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読書びより

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2022年3月の記事一覧

あな恋し今も見てしか山賤の垣穂に咲ける大和撫子 (あなこいし いまもみてしか やまがつの かきほにさける やまとなでしこ)               -読人知らず- 古今集の一首。撫子に仮託した恋歌。 山里の春、いいですね。早く会いたい気持ちに変わりありません。 春よ来い!

世界でいちばん高い玉座の上にあがったとしても、われわれはやはり、自分のお尻の上に座るしかない。            モンテーニュ『エセー』 少しくらい頼りなくても、 そのお尻を大事に愛して生きていかなくてはならない。 なんと言っても自分は世界でひとつしかないのだから。

小池一夫さんとヴォルテール

日本では「人に迷惑をかけてはいけません」と教えますが、インドでは子どもに「あなたは人に迷惑をかけて生きているのだから人のことも許してあげなさい」と教えるという話を聞いたことがあります。 小池一夫さんの『人生の結論』の一節です。 電車でたまたま目にした光景、子供の靴が脚にあたったことで、その母親を睨みつけた男性について苦言を呈します。 仮にそれほど気に入らないのであれば、睨みつけるよりも、「靴があたりましたよ、気をつけてくださいね」の一言で許せばよいではありませんか。

鷗外『青年』-主人公と先輩作家など-

作家志望の青年、小泉純一は上京後様々な女性と出逢います。  また、友人との交際の中で、当時の思潮に触れ、議論に燃えます。  今回は、純一が訪問したり講演で感銘を受けた作家などをご紹介します。 1.平田拊石(文士、夏目漱石がモデルか)   瀬戸に誘われた講演会で、当時の文壇において個人主義の大本とされていた、ノルウェーのイプセンの文学に関する拊石の話を聞いて、純一は感銘を受けます。淡々とした語り口で人の心を捉える巧みな話術も純一を魅力しますが、拊石の名を借りて鷗外の説を

まっすぐなオールだって、水中では曲がって見える。単に物事を見るのではなく、いかにして見るかが肝心なのだ。  モンテーニュ『エセ―』 雨の日は天気が「悪い」といいますが 天気そのものに良いも悪いもありません。 森林や穀物の育ち、水の確保などにとどまらず、雨は偉大です。 でもね…

通勤電車で内田百閒の『清潭先生の飛行』を読んでいたら、思わず声を出して笑いそうになった。 大昔、『どくとるマンボウ航海記』を読んでいて、危なかったことを思い出した。 大真面目な人の、間が抜けた様をみるとどうしても笑ってしまう。 自分もどこかで笑われる名誉を得たかも知れない。

電車の端っこに座っていたら 途中から乗ってきた若い男性が目の前で 揺れに合わせ脚を曲げたり伸ばしたり踏ん張ったり 席は空いているのにさも楽しそうに 一駅早く降りた彼 足腰を鍛えているのかな あまりいい感じはしなかったが 気にもとめない風で本を読み 大人らしい対処ができた(自賛)

鷗外『青年』-女性たち続、友人-

主人公の小泉純一を取り巻く女性たちの続きと友人をご紹介します。 前回ご紹介した『鷗外『青年』-主人公と女性たち-』はこちら。 今回、女性たちの続きと友人についてご紹介します。 1.お婆さん(下宿の主)  植木屋「植長」の当主の母で、お安の義母。純一とお雪を引き合わせたとき、何も話すことができない二人の様子を見て「まあ、たいそうお静かでございますね」と冷やかします。家主としての矜持と経済的自立のゆえか、故郷の祖母と比べてなんとも若々しいと純一は感じるのです。 2.しづ

「お前ら、最高じゃああああああァ!」 「……ニッポンの文化芸術を背負うのは、お前らじゃああああァ! 以上!」   二宮敦人著『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』 藝祭(大学祭)での宮田学長の開幕あいさつ。 え~っ、こんな絶叫されたら皆燃えます! 型破りで藝大らしい⁉

鷗外『青年』-主人公と女性たち-

主人公小泉純一を魅了する女性たちをご紹介します。 1..お雪(近くの別荘にいる銀行頭取の娘)  上京後、下宿を見つけておちついたころ、家主のお婆さんにお雪に引き合わされます。最初は「容赦なく開いた大きな目」で見つめられ戸惑いながらも、その美しさや魅力的な所作に惹かれやがてプラトニックな愛を意識するようになります。 2.坂井夫人(法律学者故坂井恒未亡人)  ある日、観劇の際、隣席に座る坂井夫人から言葉をかけられ、それが縁となり後日彼女の自宅を訪れます。そのときの日記に「