サザン40th

サザンのライブ遍歴を動員数で眺める。

ファン歴8年の学生身分で、サザンのことをがっつり書いてみる。
※長文です。

今年、サザンオールスターズは全国ツアー「"キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!" だと!?ふざけるな!!」(通称「見てくれツアー」)を完遂した。全員が還暦を超えたバンドが3ヶ月で全国を回りきるバイタリティにも感服だが、さらに驚くべきはその観客動員数である。デビューから41年間のキャリアハイとなる55万人(主催者発表)を動員したのだ。これは、鳥取県の人口(55万9701人、2019年1月1日現在の推計人口)に匹敵する。また、2019年のコンサート動員力ランキング(日経エンタテインメント調べ)では、乃木坂46やKis-My-Ft2といった人気アイドルなどを抑え、4位にランクインした。40年以上の集大成と言っていいライブだろう。

ここに至るまでに、いくつものライブでたくさんの感動を与えてきたからこそ、今年のツアーが実現したといえる。だが、僕が生まれる前から大人気バンドであったサザンが、これまでどのようなライブ遍歴を辿ってきたのか肌で感じることは不可能なのだ。そこで、ライブの観客動員数ランキング形式で振り返り、当時の熱量を少しでも味わってみたい。

今回は今年発行された「サザンオールスターズ 公式データブック 1978-2019」(リットーミュージック・ムック著)のデータを基本に、不足分についてはサザンオールスターズ・ファンサイト「SAS-hour!!」http://sas-hour.com/やその他ニュース記事などのデータを集めた。また、動員数データが見つからなかった一部の公演に関しては会場規模から推測した。なお、公表された動員数は主催者発表であり、概算値をとることが多い。不足な点が存在するかもしれないが、エンタメとしてお付き合いいただければ幸いである。

30年以上にわたり50万人規模のツアーを開催

まずは観客動員数Top5を見てみる。

1位 2019年 55万人(22公演) 「"キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!" だと!?ふざけるな!!」
2位 1988年 50万人(20公演) 「-真夏の夜の夢- 1988大復活祭」
2位 2005年 50万人(21公演) 「みんなが好きです!」
2位 2015年 50万人(23公演) 「おいしい葡萄の旅」
5位 1999年 45万人(22公演) 「Se O no Luja na Quites(セオーノ・ルーハ・ナ・キテス) ~素敵な春の逢瀬~」

今年公演されたツアーをはじめ、全国ツアーが上位を占めた。元号が2回変わっても同じような規模の特大ツアーを敢行できるあたり、「流石(SASが)だ」と言わざるを得ない。ごめんなさい。

特筆すべきは5位の「セオーノ」。サザンが初めて東京ドーム公演を行ったツアーである。CDセールスが後退した、いわゆるサザン暗黒期と呼ばれる時期。「昔の曲は封印します!」という桑田さんの宣言のもと、第1期活動休止前(1985年以前)の曲がセットリストにわずかしか含まれていないのが特徴だ。「勝手にシンドバッド」や「いとしのエリー」、はたまた「女呼んでブギ」など名作ぞろいの初期を振り返ろうとせず、新しいモノを作ろうとするサザンの覚悟が垣間見える。
このツアー、映像化はされていない。このツアーでの「希望の轍」は独特のアレンジが入った過去イチのバージョンらしく、どこかで映像にお目にかかれたら……と淡い期待を描いている。

また、2位タイに入っている「真夏の夜の夢」は、サザン10周年を記念したツアーとして開催された。サザンのライブでありながら、途中「原坊コーナー」「桑田ソロ・コーナー」が組まれている。「桑田ソロ・コーナー」に関しては、ソロデビューアルバム「Keisuke Kuwata」収録12曲中10曲に加え、KUWATA BAND名義の曲まで演奏している。実際参加したら嬉しすぎてお腹いっぱいになるに違いない。桑田さん自身はサザンとソロ活動は分けて考えているというが、またこんなことをすればきっと伝説ライブの仲間入りだろう。

1公演あたり最大動員数は8万人

続いて、各ライブの動員数を公演回数で割り、1公演あたりの平均動員数を求めてみた。なお、昨年行われた「ROCK IN JAPAN FES. 2018」など単独公演でないものはカウントしていない。こちらもTop5ランキングでどうぞ。

1位 1995年 8.0万人(16万人動員÷2公演) 「ホタル・カリフォルニア」
2位 2008年 7.5万人(30万÷4) 「真夏の大感謝祭」
3位 2003年 6.7万人(40万÷6) 「『流石(SASが)だ真夏ツアー!あっっ!生。だが、SAS!』 ~カーニバル出るバニーか!?~」
4位 1998年 5.0万人(10万÷2) 「モロ出し祭り ~過剰サービスに鰻(ウナギ)はネットリ 父(ちち)ウットリ~」
5位 2013年 3.9万人(35万÷9) 「灼熱のマンピー!!G★スポット解禁!!」
※平均動員数は小数第2位を四捨五入。

ファンとしてはこちらも胸熱な、層々たる並びだ。横浜・みなとみらいで2日間のみ行われ、西城秀樹が前座を務めた「ホタル・カリフォルニア」や、静岡・渚園で10万人を集めた「モロ出し祭り」など、伝説と言っていいライブタイトルがずらり。また、1位以外すべてアニバーサリーイヤーでのライブとなった。
ちなみに、渚園でのライブは18年後の2016年、アミューズ事務所の後輩・ONE OK ROCKが僅かに上回る規模(2日間11万人動員)で開催した。桑田さんの胸中は「今ではONE OK ROCK 妬むジェラシー」なのだろうか。

2位に入る「真夏の大感謝祭」と、5位の「灼熱のマンピー!!」。活動休止を挟む2つのライブがともにランクインした。「真夏の大感謝祭」は日産スタジアムを4日間にわたって満杯にした30周年記念ライブ。ここでサザンの屋号がファンに預けられた。そして35周年の節目となった「灼熱のマンピー!!」では、屋号ではなく「ヤゴ」(トンボの幼虫)がサザンのもとへ返還される、という儀式が行われた。つまり、屋号はまだ私たちファンが持ちっぱなしなのである(?)。どうしよう。

3位に入ったのは25周年ツアーであり、先ほど触れ(て火傷し)た、「流石(SASが)だ真夏ツアー!」。火傷したのは僕のせいじゃない。このツアータイトルのせいだ。「セオーノ」以来の回文タイトルだが、全体的に意味不明。これを回文と呼んでいいのか。ただ、ライブをカーニバルと捉えれば、ダンサーがバニーガールに扮して踊ることは想像できる。
あ、サザンに意味なんか求めちゃいけないんだった。
このあと、同タイトルのライブが再びランキングに現れる。

二度とない逢瀬のプレミアライブ

ここまでインパクトのある数字を追ってきた。一方、希少な事にも価値はある。ランキングのミニマムな値、最少動員数Top5も見に行ってみよう。

1位 2004年 1500人(1公演) 「真夏の夜の生ライブ ~海の日スペシャル~」
2位 1999年 2000人(2公演) 「'99 SAS 事件簿 in 歌舞伎町」
3位 1984年 2500人(1公演) 「縁ギもんで行こう」
4位 2003年 7000人(4公演) 「『流石(SASが)だ真夏ツアー!あっっ!生。だが、SAS!』 ~カーニバル出るバニーか!?~」
5位 2018年 7200人(2公演) 「ちょっとエッチなラララのおじさん」
※3位の新宿コマ劇場は2500人、4位のZepp Fukuokaは1500人・Zepp Sapporoは2000人の集客と想定。

1・2・4位がファンクラブ限定ライブという結果に。また、1~3位の会場は現在閉館してしまった※1。プレミア感。きっと桑田さんとの距離が近かっただろうなぁ……いいなぁ。

1位「真夏の~」は格闘技専用ホールとして惜しまれつつ昨年閉館した、ディファ有明での一夜限りのライブ。格闘技好きな桑田さんらしいチョイスである。
セトリの1曲目は「イエローマン~星の王子様~」。人数も相まってディスコのような雰囲気になったのではないか、と妄想が膨らむ。

2位と3位は新宿・歌舞伎町で開催された。「SAS事件簿」は、「TSUNAMI」を書くきっかけとなったライブである。最多動員数の項で触れた「セオーノ」直後のライブであったが、往年の名曲たちをここでは解禁した。この時、観客の喜ぶ姿を見て、桑田さんは「サザンに求められているのはやはりサザンだ」と確信し、売れ線ど真ん中の曲を書いたという。ちなみに、会場は新宿LIQUIDROOM。2005年にプロレスを中心とした格闘技を興行するイベントホール、新宿FACEとして生まれ変わった。こんな所にも桑田さんとプロレスの縁が。
3位「縁ギもんで行こう」は、2008年末に閉館した新宿コマ劇場で行われた年越しライブ。4年前の1980年に凶弾に倒れたジョン・レノンの曲を3曲歌っている。桑田さんの「Imagine」は、どんな願いを持って歌われたのだろう。

4位は、前項で紹介した「流石(SASが)だ真夏ツアー!」のファンクラブ限定ライブ。ツアーの前哨としてZepp FukuokaZepp Sapporoで2公演ずつ行われた。セットリストはツアーと同じだ。映像化されているが、まだ見たことがない。社会人になったら何かの機会にDVDを買おう。

5位「ラララのおじさん」は、40周年を記念したキックオフ・ライブ。サザンがデビューした6月25日から2日間、天下のNHKホールにて開催。全国の映画館でパブリックビューイングも上映された。これも行ってない(泣)。映画館では、桑田さんのお尻が大写しになったらしい。けっこうエッチなおじさんであった。

※1……2位「SAS事件簿」の新宿LIQUIDROOMは恵比寿に移転し、LIQUIDROOM ebisuとして営業中。4位「流石(SASが)だ真夏ツアー!」の会場の一つ、Zepp Fukuokaも2016年に一度閉館しているが、2018年、商業施設内に再オープンしている。

結局、数字で俯瞰するより、会いに行くことだよね

サザンは41年間の活動で44本のライブ、643回の公演、700万人以上の累計動員者数を数える(婀陪調べ)。これからも規模やセットリスト共にさまざまなライブ活動を見せてくれることだろう。

ただ、チケットの入手には高い競争倍率をくぐりぬけなければならない。少しでもその確率を上げるにはファンクラブに入ることが近道だろう。かくいう自分、ファン歴8年にしてファンクラブに未入会だ。恥ずかしい限りである。そのくせライブには2回行けた。ソロにも1回行けた。僥倖としか言いようがない。ファンクラブに入ってサザンに会いに行こう。

誤解なきように言うが、断じてアミューズから裏金はもらっていない。

※2021/8/27追記

ファンクラブ、入会しました。コロナ禍の今は会報を読むこととビッグマウスツアーの開催が楽しみです。

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