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営業からマーケティングへのキャリアチェンジはありか?

もう新年度がはじまりますね。あぶかわ( @abukawais )です。

営業に携わる方にとって、「マーケティング」は馴染みのある言葉ではないでしょうか。この記事にたどり着いていただいた方は、「一度はマーケティングをやってみたい」と個人的な目標として考えている方もいれば、「今の営業活動が非効率で、なんとか違うやり方でビジネス成長を実現したい」と企業の課題を感じている方、様々いらっしゃると思いますが、何らかの形でマーケティングへの関わり方を強めていきたいとお考えなのではないでしょうか。

マーケティングへのキャリアチェンジを目指されている方、社内事情でこれからマーケティングを担当する方に向け、必要とされるスキルや身に着けておくべきスキルをご紹介するとともに、少しでも背中を押せるような情報をお伝えできればと思います。

営業からマーケティングへのキャリアチェンジは今後増えていく

営業からマーケティングへのキャリアチェンジはありか?と聞かれれば、間違いなく「あり」です。理由は大きく2つあります。

まず1つめは、B2Cビジネスに加え、B2Bビジネスでマーケティングの重要性が高まっていることです。B2B企業、特に製造業や商社などでは営業部門が強く、マーケティング部門はあくまでも小規模な組織で、展示会の運営やカタログ制作など限られた役割を担ってきたような企業が多いのではないかと思います。

しかしながら、環境は変わりつつあります。誰もが社用PCやスマートフォンを持ち、オンラインで様々な情報を見ることができます。さらに、テレワークになったので直接商談を受ける機会も減りました。つまり、営業活動を補完する取り組みが必要になってきています。実際に、アドビが2020年に実施した調査でも半数以上のB2B企業で「デジタルでの急激な顧客の増加」を経験されたという結果が出ています。

同様に、競合企業も変わりつつあります。SaaSに代表されるような、ITを取り入れた新たなビジネスモデルが急拡大し、様々な業界で非伝統的企業による新規参入が増えています。こういった企業はマーケティングの力で急成長を遂げることも多く、これまでと同じ営業手法では分が悪くなっていく可能性もあります。

2つめの理由は、マーケティングの重要性が高まっているにも関わらずマーケティング人材自体は増えていないことにあります。Repro社の調査では「デジタルマーケティングに携わる役職者の約60%がノウハウ・人材不足に悩んでいる」という結果が出ています。

https://repro.io/books/web-marketing-Research2021/

営業からマーケティングへのキャリアチェンジが歓迎される理由

マーケティングへのキャリアチェンジの可能性は大きく広がっていることは間違いありません。さらに、営業の経験がマーケティングの役割にプラスに働くこともあり、特に社内異動では歓迎されることも多いです。3つの観点で理由を考えてみました。

顧客起点のマーケティングの高まり

古くからのマーケティング活動は、ブランドマーケティングやマスマーケティング、プロダクトマーケティングのような企業からの発信を主眼としたマーケティングが中心でした。しかしながら、顧客の価値観が多様化し、選択肢も増えたために、顧客起点、顧客中心のマーケティングが求められるようになっています。

さらに、デジタルチャネルの普及やテクノロジーの進化によって、1人ひとりに紐づく形で顧客データを取得できるようになり、「One to Oneマーケティング」が実現できるようになりました。

顧客起点のマーケティング、One to Oneマーケティングの浸透は、MA(マーケティングオートメーション)のようなツールの導入企業の増加からも見てとれます。

営業活動では、担当する1社ごと、1人ひとりと深く関係を築くため、ミクロな視点での顧客理解に長けています。そのため、顧客をつぶさに理解し最適な情報を提供していく点においては優れた知見を持っています。

リード獲得からカスタマーサクセスまでの「収益プロセス管理」の広まり

営業やマーケティングの領域で、カスタマージャーニーをいくつかのステージに分解し、顧客の検討状況を可視化する「収益プロセス管理」の考え方が広まっています。

このような考え方では、営業とマーケティング部門が別々に行動する訳ではなく、あるステージではマーケティングが中心の役割を果たす、別のステージでは営業が顧客接点の中心となるがマーケティングがそれを補完する、という形で、マーケティング部門と営業部門の相互理解が欠かせなくなります。そのため、営業経験者がマーケティング部門にいることで、社内理解が深まり、顧客にとって最適なコミュニケーションをとることができるようになります。

営業とマーケティングの連携が重要になっている

マーケティングの重要性が高まり、受注や契約に至るプロセスの中で役割分担をするとなると、部門間の連携が欠かせなくなります。具体的に、私が営業とマーケティングの間で継続的に連携を行っている内容は以下のものがあります。

  • 営業ターゲット企業群の選定(業種業界、企業規模など)

  • ターゲット企業群に基づく制作物やセミナーなどの優先順位づけ

  • イベント(展示会など)のフォロー開始タイミングと内容

  • リード獲得が減少するタイミングでの既存リードへのキャンペーン内容

  • ホットリード(検討度合いの高い見込み客)の基準

  • ホットリードの引き渡し方法

  • 営業(インサイドセールス)へのリードアサインの調整

このように、B2Bビジネスのマーケティング活動は営業に対する理解がないと効果的に行えないことが数多くあります。そのため、マーケティング部門に営業出身のメンバーがいることは、組織全体の成果を高める上で欠かせないことがご理解いただけるのではないでしょうか。

営業とマーケティングの違い

営業がマーケティングにキャリアチェンジをすること、社内異動することは、重宝されることが多いかと思いますが、実務においては様々な違いがあり、理解したうえでマーケティングに臨むことをお勧めします。特に、考え方の違いを理解しておくとマーケティングの業務をうまく進めることができるでしょう。

カスタマージャーニーを前から見るか、後ろから見るか

B2BビジネスやB2Cの検討型商材では、顧客の検討にあわせて様々な働きかけをしていく必要があります。この際、営業とマーケティングでは考え方が異なることがあります。

営業は、ニーズがある程度顕在化した人を相手にすることが多いため、受注や契約を主眼に置きカスタマージャーニーを後ろから遡る形で営業活動や提案内容を考えていくことが一般的です。一方で、マーケティング活動においては、いかに認知を獲得し、ニーズを顕在化するかに注力を当てることが多いため、カスタマージャーニーを前から進めていくための活動が中心になります。

そのため、マーケティングにおいては、現時点では全く検討していない方や興味を持っていない方に対してのメッセージを考える場面も出てきますし、一見製品やサービスとは関係がないような企画を考えることが求められることがあります。そして、徐々に検討を進めるための内容へと切り替えていくような考え方が必要になります。

顧客と関係を持つ期間

上記のカスタマージャーニーの考えとも関連しますが、顧客との関係を持つ期間が大きく異なるのも1つのポイントです。営業の場合、社内で平均商談期間などの情報を持つ企業が多いのではないでしょうか。その数値はおそらくですが、多くの場合は数週間から数ヶ月だと思います。

一方で、マーケティングの場合は、認知を獲得し、一度失注しても関係を維持しつつ受注や成約に至るまでをカバーするため、顧客との関係は数年に及ぶことも少なくありません。つまりマーケティングでは、契約を決められるか決められないかといった比較的短期間で確実に検討を進める活動だけではなく、いかに良好な関係を築き続けるか、ということが大事な要素になってくるのです。

定性的情報と定量的情報

マーケティングにおいては、営業以上にマクロな視点で定量的な情報を集め、意思決定をする機会が増えます。これは純粋に対象とする母数が異なることから生じる違いです。例えば分譲マンションの場合、テレビCMや吊り革広告は一定期間に数十~数百万人という方が目にしますが、そこから具体的に検討して実際に購入に至るのは数十~数百世帯というような数になるのではないでしょうか。

統計学的には母数が2000程度あると有意なデータがとれると言われることが多いですが、そういったまとまった数に対し仮説と検証を繰り返しながら成果を高めていくのがマーケティング的なアプローチの1つと言えます。

言うまでもありませんが、営業活動においてもMAやSFAなどにデータを蓄積し、そのデータを基に活動を改善していくことが一般的になっていますし、マーケティングにおいてもユーザーヒアリングや顧客同行によって定性的な情報を収集して仮説を導き出すことは欠かせません。顧客1人ひとりから得られる定性的な情報やコミュニケーションを大切にしつつ、データに基づく意思決定を行えることがマーケティングに求められることです。

営業出身のマーケティング担当者に新たに求められるスキルは?

マーケティングには専門的な領域が多く存在します。そのため、マーケティングで成功を収めるためには、営業で得た経験や深い顧客理解に加えて、マーケティング特有のスキルが必要になってきます。マーケティングの実務的なスキルについて、いくつかポイントとなる要素をご紹介します。

調査

まず1つは調査です。営業活動でもヒアリングは欠かせませんが、マーケティングにおいては、仮説を見つけるために、さらに様々な形で調査を実施して顧客の情報を収集します。具体的なスキルの例としては、アンケートなどのマーケティングリサーチや、実際の顧客を相手としたユーザーヒアリングの計画や実行、それに基づいた仮説の洗い出しや検証などの進め方が挙げられます。

また、3C分析や4P分析などを耳にしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、フレームワークに基づいた分析や調査を行うことで市場の正しい理解につながります。

カスタマージャーニーの設計

カスタマージャーニーの設計はマーケティングにとって最も重要な業務の1つです。調査や顧客理解に基づいてターゲット顧客を見つけ出し、その人のプロファイルを作り上げること(ペルソナ設計)、そして、その方がどのような情報に触れて検討を進めていくのかを1つのジャーニーとして。

カスタマージャーニーを作ると、マーケティングチームだけでなく、ビジネスに関わる社内のステークホルダーの位相を合わせて様々な活動に取り組んでいくことができ、その結果、成果に結びつく行動に注力することができるようになります。

企画

広告などのキャンペーンやイベントの開催など、マーケティング活動は予算をかけ、実施までに一定の期間を必要とするものが多くを占めます。そのため、しっかりと企画を考え、社内で承認された上で行動することが求められます。企画段階では、企画書作りやオリエン、パートナー企業とのやり取りなどのスキルが求められます。

テクノロジーの活用、管理

近年、デジタルマーケティングの普及とともに様々なテクノロジーを活用することで高度なマーケティングが実現できるようになりました。そのため、マーケティング部門は自らのマーケティング課題にあわせてテクノロジーを検討し、活用していくことが求められます。以前からアクセス解析やSNSなどを活用する企業は多かったですが、近年ではウェビナーツールやMA、CMS(コンテンツ管理システム)などが広く普及しています。さらに、営業部門が使うテクノロジー、SFAや企業データベースなどもマーケティング部門が管轄する場合もあります。

テクノロジーを使うことで顧客に関する様々なデータを蓄積できるようになるため、テクノロジー同士を連携させて様々なデータを一元管理していくこと、そしてそれらを適切に管理する役割を求められることもあるでしょう。

ベンダー、パートナー管理

マーケティング活動は専門的な内容が多いこともあり、社外の様々な方とのやり取りが多く発生します。その理由は、上記にあげたようなスキルを全て自社でまかなうのではなく、外部の知見やリソースを組み合わせながら最適なマーケティング活動を進めていくことが欠かせないからです。

一般的なベンダーやパートナーとしては、コンサルティング会社、広告代理店、web制作会社、テクノロジーベンダーなどが挙げられます。また、近年はフリーランスのマーケターやライター、エンジニアが増えており、業務委託やクラウドソーシングをうまく活用する企業が増えています。外部の方々とうまくお付き合いをしていくことで、自らのスキルとリソースを補いつつ成果の出るマーケティングを実行していけるでしょう。

営業出身のマーケティング担当者が身につけるべき知識は?

マーケティングとしてのキャリアを広げる上で、社内異動するにせよ転職するにせよ、未経験の場合には自らのマーケティングの素地を何らかの形で証明する必要があります。

SEO

デジタルマーケティングが主流になった現在、インターネットの検索エンジンを経由してwebサイトに訪問する顧客行動は一般的になっています。SEO(検索エンジン最適化)はそういった検索エンジンで上位表示されるようにwebサイトやwebサイト上の記事を改善していく活動を指します。SEOの知識を得ると良い理由は、SEO自体は費用をかけずに成果を出せること、そして世の中にSEOに関する情報が非常に多くあることがあげられます。

SEOに関連して、webサイトやアクセス解析の基本的な知識、そして見込み客の情報を取得するための手法であるリードジェネレーションに関する基本的な知識を身に着けておくとよいでしょう。

デジタル広告

デジタル広告はインターネットを中心としたオンラインの広告全般を指します。その領域はリスティングなどの検索型広告からバナーなどを掲出するディスプレイ広告、近年はSNS広告やYouTubeなどの動画広告も普及してきています。

近年は媒体(出稿先)側が進化しているため、金額やオーディエンスなどターゲットを設定すれば最適化して簡単に運用できるようになっていますし、支援する代理店が多く存在する領域ではありますが、基本的な知識を身につけておくことでマーケターとしての会話をより中身あるものにできるでしょう。

SNS

個人でもSNSを利用している方は非常に多いですが、法人でのSNS活用も広まっています。法人の場合にはいかに認知を広げていくか、ユーザーとつながり関係を深めていくか、といった成果を出すための活動が必要になってきますし、近年はさらに多くのSNSが登場しています。

個人でも、影響力を与えられるインフルエンサーになる、新しいものを使いこなす積極性を持つ、というのはこれからのマーケティングにとって欠かせないスキルであり、それが法人でマーケティングをする上でも重要な知識となってくるのではないかと考えています。

まとめ

マーケティングはビジネスを大きく変える可能性のある非常に重要な役割であり、B2CだけでなくB2Bビジネスにおいてもますますニーズが高まってきています。営業からマーケティングへのキャリアチェンジは、やりがいもあり、将来性もある魅力的な選択肢だと思います。

是非、営業の経験を強みに変え、マーケティングのスキルや知識を学びながらキャリアチェンジを実現させましょう!

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