![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/85228449/rectangle_large_type_2_540d04dc6a0762390c2716d464b5ac4d.jpeg?width=800)
議論のプロセスを可視化
アイデアを出すための「発散・収束」
以前「ダブルダイヤモンド・デザインプロセス」についての記事を書きました。
これは、英国デザイン協会が提案したデザインプロセスの4段階です。
「正しい問題」を見つけるための発散と収束、「正しい解決」を見つけるための発散と収束、この2つの発散と収束のサイクルを回すことがデザインのプロセスでは重要だということです。
また、『発想法 改訂』(川喜多二郎, 中央公論新書, 2017)や、 『ファシリテーション入門<第2版>』(堀公俊, 日本経済新聞社, 2018)においても、「アイデアを拡げる発散」と「構造化する収束」が重要と言われてます。
アカデミーヒルズにおけるアイデア創造(議論)の場
ところで、2019年にアカデミーヒルズでは議論することの重要性を感じ、「みんなで語ろうフライデーナイト」というイベントを毎週金曜日に開催をしました。
(2019年3月にスタートして、緊急事態宣言直前の2020年2月まで36回開催。)
ファシリテーターと参加者が、フラットに知恵を深めていく90分のミーティングです。全員のアウトプットがそれぞれのインプットとなって連鎖し、議論を深めていくことを目指していました。
「発散・収束」の可視化の方法
そこで、みんなが議論したプロセスを収束と発散で可視化したいと考え、思考錯誤した結果、テキストマイニングの手法の1つである分散表現を使って可視化することができました。手順を簡単に説明します。
発言内容をテキストに書き起こし、10発言を1つのグループにして、1発言ずつ移動させながら分析をしました。(最初のグループは発言1~10、次のグループは発言2~11になります)
最初は、1グループごとに単語間の関係性を調べるために、単語分散表現を使って単語をベクトル化します。そのベクトルを使って単語間の距離を算出しました。距離が近くなると単語の意味合いが近く(類似性が高く)なり、距離が遠くなると意味合いも遠く(類似性が低く)なります。
次は、グループごとに話題の中心になっている単語を調べます。グループごとに単語の共起ネットワークを作り、ネットワークの中心性の1つであるPageRankを算出して、話題の単語を特定しました。中心性が高いほど、話題の中心になります。
※テキストマイニングについて詳しく知りたい方は、『社会調査のための計量テキスト分析』を参考にしてください。
実際の議論を可視化してみたら・・・
2020年1月24日に開催された「日本発のラグジュアリーを考える」がテーマで開催された議論の内容を調べた結果が下の図です。
全部で164回の発言がありましたが、自己紹介の部分などを除いて実際に議論されている部分だけを抽出しています。
横軸は発言の順番で時系列です。右に進むほど議論が進んでいる状態です。そして、オレンジの太い折れ線グラフは、単語間の距離を指標化したものです。
グラフの下部の複数の折れ線グラフは、単語の中心性の推移を表しており、特徴的な話題の単語を書き出しました。
この回の議論の特徴は、大きな谷が3つできていることです。
![](https://assets.st-note.com/img/1661277955597-1xP4kB1X5b.jpg?width=800)
一番目の谷にあたる議論の内容は、参加された皆さんの発言を重ねた結果、「ヨーロッパのラグジュアリーブランド(エルメス)などは、パトロンの存在が大きく、自分たちのストーリーをしっかりと持っている」という1つの結論を導き出していました。
二番目の谷の部分は、話題の中心が「パトロン、大衆文化、バランス、無印良品」と移り、最終的には「日本を代表するブランドは無印良品ではないか」という意見にまとまりました。
三番目の谷は、「メゾン、合理化、経済」と話題が移り、「経済合理性だけで判断して良いのか」という考えに辿り着きました。
このようにさ単語間の距離が近くなることで議論が収束して、そこから新しい考え(単語)が加わることで、単語間の距離が遠くなり議論が発散されて、新しいアイデアに繋がっているのではないかと思います。
参加くださった皆さんの発言が重なって、新しい「考え」や「意見」が導き出されていることを可視化できたのではないかと思います。一人で考えるだけではなく、色々な人達と話し合う、意見交換することの大切さが見えてきたと思います。
今回ご紹介した議論はリアルな場で開催したものですが、これがオンラインならどのような動きをするのか等、今後は範囲を広げて分析できればと思います。
アカデミーヒルズ 熊田ふみ子
#アカデミーヒルズ #発散・収束 #ファシリテーション #KJ法 #テキストマイニング
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?