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リスク把握から始めるカスタマーサクセス

お久しぶりです、前回の投稿からだいぶ時間が空いてしまいました。

本日は、10/20 に開催された「BtoB×SaaS×CS LightningTalks CSOps編」でお話しした施策についてご紹介しようと思います。(note書くよ!に反応してくださった方々、お待たせしました)


この記事で伝えたいこと

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SmartHRのカスタマーサクセスはまだまだ成長フェーズで、良い意味でも長期的に同じ施策・オペレーションを運用するのは難しいのが実情です。(お客様の規模やフェーズ、提供プロダクトも変化しているが故ね!)

そんな中、1年以上継続して実践している ということは、結構幅広く世のカスタマーサクセスの方に活用いただけるのでは?と思い、このテーマを選びました。

仕様を詳細に書いていたら結構な長編になってしまったため、初見の方は「リスク管理によるSmartHRが得た効果」だけ読んで、興味があれば戻ってきてくださいね。

リスク管理とは

SmartHRでは「リスク = 解約につながるリスクと定義しています。よって、リスク管理とは、CSM がキャッチした 解約リスクを可視化 することです。

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なぜリスク管理を始めたのか?

当時のCSMとマネージャーが感じていた課題の一例です。

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CSMに関わらず、お客様対応をされたことがある方なら、経験したことがあるのではないでしょうか?
つまり、当時のカスタマーサクセスグループはこんな状態でした。

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どんな仕組みを作ったのか

やっと本題です。

そこで CS Ops が作った仕組みは、Salesforceのカスタムオブジェクトを利用した「リスク」の運用です。Salesforceを利用されている企業さんなら、明日からでも運用できる仕組みになっています。(たぶん)

1. 仕組みの全体像

SmartHRではCRMとしてSalesforceを利用しています。SmartHRのプロダクトは、1企業 = 1アカウントでご利用いただくサービスのため、Salesforceの「取引先」というオブジェクトに各種契約情報が保管されています。

その「取引先」に紐づけて「リスク」を起票する仕組み を設計しました。

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また、その起票した「リスク」に CSM担当 や NextAction の情報を登録することで、リスクの1つ1つがタスクのような役割を担っています。リスクの発生から完了までの流れは、非常にシンプルかつアナログです。

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2. リスクオブジェクトの設計

「リスク」オブジェクトを構成する情報を、詳しく解説します。

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■ 赤字部分:リスク作成〜追客(更新)フェーズで利用する項目です
① リスク名
リスクの概要を簡潔に記載(何が課題なのかわかるよう書く)
② 取引先
リスクが発生している取引先を紐づける
③ 所有者
リスクの担当者です、担当CSMが設定されます
④ 解約につながるか
選択肢は「解約につながる」「現時点では不明」の2つ
⑤ リスク種別
選択肢は「○○によるリスク」「△△によるリスク」「その他のリスク」等、各社さんのリスク種別に応じてカスタマイズをお勧め ※詳しい値は秘密
⑥ グループ合計MRRの影響度(自動入力)
今月解約となってしまった場合の会社へのインパクト(つまりChurnRate)を表示。[取引先] で保有しているMRR情報をリスクに連携させ、数式項目による算出をしています
⑦ 詳細
リスクの詳細や、対応メモとして利用
⑧ NA(NextAction)期日
CSM自信がリスクに対しての次回アクション期日を設定
⑨ NA(NextAction)詳細
アクション内容を設定
⑩ 備考
メモとして利用

グループ合計MRRの影響度 以外の項目は、すべてCSMの手動登録・更新としています。CSMはこれらの項目を自身で確認・管理しながらリスクの対応を行なっています。

青字部分:リスク完了フェーズで利用する項目です
① 完了
選択肢は「完了」「失敗」「リスクではなかった」の3つ、この項目が入力されることによりリスクはCLOSEとなります
② 完了日
完了となった日付を入力
③ 結果(着地点)
どのような着地でリスクが完了したのかを入力(「失敗」「リスクではなかった」場合も入力を必須としています)


その他のポイント(オブジェクトの右部分)
・リスク運用のマニュアル(ドキュメント)へのリンクを掲載しています。
・取引先から契約情報を表示しています。

3. レポートによる分析

取引先(企業情報)に対してリスクを起票することにより、下記のようなデータを組み合わせての分析が可能となります。

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例えば「解約可能性がある企業一覧」が見たい場合は、「解約につながるリスクが発生している企業」のレポートを作成します。

まず、レポートタイプは「取引先」を選択。
※「リスクが関連する取引先」を選択したくなりますが、ぐっと堪えてください。

実際のレポート作成画面です。

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ポイントは、検索条件のクロス条件機能です。この機能を利用することで、取引先に関連するリスクの条件も、抽出条件に含めることができます。

さらに、レポートのアウトラインとして「次回更新日」や「グループ合計MRRの影響度」など、分析したい情報を追加していきます。そうすると、以下のように「解約リスクが発生している企業の更新月別のMRR影響度(ChurnRate)」のレポーティングが可能となります。

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つまりは、こんなものが確認できるようになるんです。

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4. ダッシュボードの運用

リスクを利用したダッシュボードの一部を紹介します。先述のクロス条件を利用したレポートにより、「解約につながるリスクが発生している企業のMRR合計金額」や「更新月別のリスク影響度(ChurnRate)」を表示しています。

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また、リスクレコードをレポート化することで「直近一週間で作成された新規リスク」や「完了したリスク」を表示しています。ダッシュボードには所有者ロール(= 担当CSMの所属チーム)によるフィルタを設けることで、各CSMチームでのリスクの共有と相談が習慣化しています。

毎週のCSMチーム定例で見られているレポートです。

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5. Slackとの連携

SmartHRはビジネスチャットツールとしてSlackを利用しています。そこで、Salesforce Apexを利用し「Salesforceで特定のオブジェクトを作成すると、作成されたレコードの情報を元にSlack投稿をしてくれる便利な機能」を活用しています。(リスク管理以外でも利用)

この機能とSalesforceの「フロー」を利用して、毎週1回、NextAction期日が切れたリスクを自動アラート(Slackに投稿)しています。Salesforce内でchatter機能を利用することも検討したのですが、chatterだと情報が閉じてしまうという懸念もあり、Slackに投稿することで担当CSM以外も状況を確認できるようになりました。(Salesforceにアカウントを持っていなくとも確認できる!)

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期日切れアラート以外にも、解約につながるかどうかが更新された時、リスクが完了した時にもSlackに通知しています。こちらはプロセスビルダー機能を利用)そういったリスクの動きの可視化は、各種リスクへの対応状況の可視化であり、すなわち顧客と担当するCSMの可視化につながっています。

また、「成功」で完了したリスクについても共有されることで、CSMの頑張りをみんなで称賛する文化も醸成されました。

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リスク管理によるSmartHRが得た効果

これらのリスク設計と運用を通じて、SmartHRが得た効果、イメージいただけたでしょうか?

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解約リスクに対する意識が高まる
NextActionの設定や期日切れ自動アラート、また影響度(Churn影響度)を把握することで、個人だけでなくCS全体の意識が高まる。

CS全体のリスク状況がまるわかる
リスクのチケット化により、全てのリスクの担当者・種別・ステータスなどの情報がまるわかりする。

確認や相談が習慣化
リスクダッシュボードを作成、新規・完了リスクを誰でも確認できるようにしたため、相談や共有しやすくなる。

CSMをホメする文化が形成
リスクの成功を可視化、Slack連携することで、CSMの頑張りを賞賛できる。

解約回避ナレッジが溜まる
リスク単位でSalesforceに起票、また最終的なリスクの結果(着地点)を残すことで、リスク成功のナレッジが蓄積される。

Churn Rate見込みっぽいものができる
取引先(企業情報)とリスクを関連させて分析することで、更新月別のChurnRate見込みが算出できる。


最後に

ユーザーの課題管理/状態管理/ヘルススコア設計にお悩みであれば、ちょっとアナログに「リスク管理」と言う手法もありじゃない?と参考にしていただければ幸いです。

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