育成シミュレーションゲーム完成記念の制作裏話とか【ストーリー編】
今から大体一か月ほど前、「従妹を大学へ連れていく!」というフリーゲームを公開しました。
事故で両親に先立たれ養子となった主人公が、義理の従妹である小佐内琴深さんの家庭教師となって彼女を受験合格に導く――そんなあらすじの育成ゲームです。
そして前回のnote記事で予告させていただいた通り、今回はこのゲームのストーリー面についての裏話とかを書きたいと思います。
参考として、前回のシステム面についての記事はこちら。
ちなみに、今回はがっつりネタバレをしていく予定です。
なので、もしこの記事を見つけて、せっかくのGWだし遊んでみようかな~と考えてくださった方がいましたら、是非この記事を読む手を止めてプレイしていただけたらと思います!
キャラクターイラストについて
さて、まずは本ゲームを語る上で絶対に外せない要素としてイラストについて。
今回は立ち絵・CGとSDキャラクターをそれぞれ別の絵師さんに依頼し、自分はシナリオとプログラム・UIに注力する体制で制作を行いました。
前作の「七不思議の七番目 幸色の厄災ちゃん」はフリー素材や購入した素材を利用した部分を除いて、全てを自作で進めておりました。
が、全部はあまりにも大変すぎる!! と完全にキャパオーバーとなってしまったため、今回はキャラデザのみを自分で行い、ゲームで使用するイラストをプロの絵師さんに任せようと制作初期の段階で決めていました。
絵師さん方は流石はプロといったところで、それはもう自分の想定した従妹にピッタリのイラストを仕上げてくださりました。
立ち絵は通常の制服以外にも、夏/秋/冬の季節に応じた私服とお祭りの際に着用する浴衣の全5パターン。SDキャラクターは各行動コマンドごと、ものによっては通常/成功/失敗の表情差分も合わせると全18枚のイラストを描いていただきました。
……改めて見返してみると、本当に物量がすごい。自分一人じゃまず不可能な枚数です。
ちなみに、個人的にお気に入りな立ち絵は冬服でマフラーを巻いた琴深さん。お気に入りのSDは数学コマンドの琴深さんでした。
もちろん、どの衣装もどの行動コマンドもかわいいのですがね。
プロローグ~夏祭り(チュートリアルの章)
本ゲームのシナリオは大まかにまとめると三つの章に分かれていると思います。
一つ目が、プロローグから夏祭りまでのチュートリアル期間。
二つ目が、夏祭りからクリスマスイブまでの交流を深める期間。
三つ目が、クリスマスイブから統一模試までの勉強を極める期間。
なんとなく雰囲気が変わったことを演出するために、実は育成画面のBGMを期間ごとに変えていたりしました。小説や一本道のゲームだと、章ごとにタイトルを出すような形で区切りをつけているところを、今回は音楽で区切ってみた感じです。
一つ目となるチュートリアル期間はプロローグーー琴深さんとの出会いから物語が始まります。
と、その前に名前入力がありますね。主人公が長葭おじさんの養子になるところからストーリーが始まるので、名前入力画面も養子届を模したものにしています。
ただ名前を入力するよりも、自然と没入感を得られるかなと思って試してみました。個人的にもお気に入りな演出の一つです。
少し話が逸れますが、主人公の養子となる長葭おじさんは、名前からも察せられる通りに童話の「あしながおじさん」をイメージしております。ちなみに、ジュディおばさんは「あしながおじさん」の主人公である女性の名前です。自分もこのゲームを作るにあたって調べて、初めて知りました。
閑話休題、として。
名前を入力した後は導入となる主人公が家庭教師となった経緯が語られ、そして琴深さんと六年ぶりの再会を果たす。勉強の話やテストをしている時は少し緊張していた二人も、雑談を交わすことで少しずつ雰囲気も柔らかくなる。お話しパートでBGMが切り替わり、ここから仲良くなっていきますよ感を演出してみたりしました。
ただ、このあたり、振り返ると操作パートへ到達するまでに結構時間がかかっちゃってるよなーって思います。
今時のゲームだと、ゲーム開始をして一分も経たずに操作パートが入るものも多いですよね。この作品が小説ではなくゲームである以上、なるべく早く育成部分を遊べるようにしたい気持ちもあったのですが、主人公のバックグラウンドの説明と出会いの部分を伝えるには、どうしてもそれなりの文章量が必要になってしまいました。
これでもかなり圧縮したつもりだったのですが、読み物としての側面を強くしている以上は削り切れない部分もあるのかもしれませんね。
プロローグが終わり、育成画面へ。
夏休み期間はゲームのチュートリアルな側面もあったので、お出かけイベントの導入やランダムイベントの発生などが合間合間に入ってきます。
ちなみに、ランダムイベントは全部で10種類ありますが、この夏休み期間に入る最初のランダムイベントは、小佐内家の猫であるチロちゃんの紹介で固定されていたりします。
イベントが固定されていたらランダムではないのでは? まあ、発生日はランダムだし、残り九つのイベントはランダムに選定されているのでセーフということで……。
お出かけや会話を重ねて親睦を深めていく二人。そして、最初のターニングポイントとなる夏祭りに突入します。
本ゲームでは概要欄には育成期間が九か月間だと明記しているのですが、ゲーム内では後述するクリスマスイブまで終了日の説明がありません。なんなら、プロローグでは夏休みの間だけなんて書いてるくらいです。
夏休みまでだと思っていたら、まだまだ続きがあったのか! は、育成ゲームとしてはちょっとアンフェアではありますが、シナリオ都合の方を優先することにしました。まあ、概要欄には書いているし、各々のテストがハードルになっていることに変わりはないので、ギリギリ公平性は保たれている……のかな?
二人で夏祭りを楽しみ、二人の真の出会いである六年前を振り返り、そして花火の下で家庭教師を続ける決意を固める。
ここの会話シーンの最後で「君を大学へ連れていく」とタイトル回収を行っています。タイトル回収っていいですよね。
そして、ここまでで主人公と琴深さんそれぞれのバックグラウンドの提示が全て完了します。二人の関係性が不明瞭なままだとプレイヤーと主人公との間で感情に乖離が出てしまうので、このシナリオではなるべく早めに提示することを心掛けていました。
なので、ここまでがチュートリアル期間を銘打っていたり。信頼度が好感度に切り替わり、ここからゲームの本番――琴深さんと仲良くなるお話が始まります
夏祭り~クリスマスイブ(交流を深める章)
このゲームで最初となるテストが終わり、季節は秋へ。
季節が変わったことで、衣装もまた夏服から秋服に切り替わります。季節ごとの立ち絵を用意してくださった絵師さんに感謝です。
この章ではお出かけやランダムイベントを経て、琴深さんと交流を重ねて好感度を高めていきます。
お出かけが解禁。ここからアミューズメント施設に遊園地にと、徐々にお出かけスポットが増えていきますね。
こういったヒロインの子と仲良くなっていく過程をイベントとして見られるのもまた、育成ゲームの楽しいところの一つだと思っています。お出かけやランダムイベントのシステムのおかげで、操作パートの間で程よく時間を空けて文章を読んでもらうことが出来るのも好なポイントです。
ちなみに裏話として、ランダムイベントの中には一つだけ出現率の低いものがあります。具体的には、主人公が病気にかかってしまうイベント。
別のランダムイベントで琴深さんを部屋に招待していることが条件なので、必然的に確率が下がっているというわけです。その分、パラメーターの補正値も他のランダムイベントより高かったり。一周目で見れた方はなかなかの幸運だと思います。
本章である大きなイベントとしては、文化祭と琴深さんの誕生日でしょうか。彼女にとっては修学旅行もまた大きなイベントの一つですが、大学生の主人公はお留守番なのであまりやることはなかったですしね。
文化祭パートのテーマは遊びイベントでした。そのため、イベント内ではヒットアンドブローというミニゲームを用意してみたりしました。
ヌメロンの方が聞き馴染みのある方も多いかもしれませんね。個人的に道具なしでお手軽に出来る推理ゲームとしてお気に入りだったりします。
それと、実はこのゲームの舞台となる年代と学校は前作と一緒という裏設定があったりします。琴深さんは前作キャラ達と同級生で、時系列としては夏からなので前作の後になるでしょうか。
なので、文化祭でも七不思議の話とかちょっとした小ネタが入っていたりします。知らなくても問題ないように作っていますが、知っているとふふっってなる楽しさがあるかも。
そうして秋から冬にかけて交流を深めていき、クリスマスイブの前に勇気を出した琴深さんよりデートのお誘いを受ける。このイベントはお出かけなどでしっかりと好感度を高めていれば、自然と発生するようになっています。
そして迎える二つ目のターニングポイント、クリスマスイブデート。
二人でクリスマスマーケットを見て回り、美味しい料理を食し、最後は夜の遊園地で観覧車に乗る。
観覧車、好きなんですよね。自分で乗るのも良いですが、やはり一番は好きなカップリングの二人が乗っている観覧車。都会の喧騒が遮断された特別な空間で、綺麗な夜景を眺めながら過ごす二人――展開的に問題がなければとりあえず観覧車に乗せたくなる、それくらいには好きなスポットです。
ちなみに、デートの舞台にはなんとなく横浜のみなとみらいをイメージしてシナリオを書いていました。ただ、あくまでもイメージなので施設系はまるで違いますが、都心部にある入園無料の遊園地でなんとなく察した方もいましたかね?
そして、このイベントがターニングポイントたる理由の全ては、このゴンドラ内での会話にありました。
先生と同じ大学を目指したいと、琴深さんの決意を受け取るシーン。
初めのチュートリアルの章にて語られたのが二人のバックグラウンドなら、ここで語られたのは二人の現在の関係性について。
この時点での関係は、ただの生徒と先生以外にも少しばかり複雑なものを抱えていました。
それは義理の従兄であったり――父親代わりであったり。
彼女は幼い頃に父親を失っており、主人公もまた幼い頃に両親を失っている。故に、ここの二人の関係にはある種家族の模倣を――兄であったり父であったりの役割を重ねられている部分もあったかと思います。
けど、このデートを以て家族という役割との別離を果たし、従兄であり友人として主人公を見るようになる。この特別な感情が恋心なのか、その判断が決定付けられるのはエンディングの話となります。
個人的に好きな演出としては、会話の雰囲気に合わせてゴンドラ内の電気が落ちるシーンですね。月明かりと夜景の光にのみ彩られた世界は、想像の中だととても神秘的に映ります。現実だと、少し顔が見辛くて困るのかもしれませんけどね。
そうしてクリスマスイブのデートが終わり、システムより最終目標が伝えられます。
本編でも語られている通り、統一模試の結果はあくまでも指針でしかないことは承知の上ですが、やはり明確な数字としてわかりやすく結果が出るものでもあるので、このゲームでは模試の結果を最終スコアに設定しました。
メタ的な理由としては、同じ年ももう一年繰り返すとイベント的にも冗長になりそうだし、三年生は遊びよりも勉強の比率が遥かに高くなってしまうので、二年生の終わりにちょうどいいハードルが欲しかったというのもありました。
クリスマスイブ~統一模試(勉強を極める章)
さて、ここから先はエンディングまでかなり駆け足で進んでいくことになります。
大きなイベントとしてあったのは、お正月と福引くらいでしょうか。
システム編の方でも少し書きましたが、福引では特等を引くと温泉旅行券が当たります。
温泉旅行へ行く条件は琴深さんと恋人になった状態でエンディングを迎えること。エンドロールのクレジット表示後になんかギャグみたいなテンションでカットインが入って、温泉旅行に行くこととなります。
温泉旅行はシステム面で色々と参考にしたウマ娘でも定番のイベントですね。ただし、こちらのゲームではタオル姿の立ち絵はないのですが……。
そのかわりというほどでもないですが、夏祭りで着ていた浴衣姿の琴深さんが再登場したり、関係の進展が窺える話があったり。
小さなイベントだとバレンタインデーやホワイトデーもありますね。
ホワイトデーでお返しするお菓子については、他の様々なイベントで得てきた琴深さんの好みの情報を合わせれば、自ずと一番良いものが見えてくる……かもしれませんね。
そうして年明けから年度末までの期間を走り切り、物語はエンディングへ。統一模試の結果が表示されてから、月日は流れてあっという間に卒業式を迎えます。
正直、ここからの物語については本編中で書ける限りを詰め込んだ気持ちなので、あまり裏話的なものがなかったり。
強いて挙げるなら、卒業のシーンではいろんな種類のBGMを存分に使わせていただいたことでしょうか。
花火大会やクリスマスイブ、卒業式のように、要点となる大事なシーンでは、その瞬間でしか流さない専用のBGMを用意したいという思いが個人的にあったりします。なので、前作でも要点となるシーンでは専用BGMを用意していました。
キャラ固有や場面専用のBGMがあると、特別感の演出にも役立つ気がするので、毎回意識していることだったりします。フリーで音楽をたくさん使えることに心からの感謝を。
あとは、告白直前の「私を見ていてほしい」のシーンで背景を真っ白に変更したのは、言葉の通り彼女だけを見ていることを演出する目的でやってみました。
ヒロインの少女にだけ焦点が合わさり、君だけを見ていることの証明となる。
――裏話はそんなにないと思っていたのですが、意外と話すことがありましたね。
昔から書いていた小説なども含めて、これまで一本道のシナリオ重視な物語だけを書いてきたので、こういった日常を切り取っていくような育成ゲームのシナリオを書いたのは初めての経験でした。
そして、やはりというか日常会話を書くことの難しさを再認識した日々でもありましたね。ストーリー的に目標だったり動きがあればその本筋についての話をしていればよかったのですが、何気ない雑談の中で面白さを作り出すのは個人的にとても大変な部分でした。
あとは、ネタ切れの恐怖ですね。イベントで書くことがない……! というドツボにはまることを防ぐため、散歩や小旅行に出たりもしました。
けど、そういった苦悩のおかげもあってか、初めてにしてはしっかりとかわいい従妹のヒロインを書けたのではないかと思っています。
遊んでいただいた方に、琴深さんのかわいさが伝わっていればいいなと――そんな作者の一番の望みを最後に、ここで筆を置かせていただきます。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
次回の投稿では、新作で作っているゲームの話か、あるいは別の雑談を挟んでもいいかもしれませんね。
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