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読書びより

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気ままな読書で感じたことや役に立ったことを書いています
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#小説

『人間の建設』No.39 無明の達人 №3〈「小説」のひみつ〉

 前回の記事の繰り返しになりますが、小林さんは「自分にわかるものは、実に少ないものではないか」と言い、岡さんも「外国のものはあるところから先はどうしてもわからないものがあります。」と同調しました。  キリスト教についていえば、私達も知識としてはあるいは教養としては、ある程度知っていると言えるでしょう。キリスト教圏の他の作家の作品を読んだり、聖書そのものを読んだりした方も多いことでしょう。  知識というものはあるのです。まったく知らないわけではない。では、彼我で何が違うのか

岡「近ごろの小説は個性がありますか」 小林「やはり絵と同じです。個性をきそって見せるのですね。絵と同じように、物がなくなっていますね。物がなくなっているのは、全体の傾向ですね」 岡「世界の知力が低下しているという気がします。日本だけではなく、世界がそうじゃないかという……。」

〈習慣〉

「習慣は、捨てることはたやすいが、  取戻すことはむずかしい」   ユゴー『レ・ミゼラブル』第四部 第二章より ※ tOmOyOさんのイラストをお借りしました。

カミュの小説『ペスト』  山積みで売っていた この書店で一人一冊限定  なるほど、この不安な時には なにか頼るものが必要だ  マニュアルがあれば安心だ 打ち勝つ知恵が必要だ  自分を守る洞察力が必要だ そう思った僕は会計に並んだ  こんなに期待することが   正しいか自問しながら

ドストエフスキーの『虐げられた人々』について

ど、ど、ど、ドストエフスキー す、す、す、好きと言いたい し、し、し、『虐げられた … ひ、ひ、ひ、…人々』 そ、そ、そ、それは、二十歳のころ は、は、は、初めての ど、ど、ど、ドストエフスキー な、な、な、泣きながら読んだ お、お、お、思い出の小説 い、い、い、いま も、も、も、もう一度読んだら ど、ど、ど、どう思うだろう ま、ま、ま、また な、な、な、ナターシャに! な、な、な、涙するだろうか?

『ボッコちゃん』再読中です。

星新一さんのショートショート集『ボッコちゃん』のプレミアムカヴァー2020版を買って読んでいるところです。 本屋さんでぶらぶらしていてたまたま目についたので「なつかしいなあ」と思いました。 星新一さんの本で最初に買ったのは『きまぐれロボット』というショートショート集ですが、もう何年?いやなん十年前のことでしょうか。 それまでは、小説にこんなジャンルがあるなんて知らずにいましたが、書店で表紙が目に飛び込んできたので即買いしました。 とても面白かったので、その後も当時何冊

『戦争と平和』を読もうか迷っている方へ

読もうかどうか迷っている方、是非お読みください。 当の私『戦争と平和』(トルストイ)を完読しました。そのうえでお勧めします。 おこがましくて恐縮ですが、少しアドバイスをさせていただきます。 ・登場人物の簡単な説明やロシアの当時の地図などの資料をそろえておくと理解しやすく迷子になりにくいです ・長編なので我慢も必要です(トルストイ節(戦争論)が少しくどいところなど) ・現代の読者には理解しにくいことがあります(戦争の陣形や地形・スケール感、貴族社会の把握など) ・そ

〈マリユスとコゼット〉

……すべてを語り合ったとき、彼女は彼の肩に頭をもたせて、尋ねた。 「お名前は?」 「マリユスです」と彼は言った。「そして、あなたは?」 「わたしは、コゼット」  ユゴー『レ・ミゼラブル』 第四部 第五章より (紆余曲折のあと、ふたりが庭ではじめて愛の言葉をかわした美しい場面) ※ madoka_ayaseさんの画像をお借りしました

《ポールとヴィルジニー》

18世紀、フランスの小説。純愛物語の舞台はマダガスカル島に近いフランス島、当時フランスの植民地で現在のモーリシャス島。著者は、ベルナルダン・ド・サン=ピエール。この小説一作で今に名を残している。 三五歳の時には二五歳年上のルソーと親しく交情を結んだらしい。ナポレオンがこの小説を愛読していたことや、ナポレオンの兄弟と旧知の間柄だったこともあり、六五歳の時からナポレオンの厚遇をうけた。 1737年の生まれ。そこそこの家柄の出自であったが、激しい性格が影響して前半生は衝突と波乱

《三銃士》第26章 「アラミスの論文」より

人生を幸福に導いている糸はどんな糸でも、もしそれが黄金の糸ならばなおのこと、握っている手の中でつぎつぎに切れていく。 と、三銃士の一人、アラミスが主人公のダルタニァンに悲しみの心中を吐露する。 悩みがあったら、そっとそれを隠しておくことだ。沈黙は、不幸の唯一の喜びっていうわけさ。 さらに思い余ってか、隠遁と自壊の淵をさまよい歩く傷を負った敗残の狼といった風情だ。 ところが、である。 ありがとう、きみ。もう幸福で、息がつまりそうだよ! あることをきっかけに、さっきと