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トラベルテディ・プロジェクト 〜ぬいぐるみ留学生が世界へ飛ぶ〜 その3:留学の準備

子どもが「外国語は必要だ」という実感、「外国語をもっと知りたい」「外国語を使えるようになりたい」という学習への動機を持つためにはどうしたらいいのでしょうか。

これは、実際に外国とつながる体験に勝るものはないと私は考えています。つまり、自然に、どうやっても外国につながる状況を授業の中に生み出すことで、外国語を使う「必要性」を作る。そのためには①日本語以外の言語を使う人と直接つながる、②日本語以外の言葉が使われている実物を教室で扱う、の2つがあります。

トラベルテディ・プロジェクトはこの①に当たります。今回は「ぬいぐるみ留学生の準備」について書きます。

「このプロジェクトの概要」「相手の見つけ方」はこちらです。

ぬいぐるみ留学生を決める

まず、クラスの代表として留学に出かけるぬいぐるみを準備します。これは「トラベルテディ」や「テディベア」といっていますが、クマである必要はありません。かわいければOKです。

おすすめは「日本からやってきた」と相手が実感できるものです。ご当地ものでもいいと思いますし、世界で人気があるアニメのキャラクター、有名なメーカーのぬいぐるみでもいいと思います。もちろん人形でも大丈夫です。ただ、壊れやすいもの、へたりやすいものは、帰国時に面影すらないくたびれた状態で帰ってくることがありますので、注意が必要です。

毛足が長いものも注意が必要です。毛がフワフワでかわいいと、子どもたちは夢中で触ります。あまりに子どもたちにかわいがられ過ぎて、脱毛が始まってしまったり、毛が絡まって毛玉になってしまうこともあります。手垢でうすら汚れてきた場合、お風呂(洗濯機)に入れるかどうか、これは結構重要なポイントです。

サイズは20センチくらいが一番扱いやすいです。小さめの箱に入りますので郵送費もかからず、子どもが持ってちょうどいいサイズです。大きすぎると郵送費が高くなります。また小さすぎると紛失の危険性が高まります。

私の学校でも色々なぬいぐるみを使ってきましたが、ここ数年は「リラックマ」が定番です。日本のメーカーで世界的にも知名度があり、見た目もかわいく、毛足が短く、お風呂(洗濯機)にも耐えます。またサイズが20センチ前後で大きさもちょうどいいです。

毛足が短いもの、丈夫なもの、お風呂(お洗濯)にも耐えるものだと長持ちしますし、何度も留学に出かけることができます。私の学校では歴代のトラベルテディたちがたくさんいます。中には複数回留学に出かけているベテランもいますが、ベテラン勢はみんなリラックマです。

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名前を決める

ぬいぐるみが決まったら、みんなで名前を考えます。子どもたちも真剣です。自分たちの代表として出かけていく仲間の名前を自分たちで決める。様々な意見や考えが出ます。すんなり決まる時もあれば、議論が白熱しなかなか決まらないこともあります。

私はこの活動には時間をかけます。意見が割れたりみんなで議論するということは、それだけ子どもたちが真剣に考えているからだと思うからです。できるだけ子どもたちだけで、みんなが納得できる名前になるように見守ります。

ただ、どうしても意見が割れて決まらない時は、自分の好き嫌いではなく「ぬいぐるみにとってベスト」なものは何か、日本語がわからない人たちでも呼びやすい名前かどうか、「日本らしい」と感じる名前かどうか、というような視点のヒントを子どもたちに与えます。実際にネイティブの先生に名前を読んでもらい、言いやすいかどうかを確認することもあります。

パスポートを作る

国外に出るということは、パスポートが必要になります。このパスポートを作るのも子どもたちです。日本のパスポートや国外の色々な地域のパスポートを見比べて、どんな情報が載っているのかを確認します。

次に、パスポートに載せる情報を子どもたちで相談して決めます。これは毎年子どもたちによって内容は違いますが、受け取った相手がどんな情報を知りたいかな?ということを考えさせています。

次に(ここが一番大事だと思うのですが)何語でパスポートを作るかを子どもたち自身で決めます。日本語で作ったら相手は読めるかな?世界の色々なパスポートは何語が使われているかな?と声をかけます。

言語を決める重要な要素として、相手が何語を使っているのか知る必要があります。図書室に行って色々な本で調べます。すると、国旗、人口や通貨、首都など様々な情報を見つけ始めます。それらをどんどん記録させます。クラスのみんなで調べると、情報がどんどん集まってきます。集まった情報を元に、使う言語を子どもたちで決めます。

相手のことを考えたら「その国の人たちが使う言葉」、実物のパスポートで必ず使用されている「英語」、この2つが大体子どもたちが選択する言語です。一方で「日本語も紹介したい」と日本語を併記することも多いです。いっぱい調べて、みんなで考えて、子どもたちが選択した言語であれば、基本的にはOKとしています。

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あとは、留学生が入るトラベルボックスを作ったり、相手へのお土産を準備したり、自己紹介の手紙を書いたりと、子どもたちが「一緒に送りたい!」と思ったものは自由に準備をさせています。

出発までのお世話(これ大事!)

ぬいぐるみ留学生が決まったら、クラスメートとして毎日一緒に教室で過ごします。授業も一緒、移動教室も一緒、お昼も一緒、休み時間も一緒、掃除も一緒です。日直さんのように当番を決めてお世話係がその日のお世話を担当します。

気がつけば、教室でぬいぐるみ留学生の席ができ、手作りの教科書やノート、鉛筆もでき、お昼用のお弁当ができ、お部屋ができたり、お洋服を着ていたりと、子どもたちの想像力は止まりません。帰る時に教室で一人ではかわいそうだから、と職員室まで届けに来ることもあります。

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この「ぬいぐるみと一緒に過ごす」時間が長ければ長いほど、充実すればするほど、子どもたちはぬいぐるみに愛着を持ちます。留学先でも「元気にしているかな」「今、何をしているかな」と本物のクラスメートのように気にかける、心配する心。これが、留学先でぬいぐるみが体験したことを「自分事」として感じられる大切な仕掛けです。

次はいよいよ、相手の留学生の来日です。

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