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《三銃士》第26章 「アラミスの論文」より
人生を幸福に導いている糸はどんな糸でも、もしそれが黄金の糸ならばなおのこと、握っている手の中でつぎつぎに切れていく。
と、三銃士の一人、アラミスが主人公のダルタニァンに悲しみの心中を吐露する。
悩みがあったら、そっとそれを隠しておくことだ。沈黙は、不幸の唯一の喜びっていうわけさ。
さらに思い余ってか、隠遁と自壊の淵をさまよい歩く傷を負った敗残の狼といった風情だ。
ところが、である。
ありがとう、きみ。もう幸福で、息がつまりそうだよ!
あることをきっかけに、さっきとは打って変わってハッピー気分満々。
さあ、ダルタニャン、大いに飲もう。思いっきり飲もう。
もう、幸せで踊り出すばかりの勢いだ。
なぜ?
会って早々アラミスのあまりの落胆を見、悲歌を聞いているうちに何の用で来たかを忘れていたダルタニァンは、やっと思い出して「それ」を本人に渡した。と、効果はすごかった。即効めざましい特効薬だった。
それは「手紙」。アラミスの想い人からの言葉をつらねた愛しくて仕方ないもの。
三銃士のメンバーはそれぞれにとても個性的だが、アラミスも大したものだ。詩作をしたり教えたりするかと思えば、国王陛下を守るという栄えある銃士を辞めて神職に就くのだと言い張ったり、そのために論文を書こうとして、司祭や聖職者と論争したり。
貴婦人と付き合っているなど断じて否定していながら、上のとおりダルタニャンにはあっけなくばれてしまう、ユルイ一面もある。
デュマ父の《三銃士》は展開が早くて息もつかせない場面が多い。上のアラミスとダルタニァンの会話の場面もそうだ。恋の逢瀬と決闘と酒と賭博とがすぐ隣りあわせなのだ。
ルイ13世下のフランス。王妃やリシュリュー枢機卿や貴族や貴婦人入り混じっての権謀術数の綾織物。
フィクションの部分があるとしても、楽しみながら歴史の勉強になるのが心地よい。
※MASAKI NISHII さんの画像をお借りしました。
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