『狼の幸せ』パオロ・コニェッティ 飯田亮介訳
ミラノ生まれの作家、パオロ・コニェッティは子どもの頃から夏になると一九〇〇メートル級の山地にあるホテルを拠点にして登山や山歩きを楽しんできた。三十歳を過ぎた今も、モンテ・ローザ山麓にあるフォンターネという村に小屋を借り、その土地で目にした自然と生き物の様子やそこに生きる人々の飾らない暮らしぶりをノートに書き留めては創作の糧にしてきた。デビュー作『帰れない山』以来、作家本人を思わせる一人の男の目を通して、山で生きる厳しさと愉しさを描いてきたが、今回は四人の男女の視点を借り、山で