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抽象化が本質を引っこ抜く

物語を作るのには、ストーリーラインが欠かせない。
ストーリーラインというのは、物語の類型、パターンのこと。
現実に起こる出来事は、必ずその引き金となる理由がある。Aという出来事が起こることによって、Bという出来事が引き起こされる。
そういった因果関係が、物語という体裁となる。そうすると、秩序のある類型を形作るわけだ。

どういう因果関係なのかを、シンプルに記号などを使って考えてみる。
そうすると不思議なことに、物事の本質が見えてくるものだ。
前田裕二さんのベストセラー「メモの魔力」というビジネス書にも、正しく「本質」を見抜くことによって、自分の問題にも応用できる旨が書いてある。
日常生活においても、人とのコミュニケーションにおいて、相手の言動の捉え方や考えようによって、ずいぶんとストレスが減ることもあるのではないか。

例えば旧年などは、ひろゆきさんの「それ、あなたの感想ですよね?」というセリフが流行った。小学生が真似して、その子の親がムカッときたり、ストレスを感じたりするという話を、たまに耳にした。
親にとっては、子供が親をバカにするような態度を取ってくるのが、気に食わないのだろう。
だが冷静になってみると、子供は親をバカにしたくて言っているのだろうか?
ただ、そのセリフを言いたいだけ。とどのつまり、構ってほしいのではないだろうか。

「感想」という言葉そのものは、私は肯定的に感じている。
所定のやり方で統計を取ったわけでもない。データに裏打ちされた根拠があるわけでもない。
かといって、常識となるような正論でもない。
それでも感じたことがある場合、私は「あくまで感想なんだけど」というセリフを、よく付け足す。

大学で学問を専攻したり、卒業論文を書いたりしたことのある人なら、何がデータで、何が個人的な感想なのか、きちんと識別できるかもしれない。
理論的に考えることは、適切なコミュニケーションを図るためにも、重要なスキルだろう。

とは言え、あんまり理屈優先で考えるのも善し悪し。
本来なら、心で感じて楽しめるものも、楽しめなくなることもある。

私が抽象化の練習をして、ストーリーラインを考えている時。
休憩時間に、PCで、とある出版社のホームページを開いた。
今後どんな新刊が出るのか、どんな作品が売れているのか、ラインナップを見ていると。
以前なら、どんなストーリーなのかとか、どんな登場人物が出てくるのかとか気になったものだが。

私は隣にいた相棒に、こう言った。
「あんまり抽象化ばっかりしてるとさぁ、『この小説、読者にどんな体験をさせてくれるんや?』って思考になるね」
相棒は、大きくうなずいた。
「わかる」

理屈ばかりでは、せっかくの読書体験も、無味乾燥になりかねない。
頭の中にスイッチを設けて、必要な時だけ抽象化スキルを使いたいものだ。


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