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民間保険業界の常識から解る日本の社会保険が破綻する可能性が高い理由


1.日本の社会保険は破綻が可能性は高い理由

まず、民間の保険事業者が事業を成り立たせるため、必要最小限守るべき2つの法則があります。

それが、給付反対給付均等の原則収支相当の原則です。

まず、給付反対給付均等の原則とは、リスクの高い物、保険金額の高い者程、それに比例して高い保険料を負担しなければならないと言うものです。

これを数式で表すと、P=wZ(Pは保険料、Zは保険金、wは保険金が支払われる確率)となります。

具体例を挙げると、年金保険なら、高齢者程、保険金が支払われる確率(w)が高くなるので、歳を取る毎に、保険料が上がっていき、医療保険なら、病気がちな人程、保険金が支払われる確率や額が上がるため、その分保険料は高くなるという事です。

次に、収支相当の原則とは、保険料の総額が支払うべき保険金の総額と相等しくなるように事業が運営されなければならないと言うものです。


そして、代表的な公的保険である健康保険(公的医療保険)、介護保険、年金保険について見てみると、保険料に関しては、応能負担と呼ばれるように、所得の高い者程、それに比例して高い保険料を払っていたり、実際に給付される各種保険の保険金についても、その原資に公金が投じられていたりする等、全く上記2法則を満たさない構造をしております。

つまり、民間の保険のように、高い保険金を受け取る者が、その分高い保険料を支払っている訳でもなく、給付される総額の保険金も、徴収した保険料だけで賄っておらず、公費を費やしているため、現行の社会保険は、長期的に存続させる事が難しい国営事業であると言えます。


2.インシュアテックによる社会保険改革案

民間の保険業界の中で、注目されている新しい技術として、AI技術を用いたインシュアテックと呼ばれるものがあります。

勿論、窓口の機械化等、典型的なAIの活用法等もございますが、特出している新しいサービスとして、保険利用者の行動を把握して、リスクの高い行動を行う保険利用者の保険料を高くするというものがあります。

例えば、既にそのような保険料の設定が成されている分野として、自動車保険が挙げられます。

具体的なやり方としては、保険利用者の車に、各種運転の内容を記録し、発信する装置を取り付けて、保険会社が随時その情報を把握し、独自の基準に則り、リスクの高い行動が行われていた場合、そのレベルと数に比して、保険料が上がるという仕組みです。

そして、これを公的保険に応用すれば、"医療を利用しない国民の保険料を下げる事が出来る"という事が実現可能となります。


各種公的保険の中でも、最も国庫の負担が大きいのは、医療保険であるため、その改革の必然性も最も高いと言えるでしょう。

その上で、医療保険制度を存続するために最も有効な手段としては、"国民に、不要な医療の利用を控えさせるようなインセンティブを設ける"事だと思っております。

そして、そのためには、医療を利用しなければしない程、健康保険料が安くなるという仕組みが必要不可欠である訳です。


3.悪用されている医療保険制度

医療保険制度の悪用事例については、挙げたらキリが無いので、今回はそれを枚挙する事はしませんが、その中でも言及すべきなのが、不必要な医薬品の提供であると考えております。

国民に各種医薬品が容易に提供される事の弊害としては、10代~20代の若者の間で横行している薬の過剰摂取(オーバードーズ)が挙げられ、非若年層についても、継続的な薬剤の摂取により、内臓機能障害が引き起こされる危険性もあります。

薬は、特定の病気に罹った際に摂取すれば、健康上メリットをもたらすツールとなりますが、必要でないときに摂取してしまうと、逆に健康を害するという危険性も持っております。

ましてや、日本の医療保険には、多額の税金が投入されておりますから、"国民の健康を害するために、多額の税金を投入している"現状は明らかにおかしいと言えます。

なので、国民に、不必要な時に医薬品を利用させないためにも、2章で挙げたようなインセンティブを与える制度が有効である訳です。


4.何故国民は現行の社会保険に不満を持つのか?

現在の各種公的保険は、本記事で取り上げた給付反対給付均等の原則に反し、収入が高ければ高い程、社会保険料が高くなるというシステムの下で成り立っています。

そして、その主な理由は、格差の是正のため、つまり、保険料を支払う者以外の第三者を救済するためと言えるでしょう。

つまり、現在の社会保険というのは、保険としての側面は持ちながら、同時に、社会福祉としての側面も持っていると言えます。


現在の社会保険料は、税金と異なり、政府(官僚達)が、立法府の関与無しに、恣意的に決める事が出来ます。

しかし、それが許されているのは、"社会保険が、社会保険料を支払った張本人にメリットがある制度であるから"ではないのでしょうか?

ですから、私個人の意見として、国民に納得されるような社会保険であるためには、"社会保険を使って貧困層を救済するのではなく、社会保険は、あくまでも、保険料を支払う張本人だけが得をするような仕組みであるべき"だと思っております。

そして、貧困層の救済格差の是正は、社会福祉として、別途、公費(税金)を用いて行うべきだと考えております。


まとめ.

本記事を執筆しようと思った切っ掛けは、"医療を受けなければ受けない程、保険料が安くなるような仕組みを作った方が良いのではないか?"と思った事です。

やはり、現行の医療保険制度は、前述した通り、社会福祉としての側面が強く、いくら病院に通ったとしても、支払う保険料は上がらないため、"コンビニ受診"と呼ばれるような、必要でない場合でも、医療を頻繁に利用するようなモラルハザードが起こりやすい環境が出来上がっております。

なので、それを改善するためには、収入が高かろうが、医療を利用しなければ、保険料が安くなると言うような本人にメリットがあるような保険としての側面を強めるしかありません。


そして、最後になりますが、医療保険制度を改革しようとする場合、自民党に多額の献金を行っている日本医師連盟等の医療関係者達が、大きな抵抗勢力となり得るでしょう。

しかし、現状、赤字経営の病院が7割を超えるような状況であり、社会保障を維持するための度重なる赤字国債発行によって、国の財政は悪化し続け、他分野への財政出動が抑えられておりますから、それを良く思っていない医療関係者も一定数存在する事も事実です。

実際、累積した赤字国債は、円の通貨安の大きな一因となっており、今起こっている物価高に直結しております。

いくら、現行の医療保険制度で恩恵を得ていても、円の通貨安が今より大幅に進んでしまったり、国の財政が破綻してしまっては元も子もありません。

なので、医療保険制度改革は、医療従事者達が損をする改革になる事は間違いありません。

ですが、長期的には、日本国民全体のため、日本国家のためになる改革となる事も間違い無い思っております。


参考文献.

・保険法 第4版 (有斐閣アルマ)



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