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三島由紀夫「月」

三島が世界のすべてを小馬鹿にして書いた短編。……としか思えないのだ。

この続編「葡萄パン」の感想文で書いたが、本当に「おっさんが若者を『はいはい、若いとそういうことってあるよね(笑)』と舐め腐って書いた小説」以上の感想が出てこない。

いわゆる「ビート族」(平たく言うと不良)の、男女三人(ピータア、ハイミナーラ、キー子)を書いた短篇。

(そういえば、村上龍の売春行為を行う女子高生を書いた「ラブ&ポップ」も酷かった。どうしておっさんは「はいはい(以下略)」と、若者を「理解できる」顔をしなくては気が済まないのか。
おっさんの「病」なのかもしれない、とこの若輩は思った)

しかし最後、ビート族の青年の一人、ピータアは「『お月様が見えるんだよ』」と、ハイミナーラとキー子に言う。季節は梅雨にも関わらず。
この「月」は、あるいは彼らの相対的な生活態度を超えた何かかもしれず、相対性に留まる(ハイミナーラとキー子がピータアの発言を本気にしないように)偽の光かもしれない。

大して役に立たない感想文だったと思う。
しかし三島の「大家ぶった」短篇は、読んでいて本当に辛い。

(追記)それでも好きな下り。
「真夜中の教会のがらんとした礼拝堂を、天使たちが飛び交わしているらしい。翼は次々とあらわれ、天井にひらめいたり、こわれた窓硝子(まどがらす)のへりのギザギザに滞(とどこお)って消えたりした。」
その正体は、
「(略)深夜の電車通りを走る無数の車の前燈が、むこう側のこわれない窓硝子から屈折して射し入って、つかのまにそこかしこへ撒き散らす光にすぎない」

この「現実は理想より大したことなかった」三島の描写は、何度読んでも飽きない。
でも、車のヘッドライトでも、充分きれいだと思うけどね。



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