見出し画像

23時間の列車 in インド

大学生になって2年ぐらい、長期休暇があれば大きめのリュックを1つ背負って海外に行く、いわゆるバックパッカーをしていた。

訪れた国はほとんどがアジアで、その中でも僕が最もハマった国はインド。

あれは、23時間の長旅の列車でのこと。

現地で仲良くなった7人で旅をしていた僕らは、チケットを購入したのが直前だったこともあり、席がほとんど埋まっていたので、4・3で分かれて座ることになった。

僕は4人の方で、部屋というわけではないが、二段ベットが2つあるスペースに僕らは入った。

横のスペースにはガタイがしっかりしたインド人であろう男性4人。カーテンなどの仕切りがないため、彼らとは頻繁に目が合った。

列車に乗ったのが昼過ぎで、睡魔なんてものは微塵もなかった僕らはトランプで暇をつぶすことにした。

定番の大富豪をはじめて数分、僕らの周りにたくさんのインド人ギャラリーが集まった。彼らは何かを話すわけでなく、とにかく楽しそうに僕らが大富豪をしているのを見ていた。

この不吉な状況に、さすがに心がざわつき始めた僕は超短期留学で唯一、覚えた英語「what's wrong?(どうしたの?)」を発動した。

すると、1人の青年がニヤニヤした面持ちで何も言わず僕らの間に強引に入り込んで、「僕も混ぜてよ」と言わんばかりの笑顔で僕らを見た。

不思議と僕らは彼をすんなり受け入れた。笑顔は世界共通で人と人の距離を詰める最強の技に違いない。

大富豪のルールを1から説明するのはめんどくさいよねってことで、簡単なババ抜きをすることにした。配られたカードで同じ番号のカードがペアであれば真ん中に出す。それからは順番に引いていって、ペアができれば真ん中に出す。自分のカードがなくなったら、Winnerだよと2人の青年に説明した。話した英語はほぼsame(同じ)だった。セイム!セイム!セイム!ユーアーウィナー!って具合に。これからも自己紹介では積極的に言おうと思う。「過去に留学してました!」と。(誰も信じない)

ババ抜きが彼らの心を掴んだのか、真昼から夜中まで8時間ほどひたすらババ抜きをした。ババ抜きですよババ抜き!日本じゃ考えられない。

途中、「インドのゲームもしたい!」と僕らは言ったが、難しすぎて、すぐにババ抜きに戻った。合計で20人ぐらいのインド人とババ抜きをした。

翌朝、彼らは「次で降りるから、写真撮ろうよ」と言ってきてくれた。

そして最後に僕は、1つの質問をした。
「What's your job?」

「We are soldier!」
とリーダっぽい1人の男性が言った。

詳しく聞くと、彼らは国境の兵隊であった。

なんと、僕らは普段、死と隣り合わせである国境の兵隊たちと8時間も渡り、ババ抜きをしたのだ。ババ抜きをだ!

とんでもないことだ! 歴史の教科書に載ってもいいと思う!【日本の若者とインドの兵隊が8時間に渡りババ抜きをした。】

ババ抜きのおかげで、とっても楽しい時間を過ごせた。このシンプルで誰でもできる遊びを発明してくれた人にこんなにも感謝したことはなかったし、人生でこれほど「same!(セイム!)」と言ったこともなかった。



一年後、奇跡が起きた。

4人のうちの1人が、翌年も同じ時期にインドに居て、同じ行き先の列車で、また彼らに会ったと言うのだ。世間は狭いというが、地球も狭い。

そして彼らは言ったらしい。

「セイムゲーム!セイムゲーム!」と。

再び彼らとセイムゲーム(ババ抜き)をしたそうだ。「彼ら、アホほどババ抜き強くなってる!!!www」と彼はLINEグループで教えてくれた。

「いや、ババ抜きがアホほど強いってどうゆうことやねん! あんな運任せなゲームないやん!」と関西弁丸出しのツッコミはせず、「すごいじゃん!」と僕は送った。

また、インドに行きたい。

サポート頂けたら、ブログ(YouTube)をはじめる"気力"を近くのスーパーで買おうと思います!(売ってない)