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不細工で短足、そこがいい

前の職場で、猫のデジタルイラストを描いたことがある。
私はいわゆるブサ猫、不細工な猫が好きだ。大好きだ。だから、その時描いていたイラストも、不細工で短足な猫だった。

すると、たまたま通りかかった同僚が、そのイラストの猫にダメ出しをしてきた。
まず、猫に見えない。
顔が大きい。鼻が低い。いっそ別の生き物に見える。
おまけに短足で尻尾が短く、美しさに欠ける。
毛の色も全部ネズミ色で、印象も良くない。
「あなた、背景を描くのは上手なのにね~」とか何とか言って、まったく違うデザインにするようアドバイスされた。

また別の場面では、子猫が大股を開いてゴロンと寝転がっているデジタルイラストを描いていた。
私は猫のお尻が好きだ。猫のお尻というものは、オスでもメスでも、丸くて毛でおおわれていて、ふわふわしている。
それに、猫というものは、こちらに気を許してくると、えてしてお尻を押し付けてくる。こちらを親だと思い、「お尻を舐めてくれてもいいからね~」と預けてくれるのだ。
実際、猫にそうされた場合、「気持ちだけもらっておきます」とお断りするのだが、嬉しいことは嬉しいので、撫でておく。
だが、そういうお尻を向けてくる猫の姿を、イラストにしてみると、あられもない姿と感じる人もいるらしい。
グラフィックデザイナーにそのイラストを見せたところ、猫のお尻を隠すようにアドバイスされた。

仕事やSNSなどでは、美しく、気高く、弱点のない猫が求められることがある。
そういうものだと理解はできるのだが、現実の猫は、必ずしもモデル体型ではない。小顔で足が長く、胴回りがシャープ。目はぱっちりしていて、鼻の高さや尻尾の長さは、まあまあ。
そういう体型は、理想的かもしれないけど、そうじゃない猫が大半ではないだろうか。

私の実家で飼っている猫は、四つ子の中の一匹として生まれた。
他の兄姉はトラジマだったが、一匹だけ真っ黒い毛並みだった。尻尾も、一匹だけカギ尻尾。短足で、今では顔が肉まんくらいの大きさになった。

もしこの黒猫が人間だったなら、「どうしてボクだけ、みんなと違うの?」と悩みそうなくらい、個性的な見た目だった。

だが、その猫はとてもマイペースな性格だ。
学習能力が高く、いつも穏やかに過ごしている。飼い主に抱っこされても、少しの間、我慢してくれる優しさも備わっている。

こんなに良いところがたくさんあるのに、「顔がでかくて可愛くない」だの「足が短くて美しくない」だの、無粋な理想を押し付けてくる者は、うちの家族にはいない。

不細工だろうと、短足だろうと、太っていようと、カギ尻尾だろうと、我が家では全面的に肯定される。
猫でも人間でも、唯一無二なところがいい。
そこが、最高なのだ。


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