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あかん、ニュースフラッシュの感想を書かせてくれ

「また貴方に逢えるのを楽しみに待ってさよなら」と言われ、不安で落ち着きをなくしてしまったのは私だけではないだろう。

このライブレポートは当日の記憶を書き殴っておきたい、あわよくば読んでくれた人がライブを追体験し、あの幸福を再体験してくれればと思い書き上げました。


はじまった。ライブだけど、映画の始まり、物語の始まりのようなファーストインプレッション。

響き渡る、「新しい文明開化」

メンバーたちの神々しい衣装。原色の彩りと巨大なカラー。

そこに東京事変がいる。その事実に何度も込み上げるものがあった。映画館であっても彼らに再会出来た喜びは筆舌に尽くし難い。

「群青日和」今までのどの舞台より、アダルトで何かを説得してくるような椎名林檎の目。

「ねぇ答えはないの?」MVでは甘えているような響きもあったが、今はもう自問自答のような何か切実な自覚がありながらも敢えて問う、そんな重みがある。

若葉を思わせるような楽曲から大きく転じて「某都民」。

3人の歌声が交わり離れる、そんな東京事変の"声"を十二分に堪能できる作品だ。

大きな方向転換を曲で見せしめられた後、"再生"の代名詞である「選ばれざる国民」。

浮雲がほくそ笑み、「♩東京〜」と歌えば、これこそ再生した新たな東京、事変、なんだと実感させられる。

私はなんて幸福な体験をしているのだろう、そう思った矢先の「復讐」。

無自覚にただエンターテインメントを消費する傲慢さに、強く大きな警鐘を鳴らす。

打ちのめされつつ次に迎えたのは「永遠の不在証明」銃を連想させる曲を軽妙洒脱に続けていく。

「♩世界平和をきっと皆願ってる」という椎名林檎の目は「不惑の余裕」で歌い上げた「夢のあと」を彷彿とさせた。

そしてビートはどんどん早くなっていく。「絶体絶命」そして「修羅場」。幾度か首元に手を持っていくその仕草に、次はどんな衣装になるのかと期待が高まっていく。

そして息を吐く間もなく始まるカウントダウン。「能動的三分間」。

「♩生還せよ」と言われコートを脱ぎ捨てるその勢いの強さに声も出せない私はただただ目を見張る。

緊張の連続から転調し、「スーパースター」。幾度となく慰められてきたのだろう、隣の観客が何度もハンカチで目頭を抑えるのが印象的だった。

そしてポップなイラストが流れ始め「乗り気」、イラストの動きに合わせるようなカクカクとした椎名の動きに思わず笑みが溢れる。

「閃光少女」「キラーチューン」と明るいロックが続きメンバーたちの額にも汗が浮かび、大人たちの青春を眩く音からも目からも楽しめる。

「今夜はから騒ぎ」で大胆な黒のドレスに身を包んだ林檎嬢にはただ平伏さんばかりだ。

そして怒涛の「OSCA」「FOUL」、ぶっ飛んでしまいそうなフラッシュに包まれ、此処に居られる幸福が絶頂に達する。

稲光に包まれたあと、爽やかな突風を感じる「勝ち戦」「透明人間」この東京事変というバンドの彩の多さに目眩まで感じるほどだ。

しかしその風は秋の木枯らしのような切なさを伴って「空が鳴っている」へ。

鐘の音ともフェードアウトしていくライブ終了の唐突感に、呆気に取られてしまう。

もう終わってしまうのかと惜しむ思う気持ちが抑えきれない。でも鐘の音が残響する終わり方は見ている側に余韻を充分に与えてくれる作用もあるようだった。

東京事変、ニュースフラッシュ。

それはもう最高の密度だった。

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