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革製品を買うこと(SACM EP.13の動画を観て)

カバン、パンプス、ブーツ、財布、名刺入れ・・・
私の場合は、「日々使うもの」や仕事の打ち合わせなど「人前で出す機会の多いもの」に革製品を選んでいる傾向があります。丈夫で長く使えることや、使い続けるからこそ経年変化を楽しむことができるのが魅力だと思います。

S(C)hinatownのSACM EP.13
「兵庫県姫路市のタンナー“株式会社山陽”を訪問!」

2023年9月に動画が公開されました。

↑の動画では実態に迫った革製品の製造過程に焦点を当てており、筆者なりの視点で革製品のサステナビリティを考えていきます。


革製品ちょっと買うの控えようかな

一方で、リアルの革製品の購入を控えるべきではないかという問いに直面します。

動物は人間からの苦痛を被る事なく、動物らしく生きる権利(アニマルライツ)を持つとして、キツネやウサギの毛皮を素材とするファー製品や、牛や豚の皮から作られる革製品を買わない、あるいは新たに生産しないように働きかける動きがあります。

気候変動への影響も。家畜から排出される温室効果ガスは、世界の温室効果ガス全体の約14%を占めます。牛などの反すう動物が、温室効果の高いメタンガスを消化の過程で発生させるのも大きな要因です。どれくらい多いかと言うと、すべての乗り物から排出される温室効果ガスの総量に匹敵する量です。

グローバル~ローカル、まずは実態を知ること

私はドキュメンタリー映画を通して、畜産業や食肉産業の裏側を知り、衝撃を受けて自分の行動を見直すことがあるのですが、それらの取材や調査の対象となるのは日本以外の国が多い印象です。

経済性を追い求め、動物の権利や環境配慮を無視した形で生産されるモノが、手の届きやすいところで流通しており、何も知らないままだと気にせずに購入して、自分が問題に加担することもあるでしょう。

同時に、国内の「身近なところ」ではどのような生産過程・環境でモノが作られているのだろうと疑問を持ち、知ろうとすることも大切だと思います。

山陽さんは、兵庫県姫路市で100年以上皮革製造業を行う老舗企業であり、塩漬けされた原皮の処理から仕上げまで、すべての工程を自社工場で行っています。紳士靴用の製革において日本でトップシェアを誇るそう。「履きだおれ」神戸の文化も姫路の皮革産業に下支えされているんですね。

革を作る職人さん達がスキルを磨きながら仕事に励んでおり、誇りを持って自分たちが作る商品や工程について語られるのが印象的でした。

製品によっては人の手で塗装を行う場面も(動画より)

「皮が革になる」までの工程がリアルな映像で映し出されているのですが、正直動画を見るまで、私も「なめす」行為が何を指すのか知識として持ち合わせていなかったんです。

革ができるまでの工程の一つである、鞣し(なめし)は皮を柔らかくすると書きます。その工程で用いるのが、植物性のタンニンもしくは薬品のクロム。特徴やメリット・デメリットはそれぞれ異なります。

タンニンでなめすと、経年変化を楽しむことのできる革に仕上がりますが、その工程に1か月以上を要することもあり、市場の10%程度しか流通していません。ちなみに山陽さんではミモザのタンニンを使うことが多いそうです。(参考:タンニンなめしとは(1)~タンニンって何?~ 株式会社山陽

タンニンなめしの工程(動画より)
タンニンなめしで製造しているタンナーは日本で5社ほど

一方でクロムなめしの革は、発色の良さ、軽さ、耐久性にも優れている上に、短期間でなめすことが出来ることが強みです。ただ、革の歴史の中でここ100年ほどしか使われていない製法です。クロムとは原子番号24の元素で、銀白色の金属。ある条件下で焼却すると、毒性の強い六価クロムが発生することから、山陽さんはクロムの使用を低減する目標を掲げています

皮革産業のサステナビリティ

私が革製品の購入を憚る理由、先ほど挙げた問題にもう一度注目してみます。
動画で山陽さんが、革は「日々食べているお肉を食べた後の副産物」であり、牛の皮を使うことは「むしろサステナブルな活動だ」と仰っていました。

また、国内のタンナーでは2社目として山陽さんがある国際認証を受けたということを何度か紹介されていました。「Leather Working Group(LWG)」という団体の発行する環境認証でチェックされるのは、環境への配慮だけではなく、製造工程における安全性や適切な排水処理、トレーサビリティの実施なども含みます。

革がサプライチェーンの中では副産物であるならば、動物の権利を侵害することや温室効果ガスの増加への懸念から、仮に肉牛の需要が落ち込み生産量が少なくなると、当然革のもとの原皮の供給量も少なくなるでしょう。おそらくタンナー各社もそういった長期的な事象を予測していることと思うが、まさに皮革産業のサステナビリティに影響してくることである。

革を使用するブランドや小売業者、そしてタンナーは時代の転換点で問題に直面しつつも、逆に問題の発生源で良い変化をもたらす役割を持っているとも考えられます。山陽さんのように国際認証に準拠した生産を行うタンナーは、サプライチェーンを透明性高くクリーンな方向に転換していくことができます。

エリナお気に入りのブランドMOTHERHOUSEは、
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念に掲げる国内アパレルブランド
レザーケアや修理を店頭で行う他、使わなくなったバッグを回収し、新たな製品を生み出している

私たちも正しい知識を持って、ある意味監視役として企業の取り組みを厳しくチェックしながら、生き残ってほしい企業を応援することが求められます。(エリナ)


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