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企業による政治献金は悪なのか?:政党助成金制度の本質を考える


はじめに.

アメリカでは、ロビー活動と呼ばれるような、各企業が、自分達に都合の良い法整備を行って貰うために、政治献金を行うような文化があり、法的にも、その活動は保証されております。

そして、日本においても、ロビー活動に匹敵するような働きかけは、アメリカ程ではないにしろ、行われております。

例えば、Sotfbankの孫正義氏が、ブロードバンド事業に参入するに当たって、NTTに有利に設定された規制を緩和するため総務省に直談判しにいった話は有名です。

また、2chの創設者である西村博之氏についても、2001年にプロバイダ責任制限法が制定される前までは、掲示板内のあらゆる投稿について、法的責任を負う必要がありましたが、同法の成立後は、適切な掲示板の管理が実施されていれば、一切の法的責任は免除されるという事になった訳です。

ですから、各新興企業等が、企業活動を行うに当たって、規制緩和が必要であるならば、政治家や官僚達に対し、便宜を図るか否かに関わらず、規制緩和を訴えるための働きかけを行う必要があります。


次に、以下の画像の通り、自民党へ多額の政治献金を行っているような、日本医師連盟等の業界団体は数多く存在します。

「自民党への献金が1000万円超」の業界団体等トップ16

そして、"何故、政党に多額の献金をするのか?"と考えれば、自分達の権益を維持したり、自分達に有利な法整備を進めてもらうためでしょう。


つまり、一般的に考えても、ベンチャー企業や新興企業に限らず、各企業が新しい事業を始めるための規制緩和を呼び掛けたり、自分達の権益を守るためには、政治献金は必要と言えるでしょう。

確かに、競争法に違反するような、国民の利益や国益にならないような改革を行う事は容認すべきではないですが、正当な企業活動を行う上で、働きかけが必要な場合もあると言う事です。


ですが、企業による政治献金を全面解禁してしまった場合、当然、多額の政治献金が行える大企業のみが有利となり、大企業が得をするような法整備ばかり行われてしまう事でしょう。

なので、それを防ぐため、弱者の権益を守るという観点において、重要な役割を果たすのが、政党助成金制度となります。


ですので、本noteでは、政治献金やロビー活動の必要性を考え、そこから、政党助成金制度の問題点と改革案について、述べて行きます。


1.アメリカのロビー活動

アメリカの各大企業は、ロビー活動と言う名目で、両二大政党への献金を公に行っております。

特に、IT業界においては、活発にロビー活動が行われています。

その要因として、フィンテック等、ITの新業界への進出をする上で、規制緩和は必須となる事が考えられるでしょう。

例えば、移民法プライバシー法についての、ロビー活動が行われているようです。

特に、プライバシー法に関しては、日本でも、生成AI等による著作権侵害等が問題視されているように、AI分野の事業を行う場合は、命綱となる程大事な法律であるため、ロビー活動によって、自分達の有利な法律であるように、維持する必要がある訳です。


更に、日本同様に、規制緩和の面だけではなく、権益維持のために、ロビー活動が使われている面もあります。

例えば、GoogleやAmazonのような、大企業であれば、反トラスト法独禁法等の法律に、当然違反する可能性が大いにある訳です。

それでも、そういった規制や罰則を受けない事の大きな要因として、高額なロビー活動の存在が大きいと言える訳です。


2.日本における働きかけ

ロビー活動において、最も重要な事は、政策立案や意思決定の要となっている重要人物を割り出し、その人物に対し、働きかけを行う事です。

そして、日本における、政策立案の立案過程を考えれば、日本の殆どの法律は、各省庁が作成しているため、働きかけの対象としては、各省庁の官僚達が挙げられるという事です。

実際、ヤフーの法務担当者である別所直哉氏によれば、"ヤフー株式会社は、常日頃から、総務省だけでなく、警察庁、経済産業省、金融庁、環境省、文化庁、農林水産省、国土交通省、厚生労働省など数多くの省庁とやりとりをしている"という事です。

ここで、重要なポイントとしては、EUやアメリカでは、成立する法案の大半が、議員立法によるものだと言われておりますから、各政党や議員に、働きかけを行う事が重要になってくるわけです。

しかし、日本においては、各政党や議員への働きかけと言うのは、保険的な役割でしかなく、働きかけの本筋としては、結局、各省庁に官僚達に取り合って貰うしか無いという事です。


3.現行の政党助成金制度の弊害

政党助成金のメリットについては、冒頭でも述べた通り、政治献金を行えないような、経済的弱者である中小零細企業や個々の国民の意見を、各党の法案の策定や改正に反映させられる事にあります。


しかし、現行の日本の政党助成金制度においては、以下のような弊害が生じてしまっています。

①弱小政党による政治ビジネスの横行
②政党助成金の私的流用

ですので、本章では、この2点を改善するための、新政党助成金制度を考えたいと思います。


対策①:衆議員は20名以上、参議院は10名以上の議員を持たない政党には政党助成金を給付しない

まず、国会法において、"各議院において、議員が法律案を提出するには、衆議院では20人以上(参議院では10人以上)の賛成者がなければならない"との規定があります。

ですから、政党助成金の給付要件についても、丁度、その要件に合わせる事で、法案の提出が出来ない政党には、政党助成金を給付しないというような制度に改革出来ます。

何故、このような要件にするかと言えば、本来、政治献金とは、"大企業が、自分達にとって有利な法整備を行わせるために、各政党に給付するもの"であるからです。

つまり、法整備を行えないのであれば、政治献金を受けるに値しないと言う事が出来るからです。


ちなみに、以下の画像は、「政党助成金に群がる政治家達」と言う本からの引用となります。

解党・消滅した政党の助成金受取額

この画像を一見しただけでも、これまでに、どれだけ弱小政党が誕生し、税金が無碍に使われてきたかが、お解りいただけると思います。

勿論、弱小政党であっても、真面目に政治活動を行う政党がある事は事実ですが、議会の本質上、過半数を取らない事には何も始まりません

ですから、弱小政党が合併し、各派閥として、各弱小政党が残るような道もあり、その方が、法案提出も行えるため、国益や国民の利益を考えたら、有益ではないかと思います。


対策②:政党助成金の総額を減らす

現在の政党助成金の総額は、約315億円となります。

その捻出費用の根拠として、政党助成金制度の発足の際、"年間の政党活動費の1/3程度が妥当だろう"と、当時の自民党と民主党によって合意が形成された事が挙げられます。


ですが、現実問題として、自民党を中心に、政党助成金が、私的に流用されたりテレビCMや新聞広告に消えている事が、指摘されております。

特に、テレビCMや広告を打つためには、数億~数十億かかるとされておりますから、税金を原資にして、そういったことを行う事自体問題だと思う訳です。

例えば、2013年には、テレビCMや新聞広告費等の宣伝事業費に充てられた金額は、各党合わせて、110億円に昇り、比率として、約60%の政党助成金が、それらの宣伝事業費に使われたという事です。

更に、私的流用に関しては、車の購入代エアコン工事代携帯電話代に充てられているとのことです。


しかし、私が考えるような政党助成金の本質から考えれば、政党助成金とは、"弱者のための法整備を行うための費用"と考える事が出来るでしょう。

ですから、国会議員一人当たり平均5000万円も支給されているような、高額な政党助成金は必要無いと思う訳です。

実際、広告費や私的流用に、助成金が消えている現状を見れば、現在のような高額な助成金は必要無いと言えるでしょう。

ですから、国会議員一人当たり500万~1000万程の政党助成金額に減額しても、弱者に有益な法整備は十分行えると考えます。

また、選挙活動で費用が必要なのであれば、政党助成金とは別の制度を設け、支給されるべきだと考えます。


まとめ.

政党助成金は、弱者の権益を守る上で、必要な制度であるという事です。

しかし、その意図に基けば、現在のような高額の助成金を、各党に給付する必要は一切ないと考えられる訳です。

更には、2章で述べた通り、日本の政治家は、政策の立案過程に、殆ど関与していないため、その点も含め、現状の政党助成金の額は多すぎると思う訳です。

特に、大規模政党程、政党助成金が交付され、それを原資に、テレビCMや新聞広告等を打つ事が出来てしまえば、政党間の格差を助長する事にも繋がってしまい、弱者の権益を守るという理念から大幅に逸れてしまう事も考えられます。

ですから、そういった不当な助成金の使い方がされないように、衆参議員の人数に基く助成金の算出方法自体も見直し、大規模政党への助成金給付額を抑える必要もあると思います。


そして、企業献金の話に戻りますが、やはり、各企業にとっては、政治家に掛け合って、有益な規制緩和を行って貰ったり、有利な法整備を維持して貰う事は、ある程度は必要であると考えます。

その理由としては、看過出来ないような、不当な政治献金があるのも事実ですが、正当な理由に基く政治献金(ロビー活動)も存在すると思っているからです。

確かに、欧州やアメリカとは、風習が違い、企業献金を受け取らなくとも、各企業のために奔走出来るような良識のある議員は、日本においては多いのかもしれません。

しかし、実際、献金を貰うか貰わないかによって、各議員のモチベーションが変わる事もあると思います。

ですから、"企業献金は悪だ"と決めつけるのではなく、国内の経済活動を活発化させるという意思の下、必要な政治献金については、受け入れるという体制を執るのが、政権を担うような政党運営を行う上で、必要であると考えます。


参考文献.

・政党助成金に群がる政治家たち

・ロビイングのバイブル

・世界市場で勝つルールメイキング戦略 技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか

・ビジネスパーソンのための法律を変える教科書


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