あべたかふみ

なんか色々やってますわ。 ジュークボックスのようなnoteにしたいであります。 ht…

あべたかふみ

なんか色々やってますわ。 ジュークボックスのようなnoteにしたいであります。 https://twitter.com/dirtyrockhero

マガジン

  • 木曜日の恋人

    SKYWAVE FMで毎週木曜日23時から放送の「東別府夢のDream Night」にて朗読されましたおはなしたちです。読み切りですのでお好きな所からどうぞ。

  • 音楽

    音楽の寄せ集めでございます。

  • 短編映画

    2009年〜 自主制作した短編映画でございます。

  • アルバム『素晴らしい世界』

    2018年10月頃から作り始めて2019年の2月に完成したアルバムです。宅録です。収録曲順にまとめてみました。シェゲナベイベー。

最近の記事

ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜60 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち その①』

 校庭の片隅でゆめちゃんはあさがおに水をあげていました。  きれいに育ったあさがおは水を浴びて嬉しそうです。  花びらによりそうように、ジョウロから出た水が虹を描き出します。  じぶんが種をまき、ここまで育てたことを、ゆめちゃんは誇りに思いました。  空を見上げると、もこもことした夏の雲があり、木立からはセミの鳴き声が聞こえてきます。もうすぐ夏休み。これはそんな季節にはじまる物語…… 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち』  教室に戻ったゆめちゃんは授業の準備をします。宿題の

    • ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜59 『怪物・稲村』

       もしもあなたが熱心な高校野球ファンならば、1990年夏の甲子園から始まったあの伝説のことはよくご存知だろう。  90年から92年に渡る夏の甲子園三連覇、91年、92年の春の選抜連覇、三年間の間に五度の日本一という称号を手にするという、今までも、そしてこれからも破られることは無いであろう偉業を成し遂げた岩手県立一関第三高等学校。そしてこの偉業の中心人物こそが稲村亮太である。試合で見せる彼の圧巻の投球に、いつしか人々は彼のことをこう呼んだ。 「怪物・稲村」と。  甲子園と

      • ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜58 『太陽に乗り遅れた二人』

         父親が倒れたという知らせを聞いた時も、その五日後に亡くなったという知らせを聞いた時も、まるで遠い異国の地の天気予報でも聞くみたいに、川島の心にはなんら感情も湧いてはこなかった。せめて通夜と葬儀にだけは顔を出せと、兄からの強い要望で、約十五年ぶりに川島は故郷へ帰った。  電車から降り、あきれるほど見窄らしくなった故郷の街並みを見て、彼はすぐにでも東京へ引き返したくなった。海からの湿った風さえ嫌みたらしく首筋にまとわりついた。  実家で兄と兄嫁と会い、初めて中学生の甥と会っ

        • ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜57 『しあわせな家族の肖像』

           よく晴れた日曜の朝、福井家のダイニングテーブルで家長である史郎が新聞を読んでいる。  妻の純子がトースト、ベーコン、スクランブルエッグ、そしてコーヒーを載せた盆をキッチンからテーブルに運び、二階にいる娘に呼びかける。 「絵里、朝ごはんよー」 「はーい」  絵里が階段を降りてくる。両親に「おはよう」と挨拶をし、窓辺に行き外の天候をたしかめる。 「わー、いいお天気、気持ちいいね!」 「さあ、食べましょう。ほら、お父さんも、新聞はあとにして」  史郎は「ああ」と言っ

        ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜60 『ゆめちゃんとふしぎなおともだち その①』

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        • 木曜日の恋人
          60本
        • 音楽
          35本
        • 短編映画
          7本
        • アルバム『素晴らしい世界』
          15本

        記事

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜56 『24年の片思い』

           もはやそこは僕のよく知る商店街ではなかった。  学校帰りによく立ち寄った古本屋はなくなり、珈琲は不味いが静かでくつろげる喫茶店もなくなっていた。趣味の良いソウルミュージックを掛けるバーも、安さと量が売りのラーメン屋もみんな、どこかで見たことある店に取って代わられていた。そしてあの定食屋も。  当然だ。あれからもう二十年も経っているのだから。  二十年は物事を変えてしまうのに十分な時間だ。初々しい大学生の若者を、いとも簡単にくたびれた中年に変えてしまう。  あの定食屋

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜56 『24年の片思い』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜55 『小さき者たち』

           私が初めて《小さき者たち》を見たのは、就職して南にある大都市に住むようになってからだった。北国出身である私は、それまで《小さき者たち》を見たことがなかった。  なので私にとって《小さき者たち》は、物語の登場人物同様、架空の存在で、ファンタジーの世界の住人でしかなかった。  はじめて見た時も、少し驚きはしたが、みなが言うように嫌悪や恐怖を感じることはなかった。あれはたしか梅雨が明けて、本格的に夏が到来した頃だった。  私の家に一人の《小さき者》が現れた。  夜に帰宅し

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜55 『小さき者たち』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜54 『馬の娘、再び』

           わたしは馬である父と、人間である母を持つ「馬の娘」と呼ばれる女。  以前、わたしは両親がどのように出会い恋に落ちたかを語った。  今日これから話す物語の主人公は今回もわたしではない。わたしの両親でもない。それは、ある一頭の馬である。  ジャンボ。それが彼の名前だ。  ジャンボは父の唯一の親友だった。血気盛んな若者が集う競走馬界においては珍しく、彼はどこかひょうきんな様子で、競争よりも楽しく人生を過ごすことに価値を置く馬だった。そのことが父の気を許した。  父と母が

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜54 『馬の娘、再び』

          飛べ

          なにを求めて叫んでる? その声 いたずらに嗄らして なんのために泣いている? その目を 見開いてよく見ろ 時代(とき)は河に飲み込まれて やがてすべては藻屑となる 歴史の海を漂って それでも誰かの糧になる 飛べ この空はお前のものだろ? 飛べ この世界を愛し続けるために 愛を求めて叫んでる この声 乳飲児のように 愛を信じて泣いている この目は なにも塞げやしない 飛べ この空はお前のものだろ? 飛べ この世界を愛し続け 飛べ この空から見下ろす景色を 飛べ いつの日か教えてくれないか 聞かせてくれないか なにもかも吹き飛ばしてくれないか 歌と演奏:あべたかふみ mix:髙橋太郎 ※こちらは2022年に公開した曲ですが、また新たに作り直しましたので新バージョンとして公開いたします。

          ナツノブギー

          とべないのは 鳥で なけないのは 犬で やまないのは 雨で すげないのは 君で どうせ どこぞの誰かの腕に抱かれて 君は夏のブギで大わらわ せつないのが Summer Day さめないのが 熱で あけないのが 夜で つれないのが 君で どうせ 俺のことなど気にもかけないで 君は夏のブギで大わらわ 不埒な芸能で 夜毎のたわむれ Ah woo とびだす 君の面影求めている どうぞ 笑顔も涙もくれてやりなよ 君は夏のブギで大わらわ 淫らな幻想で 孤独のたわむれ Ah woo とびだす 君の面影求めている 愛のやり場を探してる 歌と演奏:あべたかふみ MIX:髙橋太郎 ※こちらは2022年に公開した曲ですが、また新たに作り直しましたので新バージョンとして公開いたします。

          ナツノブギー

          ナツノブギー

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜53 『ゆめちゃん、ろうどく会をするの巻』

           ついにその日がやってきた! ゆめちゃんは町のこうみんかんでろうどく会をすることになったのです。  それは二ヶ月まえのことでした。  きんじょにすむたかちゃんという男の子がゆめちゃんのおうちにやってきました。 「やあゆめちゃん。おいらしょうせつをかいたんだ。よんでくれるかい?」  たかちゃんが書いたのはみじかいおはなしでした。  おとこの人がおんなの人にこいをする大人のおはなしでした。 「わー。すてき。たかちゃん、これすごくいいよ!」とゆめちゃんはよみおえてからい

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜53 『ゆめちゃん、ろうどく会をするの巻』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜52 『21世紀のスマートな恋愛事情』

           待ち合わせ場所についた蓮は、スマートフォンのYouTubeアプリでショート動画を見ていた。いくつかの動画を見たあと、Xを開き、タイムライン上の投稿を見て三つの投稿に「いいね」をしてから、贔屓にする職業野球の球団の公式アカウントが上げた、今夜の先発投手の画像が付いた投稿を「今日も勝つぞ!」と文言を添えてリポストした。そこへ、さくらがやって来て「おまたせ」と言った。二人は付き合い始めてひと月で、いかにも仲睦まじい様子で腕を組み組み映画館へ向かって歩き始めたのだが、それぞれがやり

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜52 『21世紀のスマートな恋愛事情』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜51 『木曜日の変人』

           泣きながら彼は言った。 「どうして嘘ばかりつくんだよ」 「え?」とわたしは答えた。  それがわたしたちの交わした初めての会話だった。  携帯電話もインターネットもない、ゆるやかに、けれど大きく時が流れていた頃の話だ。  わたしはまだ十代だった。  大学に進学し、東京で一人暮らしを始めたばかりで、世の中についてなんにも知らない子供だった。  そもそものきっかけは間違い電話だった。 どしゃ降り雨のある木曜日、夜十一時のことだ。彼は雨に負けないくらい激しく泣いてい

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜51 『木曜日の変人』

          我が懐かしきジョイラック

          古書店で本を眺めていたらエイミ・タンの小説『ジョイ・ラック・クラブ』を見つけた。これはアメリカで89年に発売され、93年には映画化もされた作品である。 背表紙に記されたこの『ジョイ・ラック・クラブ』という文字に、僕の胸は深い郷愁に打たれた。 と言って、この小説を読んだことはない。映画を見たわけでもない。 そもそもどんな話なのかも知らない。 ではなぜか。 VHSを使っていた世代の人には馴染み深い習慣だろうが、昔はどこの家庭にも「誰が使ってもいいビデオテープ」というものが一本は

          我が懐かしきジョイラック

          世話がヤケるぜ

          過日、自宅本棚の整理をしていた所、背表紙が日焼けしていることに気がついた。 それはまあ当然のことである。 南にある窓に対し、本棚は北にあり、日中カーテンを開けておけば日差しは本棚に向かって差し込むのだ。 嫌だな、と思った。「あずましくないな」と自分の故郷である北海道弁で思った。 うちの本棚は手前と奥の二列に置けるもので、手前には特に好きな本を置いている。つまり一軍。 奥は一部は署名本とか、そういう貴重な本で、あとの多くは二軍の本たちだ。 ではこの二軍を前面に持ってきたら大切

          世話がヤケるぜ

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊿ 『楽しいショーがはじまるよ』

          「舞台の脚本を書いてみないかね」と友人に誘われたのが二年前。  それはちょうど僕が脚本を担当していた深夜ドラマが打ち切りとなった秋の頃。『公然のアッコちゃん』というそのドラマは、ネットにより透明化された社会で会社員であるアキ子がプライバシーを失っていくという、デジタル世界における危機管理を題材としたブラックコメディ作品で、僕の意欲作だった。それが打ち切りとなり、当然自信喪失。ネット上では好意的な書き込みもあったものの、ほとんどは酷評という波に攫われていった。 「とにかく書

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊿ 『楽しいショーがはじまるよ』

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊾ 『日本バンガル通信』

           近頃、若者たちの間でバンガルが再び脚光を浴びている。  これは大変驚くべきことである。バンガルは日本において忘れられた存在となって久しい。  私のようにバンガルの普及運動を行なっている者にとっては大変喜ばしいことである。  約半年前のことだ。  多くの若者たちに支持され、絶大な影響力を持つユーチューバーのチュー太氏が自身のチャンネルである「チュー太のチューチャンネル」内で「目指せ日本代表! マイナースポーツに挑戦」という動画を公開した。その動画内で取り上げられていた

          ショートストーリー劇場〜木曜日の恋人〜㊾ 『日本バンガル通信』