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マーケティングで「心を消耗した」営業を救いたい

こんにちは、あぶかわ( @abukawais )と申します。アドビという会社でB2B向け製品のマーケティングに携わっています。

私は今から5年前、マーケティングオートメーション(以下、MA)の「Marketo(今はAdobe Marketo Engage)」というSaaS製品を提供するマルケトという会社に入社しました(統合により現在はアドビに所属)。

私は、MAという製品、そしてマーケティングという役割が「営業を救う」と信じてマルケトという会社に入社し、今日まで営業(インサイドセールス)、マーケティングという立場で働いています。
なぜ営業を救いたいと思い、マーケティングがなぜ営業を救えると思ったのか、私の経験を中心に書いていきたいと思います。

営業をされている方、そして将来営業職に就くであろう文系大学生に読んでいただけるととても嬉しいです。

※MAがどういったものか、そしてマルケト含め多くの外資の営業モデルについては以下の本を参考にしてください

文系大学生は「なんとなく」営業職に就く

新卒の文系大学生は7割が営業・販売職に就くと言われています(出所未確認)。私も例に漏れず新卒で精密機器メーカーに入社し、営業系の部門に配属されました。確かに文系の同期の7割が営業でした。

私もそうでしたが、内定をもらった段階から、営業として活躍したいと思っている人はほとんどいないでしょう。そもそも、学生時代をインターンに費やした意識と熱量の高い学生でもない限り、社会人というのは未知の存在で企業にどういった仕事があるかも分からないし、内定をもらった会社の製品やサービスへの愛着を持つこともなかなか難しいです。特に、B2B企業はほとんどが日常生活では目にしない、陰で社会を支える製品やサービスです。

また、私は大学では経営学を学んでいましたが、多くの文系大学生はそれ以外にも経済学や商学、社会学などとても高尚なことを学んできたにも関わらず、それらは営業職ではほとんど活かされることはありません(私が活かせていなかっただけかもしれませんが)。

さらに言うと、私が就活をした当時はまだ「ガクチカ」という言葉はありませんでしたが、学生時代に熱中して取り組んでいたことに比べると、就職は全員がするもの、という固定概念(この固定概念自体が問題だと思いますが)に流されて、なんとなくの気持ちで就職してまっていました。別に就職のために好きなことをやっていた訳ではない、そんな人も多いのではないでしょうか?

社会人になったら突然、営業活動に対して、学生時代に熱中していたもの同じだけの熱量で臨め、というのは正直酷な話だ…と今でも心の奥では思っています。

営業「したくない」売り手と「されたくない」買い手

私はマルケトが2社目です。1社目では3年間、営業部門に配属されていましたが、営業活動で相当、私の心は消耗してしまいました。

ネットで調べると営業の意識に関する調査がありました。やはり今でも、営業職を辞めたいと思う人は大多数のようです。

元々人付き合いが得意ではなく、素直ではなく人の言うことを聞けないタイプだという、自分自身の問題もありましたが、私にとって営業が辛いのは大きく以下の3つに起因していました。

「何を」売っているかがよく分からない

新卒で入社した会社は、創業70年の放送機器メーカーで、盤石な顧客基盤を持ち、品質も確かなとても素晴らしい製品を作っていました。

しかしながら、裏を返せば、お客様はその道のプロばかりで、私のような営業担当よりも圧倒的に製品について詳しく、顧客企業内でも様々な部門で様々な製品を利用する方々がいらっしゃいました。そのため、製品理解も顧客理解も乏しく、技術面は工場のエンジニアに頼りっきりで、常に下に見られているような気分を味わうことになりました。

これは決して新卒だから、という訳ではなく、新製品や新規事業の担当になる、はたまた異業種への転職などをきっかけに何度もぶち当たる壁と言えます。私も新卒の時だけでなく、マルケトに入ってこれまでと全く異なる商材を扱うようになったのでとても苦労しました。

ただこれは、製品のスペックで売る、という、本来のお客様のニーズを無視した売り方をしてしまっていたが故に起きていたということに、後々気づかされることになりました。

「どうやって」売るかがよく分からない

次に、どうやって受注や契約に向けて進めるかが分からないことで、思ったように売れず、ノルマに追われてさらに追い詰められ、負のスパイラルに陥っていくことがあります。

営業は、お客様と関係を築いてニーズを聞き出し、提案など商談を行い、決裁者を見つけて同意を得て、価格や納期など社内調整を行う、といったように様々な業務が求められます。非常に高度な業務を積み重ねていくことではじめて受注に結びつく訳ですが、往々にしてこの進め方は属人化されていて、誰かから教えてもらえるものではありません。

にもかかわらず、案件の「ヨミ」などは厳しく課されるため、どんどん首が締まっていく…という悪循環に陥り、売れる営業は売れるけど売れない営業は永遠に売れない、ということが起きてしまうのです。

私の入社した会社はノルマに関してはそこまで厳しくはなく、とてもサポーティブな先輩社員に囲まれた恵まれた環境でしたが、業界トップの強い競合企業に対して失注することも多く、この売り方で良いのだろうか、という不安をずっと抱えていました。

プライベートの切り売り

そしてもう1つ、営業職にとっては避けて通れないのがプライベートが失われる問題です。近年は働き方改革で改善されてきているところも多いかとは思いますが、トラブルが起きたら休日関係なく個別の連絡が届くこともあれば、接待などが求められたりします。

プライベートの時間を奪われないまでも、誰にも家庭があり、プライベートでやりたいことがあるにも関わらず、常に仕事のことが頭にある状態は精神的には良い状態とは言えません。

私も前向きなインプットは好きで、新たな知識を学ぶこと、勤務時間外に時間をいただいてお客様からお話をお聞きできるのはとても貴重な経験だと思っていますので、大いに時間はとっていきたいと思っていますが、あまり想定外のことは起きてほしくない方は多いのではないでしょうか…

この3つの要因、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

営業を受けてよかったと思う人は少数派

生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なうネオマーケティングと法人営業支援企業情報データベース・次世代型検索エンジンを開発するBaseconnect株式会社が共同で実施した調査結果によると、営業を受けてよかった経験がある方は3割程度にとどまっているようです。

つまり、営業担当者にとっても営業はストレスがかかるものなのに、受け手側からみてもあまり気持ちのいいものではないという、非効率的なことが起きていたのです。言い換えれば、ストレスを感じながら行う営業活動は、必ずしも顧客志向ではなかった、とも言えるのではないでしょうか。

B2Bビジネスをマーケティングの力で変えたい

3年間の経験を経て、営業という仕事がなくてはならないことは理解していましたが、もっと営業にとって働きやすい、そして最先端の営業活動を知るにはどういうところに行けばいいんだろう、と考えた結果、私は外資系IT企業が最も良いのではないか、という結論に至り、外資系IT企業に絞って転職活動を行いました。このイメージは当たらずとも遠からずだったと、今では思っています(本題とは逸れるので詳細は割愛)。

業界を絞って転職活動をする中で、偶然ではありますがMAというツールと概念、そしてマルケトという会社に出会いました。MA自体が国内で2015年くらいから広まり始めたものだったので、当時はまだ知らない人の方が多いものだっと思います。

マーケティングには「カスタマージャーニー」という言葉がよく使われます。

B2Bビジネスにおいても、購買担当者は何かしらの新たなニーズを持ち(優れた人材を採用したい、工場の生産効率を高めたい、私の前職の製品でいえば高解像度の臨場感ある映像を届けたい、など)、そのニーズを解決するためのソリューションを見つけ、検討を進めて導入に至ります。

往々にしてB2Bの導入までのプロセスは長い時間がかかる訳ですが、これを本当に1人の営業が自分の力だけでカバーする必要があるのでしょうか。

営業担当者以外の力を使って自動化、効率化できれば営業がここまで頑張る必要はない、と私は考えています。

幸いにして、今の社会はデジタル化が進んでいます。個人のプライベートの生活だけでなく、B2Bビジネスにおいてもインターネットで色々な情報を探せるようになりましたし、テクノロジーが進化したおかげで様々なデータを社内に蓄積して活用できるようになりました。

  • 営業が展示会やあいさつ回り、飛び込みでお客様情報を獲得する代わりにインターネットで取得する

  • お客様との世間話などで得た情報を日報に蓄積する代わりにメールやwebサイトの閲覧情報を取得し興味関心を明らかにする(本当は両方やらないといけない)

  • 営業が定期的にあいさつ回りに伺って御用聞きをする代わりに、メールやwebへの反応を基に営業にフォローアップタイミングを通知する

  • 受注に繋がった資料やセミナーを集計し、どのような情報を届けるべきかを明らかにする

こういったことが実現できるようになるのです。

つまり、マーケティングの力で、お客様が「何を」欲しているかを明確にしつつ、「どうやって」売るかというプロセスの部分を標準化していくことで営業の効率化を図り、生産性を高めます。

また、お客様からしても「なぜ」その製品やサービスが必要なのかを、営業の押し売りではない形で知ることができるので、営業と良好な関係を築けるようになり、互いにとって必要のないストレスを減らすことができます。

私は、営業がより働きやすいような環境を作れることを信じてマルケトに入社しましたが、5年を経て数多くのお客様がMAを導入し、マーケティングを強化することを通して、これまでの営業のあり方を変えていらっしゃることを目にしたり、お取り組み事例として語っていただいたりしています。

ご興味があればお客様事例もご覧ください。

みんなで変わらないと社会は変わらない

マーケティングの仕事は「難しい」「専門的」と思われがちです。マーケティング職を募集する企業の採用条件をみても、専門的な能力を求める記述が多く、なかなかマーケティングの仕事が広まっていないと感じています。

一方で、B2Bビジネスのマーケティングは実務においては展示会の運営やカタログの制作、webサイトの管理など、限られた範囲の業務に閉じていることがまだまだ多いように感じます。

これは私の持論ですが、近年流行っているB2Bマーケティングの領域は、むしろ営業のことを理解して、何をテクノロジーやデジタルの力で代替するか、どういったデータを蓄積して分析するかを明らかにするか、その部分が大事になってきます。

それに加えて、お客様のことを深く理解する力が欠かせません。これは市場調査やユーザーヒアリングだけでなく、実際のお客様と信頼関係を築き、生の声を聞き出すことも欠かせません。

そのため、営業からのキャリアチェンジをもっと歓迎すること、営業だけでなくマーケティングの力でビジネスを変えていくという社内の空気が必要だと感じています。

最近はセルフサーブ型(インターネットで契約まで完結する)の製品やサービスが増えてきましたが、多くの場合、最後にお客様から注文書をもらうのは営業なので、営業経験が長くなればなるほど営業自身がコントロールできない部分が増えることを不安に感じることも理解できます。

購買担当者の立場からしても、信頼できる営業担当にいつでも連絡できる状況を作っておきたい、という心理があることも否めません。

しかしながら、労働生産性が低いと言われ続けている(以下のデータではOECD38か国中23位とのこと)日本の産業を変えていく、そして何より社会人一人ひとりの「心の消耗」を減らすためには、社会全体で、この営業中心のコミュニケーションからシフトしていくことが求められているのではないでしょうか。

私は日本のB2Bビジネス、特に営業中心の企業での働きやすさを改善したい、そう思って、外資系IT企業に飛び込み、今ではマーケティングに携わり、MAの「Adobe Marketo Engage」を提供しています。

是非、この記事を読まれた営業の方々、これから(おそらく)営業に就く文系大学生の方々が、B2Bマーケティングの力を信じて、挑戦してみてもらえたらと思っています。私もまだまだペーペーですが、何かお力になれることがあれば、Twitterなどでお気軽にお声がけください。

MAについてご興味をお持ちの場合は以下のリンクよりお気軽にお問合せください!

#この仕事を選んだわけ


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