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夢の中へ旅立った

一度なったきり、鳴かなくなってしまった電話。

今日は電話すると聞いていたのに、一度なったきり、電話が鳴らない。その後すぐにかけ直してみたけれどただ一方通行で出る相手はいない。ああ、今日は電話してくれないのか。
 仕方なく、もう1人の電話してくれそうな彼に電話する。生憎、そちらの彼は、他の誰かと電話しているようだ。まあそんな都合よく、物事は回るわけなどないだろう。そんなことはわかっている。彼と言っても別に付き合っているわけではない。ただ、呼び名をつけるには、まだ私の中では早いのだ。まだ電話でしか会話を交わしていない人を名前で呼ぶには。
 私が名前で呼ばないのには、理由がある。名前というのは、私の中で個性であり、一人称で人であり、思い入れが自然と入ってしまうのである。だからか、私は人を特に異性を名前で呼ぶことを無意識の中で避けているのであると思う。

情がうつることで、別れ際が辛くなってしまうから。

とはいえ、名前で呼ばずとも、別れ際は辛いのだ。少しでも軽減したいという自己満足だが。

翌朝になり、また、寝てたと連絡があったが、どうにも信じがたいが、こういう時は、経過を見るに尽きるので、放置しておく。だが、私も性悪なために、彼がしたように眠りについて朝同じように返す。小さなことだけれど私にとっては少しな嫌がらせ。気づかないかもしれないけど。抵抗したいのだ。少しでも。

本当に好きになる前に少しだけ。

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