョン・マケイン氏や、2016年にドナルド・トランプ氏に負けたヒラリー・クリントン氏が挙げられます。
※米国大統領選の過去の敗北宣言については、NHKの記事をご覧ください。

特にジョン・マケイン氏の敗北宣言は、分断ではなく団結を呼びかけた感動的な内容でした。「どんな違いがあろうとも、私たちは皆アメリカ人です」と呼び掛けて、最初はブーイングをしていた支持者たちでしたが、最後は拍手喝采だったということです。
社会の格差・分断の問題は世界中で起きています。日本でも大きな社会問題の1つです。
渡邊裕子さんは「不寛容になっている」という表現をされました。

今の時代、誰もが「多様性が重要」ということを頭では分かっていると思います。しかし、意見や価値観が違う人よりも同じ人と一緒にいる方が、居心地が良いのも確かだと思います。
私自身も「知らず知らずの間に不寛容になっているかもしれない」と、渡邊裕子さんの言葉でドキッとしました。
違いを認め合うことは難しいのでしょうか?

そこで、渡邊裕子さんは、「タナカヒロカズ運動」を紹介してくれました。これは1994年に電通の社員の田中宏和さんが始めた同姓同名の会だそうです。
これに触発されて渡邊裕子さんも「わたなべゆうこの会」を発足されたそうです。

同姓同名という以外は、全く共通点がない見も知らずの人達ですが、集まるととても盛り上がるのだそうです。
私自身も2000年代後半のミクシー全盛時代に、「集まれ!熊田さん」というコミュニティに参加したことがあります。
「熊田」という同姓という点以外は全く知らない人ばかりですが、非常に盛り上がったことを覚えています。何故か親しみを感じる不思議な感覚です。

違いが目立つと不寛容になってしまいますが、少しでも共通点を見つけると人は寛容になれるのではないでしょうか。
そこで思い出したのが、組織の多様性研究における「フォールトライン」という考えです。
これは、「Demographic Diversity and Faultlines: The Compositional Dynamics of Organizational Groups」(Lau and Murnighan, 1998)という論文で紹介された考え方です。
「フォールトライン」とは、1つ以上の属性に基づいてグループを複数のサブグループに分ける仮想の分割線です。
人は多数の属性を持っています。年齢、性別にはじまり、正に名前も1つの属性と考えることができます。
属性の在り方でチームの多様性も変わってくるのではないか」という考えです。
ここに簡単な例を記します。
以下のような属性の4名のグループが2つあります。
・年齢:20代2名、50歳2名
・ジェンダー:男性2名、女性2名
・国籍:日本2名、米国2名
下図で左のグループは「20代・女性・日本人」が2名と、「50代・男性・米国人」2名という2つのサブグループに分かれます。一方で右のグループは属性が重なりあっておりサブグループに分かれにくい構成です。
フォールトラインが強いほど分断が強く、弱いほど分断がなく組織内コミュニケーションがスムーズになると言われています。
実際にフォールトラインの強さをある方法で計測すると、左のグループが0.914、右のグループが0.475となりました。

どうしても「違い」に注意がいってしまいますが、「共通点」からコミュニケーションを始めることで、寛容になり「違い」を受け入れられるのではないでしょうか。
渡邊裕子さんのお話から、そのようなことを思いました。

アカデミーヒルズ 熊田ふみ子

#アカデミーヒルズ #多様性 #寛容 #フォールトライン #大統領選挙 #敗北宣言 #リーダーシップ


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