ババア☆レッスン(その5・スクールカーストの、上と下)
高校時代(女子校)の同級生に、「何でも持ってる」ように見える女の子がいた。
「何でも持ってる、ってどういう事だよ?」と思われるかもしれないが、文字通り「何でも持ってる」である。その子の名前を、仮にAちゃんとしておく。
Aちゃんは、気さくで人懐っこい、笑顔の可愛い女の子だった。
顔だけでなくスタイルも抜群だった。腰の位置が高く、手脚もスラリ。
そんなふうだから、走る姿はまさしく駿馬。運動神経も抜群だった。
そして実家がどうやら金持ちらしく、絶対、地方の田舎町では売ってないような、そんな私服を身につけていた。
偶然街中で家族と一緒にいる彼女を見かけたことがあったが、あの時はホントにびっくりした。品よくベレー帽をかぶり、お洒落なジャケットにチェックのプリーツスカート、トドメにピッカピカの黒いエナメルの靴を履いていた。あの靴のピカピカっぷりは、35〜6年たった今でも、目に焼き付いている。家族仲も良さそうだった。育ちが全然違うと思った。
・・・・・などとまぁ、こんなふうに書くと「だったら性格が悪いとか?」と思われそうだが、それがあなた、残念ながら(?)性格もめちゃくちゃいい子だったんである。ちょっと天然なドジっ子ぽい所もあり、後輩にも慕われていた。「成績に関しては普通」という部分もポイントが高い。
これでなまじか「勉強もトップクラス」だったら妬みの対象になってただろうけど、「普通〜時々赤点」だとそうはならない。なので、同級生からも愛されてたと思う。文字通り「何でも持ってる」ように見える子だった。
さて、そんなAちゃんの同級生であった、当時の私はどうだったか。
まず、体育は壊滅的にダメだった。私より走るのが遅い子なんて見た事がない。高3の時に、3ヶ月で10キロ痩せるという偉業を成し遂げた事もあったが、拒食には過食がセットでもれなくついてくる、。激しい食事制限の反動で、菓子パンを10個食べないと気が済まない脳になってしまい、あっという間にリバウンド。メンタルがボロボロになった。自分の見た目も中身も当然大嫌い。家族仲も最悪で、親の事も大っ嫌いだったなぁ(いや、今だって別に、仲良いわけじゃないけど)。
こんなふうだから、「Aちゃんは、私が持ってないものを全部持ってる」と思っていた。ホントに、ぜんぶ。
そういえば今思い出したんだけど、高3の三学期だったと思う。Aちゃんが「受験終わったらレンタルビデオ借りまくって、映画いっぱい観るぞー!」と言ってるのを聞いて居住地域格差を感じたのを覚えている。
「そうか、Aちゃんは市内の便利なとこに住んでるからそういう事が出来るのか。うちは見渡す限り周りが田んぼ、レンタルビデオ屋なんてない」・・・・いかん、いちいちこんな事ばっか考えてたら、当時の自分が気の毒になってきた(笑)。
そんなわけで、Aちゃんは私にとって、非常に妬ましい存在だったのだが、じゃあ嫌いだったかというと、嫌いではなかった。というのも、彼女は本当に、素直な子だったのである。運動会の時、白組の巨大な看板の絵を任された私、そんな私の絵をみて、Aちゃんは「スゴイ、すごい!!」と、めっちゃ感動してくれた。そんなふうに言われて、誰だって悪い気はしない。
「でへへ・・・」と鼻の下をのばす私は、キャバ嬢にころがされるオッサンのようだった。
1987年に高校を卒業した後、私はAちゃんと一度も会った事がない。
卒業して間もない頃は、友人から「〇〇でバイトしてるAちゃんにバッタリ会った」という、小ネタな風の便りを小耳に挟んだ事はあった。
しかし、それ以降は・・・・・・・何もあらず。
まぁ、そんなものである。特別仲良くしてたわけでもななかったし。
きっと彼女は今頃、平和に旦那さんと暮らしてるのだろう、子供がいるとしたらもう成人してる年齢かも、とか、そういう普通な事しか想像がつかない。
私の高校時代、同級生に「何でも持ってるふうに見える女の子がいた」、そんな過去があった。そして現在、私も彼女も50代半ば。
ああ、昭和は遠くなりにけり、なのである。
さて。
実はこの話、まだ終わりではないのである。
てか、私の中では終わってた。しかし、なぜか「後日談」が生まれてしまったのである。
あれはちょうど1年くらい前だったか。
受信箱に見知らぬアドレスからのメールがあった。誰だろう?と思ったらこれが。
・・・・・・Aちゃんだったのである。
「はぁ??????・・・・・???????」
一体、何があって私にメールなのかが、さっぱり分からない。
文面には「〇〇ちゃんから、マリエちゃんのメルアドを聞きました」と書かれている。そして。
「私の事を漫画に描いてくれませんか?」
・・・・・・・・・・・・・はぁ???????????
なんというか、メールの内容に理解が追いつかないというか。・・・・・・・・・・・・・・・・何故???????
35年以上会ってないのに、何故、急に?????
特別親しかったわけでもないのに、何故、急に??????
長々とした文面ではなかった。むしろ短く簡潔な内容だった。
しかし、「どんな事を漫画にして欲しいのか」は一切書かれていない。
「何故、漫画にして欲しいのか」にも触れてない。
Aちゃんからの突然のメール、私の、パッと読みの第一印象は「・・・なんかあんまり、うまくいってないって感じだな」。
直感で、そう思った。私の直感は、よく当たる。昔つきあってた男に「マリエちゃんて直感だけで生きてるようなとこあるね」と言われた事もある。
とにかく私は勘がいいのである。
私は、漫画に関しては触れずに「何か困った事とか、悩み事があったら、お話聞かせて下さいね」という内容の返信を送った。
その後。
それっきり、彼女からは音信不通である。
結局、あのメールの真意は一体?
多分、永遠に謎である(てか、これ以上、後日談が発生しても困る)。
ところで余談なのだが。
たまに「私の事、ネタに使っていいから〜〜!」という人がいる。
そういう人のネタは聞いてみると、大抵面白くなかったりする。
これは私だけでなく、他の作家さんも皆、同意見である。
結果的に「残念な人認定」されるのがオチなので、「ネタに使っていいから」発言は、おやめになった方がよろしいかと思う。
というわけで、なんか今日はしんみりした気分になったので、こちらの曲を聴かせて頂きます。
United Future Organization 「 Nemurenai」
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