見出し画像

【指導】サッカーに学べ!指導者に必要な「目を合わせる」技術

こんばんは。アカデミー神戸進学会の西富です。

今回は「サッカーに学べ!指導者に必要な 目を合わせる技術」というテーマで書いていきます。久しぶりの指導者ネタです。
タイトルだけではあんまり意味が分からないと思うんですが、ざっくり言えば「正しく伝えるための技術」っていう感じです。

先日「サッカーに学べ!わからない問題を解決するための考え方」という記事を書いてみました。完全に趣味の押し付けだったんですが、予想以上に閲覧して頂いたみたいで味を占めて今回の記事となります。

ウチの指導研修の内容でもあるので、指導者の方は
「へぇ~、こんなことやってるんだ~」
ぐらいには思って頂けるかもしれません。

ただし僕は意外と硬派
「指導にも、学習にも、〇〇するだけ!的な裏ワザはない。ただただ地道に技術を磨くしかない」
と思っているタイプなので、内容は結構地味かもしれません。

「伝える」ということが、こんなに難しいとは

当たり前ですが、僕らは普段生活する中で人に何かを伝えるという場面は死ぬほどあります。

「ちょっとそこのホッチキス取って」
「今日のミーティングの時間変更になったよ」
「このお菓子、駅前のコンビニで新発売になってたんだけど、めっちゃおいしいよ」
「帰りにマヨネーズ買ってきて」

みたいな。
そして、大抵の場合、特に差しさわりなく日常を送れています
だから僕らは「伝える」ということに、基本は成功している

と思っている。

でも指導者と呼ばれる仕事をしていると「伝える」ということが、実はとんでもなく難しいことだと気づかされます。

先生「………で、あるからして。ここはこういうコトなんだよ。どう?わかった?」
生徒「わかった!」
先生「よし!じゃあこの問題やってみて」
生徒「はい!」
・・・・・・・・・・
生徒「わかんない…」
先生「えっ!?なんで!?さっきわかったって言ったじゃん!?」
生徒「さっきはわかった」
先生「えっ!?じゃあこの問題は??」
生徒「………わかんない」
先生「???????」
生徒「???????」

なんてシーンは巷の学習塾には腐るほどあります。

「伝える」とは

ここで「そもそも伝えるとは?」みたいなトコから出発したい僕の悪癖が炸裂し、「伝える」の定義について確認します。

ウチの塾では

「伝える」とは指導者の頭の中の映像を、学習者の頭にも表示させること

という感じにしてあります。
「映像」と言ってしまうと語弊があるかもしれません。
この「映像」は少し抽象的な意味での「映像」で

こう捉える
こう考える
こう理解する
こう解く

といった「概念」まで含めています。
ようは「考えていること・思っていること」といった意味合いです。
だから

指導者の考えていることが、学習者の頭に移ること

と言い換えてもいいかもしれません。
僕は指導者と呼ばれる仕事をやっていて

スマホからパソコンにデータを移すみたいに
自分の脳と生徒の脳にコードぶっ差して情報を送れたらいいのに

と、常々思っています。
こうなったらマジで最高なんですが、残念ながら今の科学技術では不可能なので、仕方なく「言葉」というツールを使って伝えることになります。

言葉を発することで、指導者の頭の中を学習者の頭の中に映す

ということですね。なんだか量子テレポーテーションみたいですね。

ということなので、

一生懸命話したけど、生徒はわからなかった

「伝える」になっていません。伝わってないんだから当たり前ですが。

ここで厄介なのは、指導者がちゃんと事実を論理的に言語化しても、伝わるとは限らないということです。

「伝える」ためには、正しいことを正しく言えばいいってもんじゃない

ここに、多くの指導者が頭を悩ませています。

風間監督の「目を合わせる」

そこに示唆を与えてくれるのが、サッカーなワケですね(笑)

サッカーはチームスポーツです。
相手を度外視して考えてもチーム11人が一つのフィールドで一つのボールを扱っているワケで。ちゃんとした意思統一がなければ成立しません。
しかも試合中は1秒ごとに状況が全く変わってしまう始末です。
「ここにボールが来たらどうする?」みたいなことを悠長に話し合っているヒマなどあり得ないワケです。

そんなサッカーという競技の中で、指導技術に大変定評のある有名な監督がいます。風間八宏監督です(現在は監督されてないかもしれません)。
Jリーグで川崎フロンターレや名古屋グランパスの監督をされていた方です。
僕もご著書やインタビューでいつも勉強させて頂いてます。

風間監督はサッカーについての本もいくつか書かれていて、その中でも僕のお気に入りがこちらです。

「技術を言葉で再定義する」って素晴らしい表現、素晴らしい試みですよね。

さて、この本の中で風間監督は「目を合わせる」という概念を提唱されています(大袈裟?)。この本の中では

【目を合わせる】
パスの出し手と受け手の意図が一致していること。
「いま」の共有が前提となる。そのタイミングで受け手が受けたい場所を出し手が理解している。または出し手が狙う場所を受け手が理解している状態
(『技術解体新書』p.24 より引用)

と定義されています。
ボールを持っている人(=これからパスを出す人)の「あそこが空いているな!よし、あそこにパス出すよー」という意思と
ボールを持っていない人(=これからパスを受ける人)の「あそこにパスを出そうとしているな!よし!走りこもう!」という意思が一致している状態です。
つまり、出し手と受け手の2人が同じ映像を頭に浮かべている状態です。
(ビジョンが一致する とか言ったりもします)

さて、もう一度書きます。
「目を合わせる」とは「出し手と受け手の2人が同じ映像を頭に浮かべている状態」です。

ここで「伝える」の定義も再掲します。
「伝える」とは指導者の頭の中の映像を、学習者の頭にも表示させること
です。

一緒でしょ?
つまり先生と生徒で「目を合わせる」ことができれば「伝える」は成功ということになります。

「目を合わせる」ために「『いま』を共有する」

さて、めちゃめちゃ遠回りして「伝える」の目標が「目を合わせる」状態にあると確認しました。

ここからは
じゃあ具体的にどうすんの?
という話に移っていきます。
(ここからようやく技術のお話になります!)

ここでも風間監督の言葉が示唆を与えてくれます。
もう一度『技術解体新書』から「目を合わせる」の説明を引用します。

【再掲】
【目を合わせる】
パスの出し手と受け手の意図が一致していること。
「いま」の共有が前提となる。そのタイミングで受け手が受けたい場所を出し手が理解している。または出し手が狙う場所を受け手が理解している状態
(『技術解体新書』p.24 より引用)

「いま」の共有が前提となる と書かれています。
これはパスの出し手と受け手が同じタイミングで同じ状況を認知しているということです。サッカーというのは広いフィールドに22人もの選手が入り乱れてますから、その状況を全て頭に入れ続けるのは(普通は)不可能です。だからその中から次のプレー判断に重要な部分だけ(味方数人、相手数人)を把握することになります。ここで把握した状況がパスの出し手と受け手で異なってしまっていては、二人の意図は一致せず、目が合わさることはありません。またタイミングも重要です。サッカーでは刻一刻と状況が変わるので、例えばパスの出し手が首を振って状況を把握して、その2秒後に受け手が状況を把握すると、二人が見た状況は異なるものになってしまいます。この場合も目が合わさる確率は低くなってしまいます。
(そろそろ自分がサッカーの話をしているのか学習指導の話をしているのかわからなくなってきました!)

学習指導で言えば例えばこんな問題

24年図形縮尺

結構複雑な図ですよね。点の数も9つあります。
これらを全て同時に把握するのは至難の業です。
この問題、数学をやっている方なら結構な確率で△ABHが気になると思います。
全てを同時に把握するのが困難だから、問題を解くのに重要そうな三角形に着目する
というのは数学の常套手段です。
そして、ここからが(やっと)重要なんですが、イキナリ

まず∠AHB=90°でしょ?

みたいなことを言っても、生徒は

え!?

となってしまいます。なぜならこのタイミングで生徒は△ABHには注目しておらず、9つの点が全て等しく見えている可能性が高いからです。

目を揃える1

こういう状態です。
この状態でいくら正しい言葉を重ねても、スタート時点から目がズレてるんだから正しく伝わるハズがありません。

こういう時は

よし、じゃあまず最初に△ABHを見つけてみて

と言って待ちます
(この場合、数学が得意な生徒で3秒くらい、苦手な生徒なら8秒くらいです。「待つ」のも実はけっこう高度な技術です。いつか記事にします!)
丁寧にやるなら

見つけた? ちょっと指指してみて。 A ⇒ B ⇒ H

みたいな感じで、ちゃんとA・B・Hという3つの点に注意が集中していることを確認します。

目を揃える2

こんな感じになります。
こうやって思考のスタートラインを合わせることで、これから言う言葉が生徒に伝わりやすくなります。
風間監督の言葉を借りるなら「いまを共有する」ということですね。

生徒に何かを「伝える」ときは「いまを共有する」ところから始める

これがウチの指導の基礎基本。
新人が入ってきたら真っ先に教える技術です。

めちゃくちゃ地味なのは自覚してるんですが、めちゃくちゃ重要なんです。これ。
というか、派手な技術ってのは得てして特定の場面でしか役に立ちません。
本当に指導の質を底上げしてくれるのは、地味な技術だと僕は思ってます。

マンツーマンで指導するのを専門にしている方は、この技術をクセづけるだけで結構伝わりやすくなります。

そして、やっぱりサッカーってすごい。

書ききれなかった!

これだけ長々書いてきた挙句書ききれなかったっていう。

「伝える」についての技術はここで終わりではありません。
ここから本当は「言葉」について掘り下げるつもりでいたんですが、もう僕の手首が限界を迎えてしまったようです。
(他の仕事でもけっこうタイピングしてるもんで!)

まぁでも「サッカーから学べ!」の部分は書ききったと思います。
次は「ウィトゲンシュタインに学べ!」になるかな。
「伝える」をちゃんと成立させるために「言葉」をどう扱っていけばよいかの記事になると思います。

言い訳

最後に2点、言い訳をさせて下さい。

一つ目。長々と偉そうに書いてきましたが、僕はサッカーについては完全に素人です。下手の横好きで見聞きした情報を僕なりに理解して指導に取り入れているつもりですが、多分に誤解・理解不足が含まれている可能性があります。今回引用した本についても、僕が誤読している可能性もあります。ご紹介した内容に不備があった場合、その責任は本の著者ではなく全て僕にあるということを明記しておきます。また、お時間のある方はご自身で記述を確認して下さい(その方が安全です)。

二つ目。これは細かい話ですが、今回は風間監督の記述に合わせて「目を合わせる」という表記を使いましたが、僕の研修では「目を揃える」という表記にしています。
(バラバラになった書類をトントンってして端を揃える。あの感覚に近いので!)
中身は完全に今回ご紹介した本のパクりであり、僕のオリジナルではありません!僕の研修を受けられている方は誤解のないようにお願いします!

【アカデミー神戸進学会】
神戸板宿・宝塚山手台にあるコーチング型個別指導の専門塾です。「学習のプロ」が生徒の学力を細かく観察・分析し、学習法・計画法・キャリア形成に特化した指導をしています。 noteでは塾生向けに学習法・受験・進路・キャリアについての情報を 保護者の方向けに教育・受験・キャリアについての情報を発信します。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?