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奥深いアンモナイトの世界@三笠市立博物館

前回のnote記事からしばらく時間が空き、気付けば年も変わりました。2022年最初の投稿になります。本年もACADEMIJANをどうぞよろしくお願いいたします。

私たちが昨年のサイエンスアゴラに出展した企画では、三笠市立博物館を中継会場として使用させていただくとともに、同館に所属する相場大佑さんにアンモナイトをテーマにお話いただきました。本記事では改めて、三笠市立博物館とアンモナイトの魅力をご紹介します。

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三笠市立博物館の天井から飛び出す、アンモナイトを捕食しているモササウルスのオブジェ。
遊び心あるデザインに、博物館に入る前からワクワクします。


展示室に入るとそこは…:アンモナイトってどんな生き物?

北海道は、アンモナイトの化石が採れる場所がいくつもあり、世界的に有名な産地となっています。三笠市立博物館がある三笠市も北海道の数ある産地の内の一つで、博物館には大きさも形もさまざまなアンモナイト化石が、数多く展示されています。展示室に入るとまず目に入るのは、直径1mほどの大きさのアンモナイト化石がずらりと並ぶ壮大な光景。思わず一歩立ち止まり、目を見張ってしまいます。青いタペストリーが張られる天井に、室内を照らすほの暗いライト。そこはまるで、古代の海の中です。

中央に鎮座する大型のアンモナイト化石たちの周りには、壁沿いに展示ケースが並びます。中を見てみると、解説パネルと比較的小型のアンモナイト化石がずらり。解説パネルを参考に、アンモナイトとはどのような生物なのか見ていきましょう。

アンモナイトは、約4億年前に地球上に登場し、恐竜と同じ白亜紀末(約6600万年前)に絶滅した古生物です。実に3億年以上もの間、繁栄を続けていたことになります。アンモナイトを象徴するのがその渦を巻くような形をした殻。化石として見つかるのも、多くはこの殻の部分になります。

実はアンモナイトと見た目がそっくりな生物が現在の地球にいます。オウムガイです。アンモナイト類よりも早く地球上に現れたオウムガイ類は、現在も繁栄を続けており、「生きた化石」の一つに数えられます。アンモナイト類とオウムガイ類は別々の種ではあるものの、共通の祖先から進化した生物であり、殻の構造もよく似ています。

オウムガイの模型(左2つ)とアンモナイト化石(右)。殻の基本的な構造は同じですが、殻の中にある隔壁の縁の形状が異なるなど、細かな違いがあるようです。

オウムガイやアンモナイトは貝の仲間にも見えますが、実はイカやタコと同じ頭足類の仲間だというから驚きます。進化の系統を見ても、オウムガイ類よりもイカ・タコ類の方がアンモナイト類と近い関係にあるようです。アンモナイトの殻の中の、ほとんど化石として残らない本体部分について考える時は、イカの身体も参考にしているとか。一つの生物(の化石)をよく「観察」し、それを他の生物と「比較」してみると、面白い発見がたくさん出てきます。

簡易的な進化系統樹。はじめにオウムガイ類が分岐し、その後、
アンモナイト類、タコ・イカ類などが分岐しました。(イラスト制作:西條未来)


展示をみていくと…:不思議な形に進化したアンモナイトたち

壁沿いに陳列されたアンモナイトたちを順に見ていくと、奇妙な形をした化石に足が止まります。何の化石だろうと解説を見てみると、これもまたアンモナイトの一種とのこと。驚かずにはいられません。渦巻きがほどけてらせん状になった「ユーボストリコセラス」、殻を無理やりに押し丸めたような「ニッポニテス」などなど、その形状の多様さに、これまでのアンモナイトのイメージが覆ります。

左2つはユーボストリコセラス(Eubostrychoceras)、右3つはニッポニテス(Nipponites)という種類のアンモナイト。他にもさまざまな形をしたアンモナイト化石が展示されています。

渦巻き型以外の形に進化したアンモナイトたちは、まとめて「異常巻きアンモナイト」と呼ばれます。“異常”といっても、病気による奇形などではありませんし、特別に珍しいわけでもありません。特にここ北海道は、異常巻きアンモナイトの化石が多く取れることで有名です。渦巻き型と同じくらい、場合によってはそれより多くの異常巻きが採れるそうで、新種の異常巻きアンモナイトも複数見つかっています。

最近では、昨年の1月に三笠市立博物館から、新種発見のプレスリリースが発表されました。その名も「エゾセラス・エレガンス」。殻が縦に長い緩やかな螺旋をえがいているアンモナイトです。

北海道羽幌町で発見された新種の異常巻きアンモナイト「エゾセラス・エレガンス(Yezoceras elegans)」の生体復元画。三笠市立博物館プレスリリース(2021/01/13)より。画像は三笠市立博物館提供。


博物館の裏側:“異常巻き”の謎を追う研究

新種を含め豊富な化石が見つかっているとはいえ、異常巻きアンモナイトがどのような暮らしをしていたのかなど、まだまだ多くの謎が残っていると、三笠市立博物館の相場大佑さんは言います。

相場さんは、まさにこの謎の解明に取り組む研究者の一人です。進化の結果、殻が渦巻き型から変化したということは、生存に有利であった理由が何かあるはず。その理由を解き明かすことが、相場さんの目標の一つです。

多くの化石や標本が集まる博物館は、同時に「研究所」でもあります。「博物館の人」と聞くと、展示をつくったり、展示の説明をしたりしているイメージが強いですが、その裏では、博物館にある豊富な標本とにらめっこし、日々研究に勤しんでいるのです。


化石を通してアンモナイトの世界を感じられる場所

ここまでアンモナイトについて紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?私たちにもなじみ深いイカやタコとつながっていたり、渦巻き型以外にも様々な姿かたちに進化していたりと、一つの生物をとってみても、これだけ豊かな世界が広がっています。アンモナイトはすでに絶滅していますから、その豊かな世界を知る入り口となるのが、化石です。三笠市立博物館は、展示される大小・形もさまざまなアンモナイト化石たちを見ながら奥深いアンモナイトの世界を感じられる、貴重な場所といえるでしょう*。

本記事では紹介しきれませんでしたが、三笠市立博物館には、アンモナイト以外の古生物の化石やレプリカ標本、炭鉱の町として栄えた三笠市の歴史を紹介する展示もあります。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて休館が続いていますが、再び来館者でにぎわう日が一日も早く訪れることを願っています**。

*三笠市立博物館では、通常はアンモナイトの化石に実際に触れることができますが、現在は新型コロナウイルス感染症対策のため触れることができません。
**三笠市立博物館は、2022年03月21日(月)まで臨時休館(加えて、3月22日は休館日)、3月23日(水)から通常通り開館予定となっています(2022年03月21日時点)。


~おまけ1~
三笠市立博物館にて3月23日(水)から、三笠市立博物館ボランティアの会との共催企画展『きらめくアンモナイト』が開催されます。会期は5月8日(日)まで。こちらも要チェックです。

~おまけ2~
ACADEMIJANメンバーが三笠市立博物館を実際に訪れた際の動画も公開しています。よければこちらもご覧ください。


執筆:細谷享平

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