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仕事に活きるIR資料の読み方

IRとはInvestor Relations(インベスター・リレーションズ)の略で企業が株主や投資家向けに情報を発信することです。
投資するに値すると信用してもらうために企業が財務状況や業績の見通しなどを伝えるもので、会社やその事業のことを知れる情報の宝庫です。

その情報があるのは主に開示の義務のある上場企業にはなりますが、企業のWebサイトにアクセスすれば誰でも見ることができます。

しかし、公開されている情報は細かく、貸借対照表(B/S)損益計算書(P/L)キャッシュ・フロー計算書(C/F)などで項目が細かくあり、苦手意識がある人も多いと思います。

目的にもよりますが、公開されている情報を全て見なくても、P/Lの一部や、わかりやすくスライドにされている決算説明会資料を見るだけで十分にビジネスに活かせるポイントがあります。

私の場合は取引先と会話する時や事業の企画や戦略を考える時に参考になったので、主にそういった実用的なことに役立たせられるIR資料の見るべきポイントについて書いていきます。

何の会社なのかを捉える

まず会社が何で売上と収益を立てていてどの分野が成長しているのかを調べます。

例にソニーを見てみましょう。
以下はソニーの個人投資家向け会社説明会資料からの引用です。

以下は2019年度の決算説明会資料からの引用です。

これらからわかることは、ソニーは今も売上比率は最も電化製品(エレクトロニクス)が高いものの1997年から見ると比率は減少しており、金融やゲームの比率が1997年に比べて増えてきていることがわかります。

イメージング&センシングの分野は伸びていますが、それを除いた電化製品の分野より利益が大きい分野が複数あるもわかります。

今でもソニーは電化製品の会社ということはできるかもしれませんが、もはやそれだけの会社ではありません。

極端な例かもしれませんがこれを知らずにソニーと取引する時に電化製品のイメージで話してたら、別分野での需要だったため話しが嚙み合わず、商談に失敗してしまうなんてこともあるかもしれません。

会社の中で事業がどのような位置づけになるかはPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)というフレームワークで考えるとわかりやすいです。

占有率が高い事業が会社を支えていると考えられ、成長率の高い事業が今後の注力事業になる可能性が高いです。

事業ごとの売上とそこから原価と販売管理費を引いた営業利益の推移を見るだけでもそれはわかります。

会社全体はP/Lに売上と営業利益は書いてあります。
それらでざっくり事業がどのような状況なのかを知ることができます。


・売上と営業利益が増えている事業→安定した事業です。

・売上は増えているが営業利益が増えてない事業→資金を投じている成長事業です。

・売上が増えてないが営業利益が増えている事業→コストカットを行っている事業です。

・売上も増えてなく営業利益も増えてない事業→衰退している事業です。

これで取引を増やしてくれそうな会社かがわかるということになります。

企業によっては何にお金を使うかまで決算説明会資料に書いてあることがあります。
採用支援の営業であれば、「人件費を増やす」などが重要な情報になりますし、マーケティング支援の営業であれば「広告費を増やす」などが重要な情報になります。

企画系の仕事にも活かせる

ここまでは取引を拡大してくれそうな会社かどうかを調べられたり、
事業の情報をインプットして取引先とコミュニケーションを取りやすくするなどの活用方法が考えられますが、
IR資料は対外的なものだけでなく社内での事業企画などでも参考にすることができます。

例えば私はプログラミング教育事業の戦略を考える時に、
オンライン英会話の上場企業のIR資料などを参考にしていました。

オンラインでの学習需要が伸びているかや、
その時々で個人向けの学習と法人向けの学習どちらの方が伸びている時期なのかを知ることができました。

プログラミング教育事業を行っている競合他社は上場していない会社が多いですが、
上場企業のグループ会社になっている企業も多く、
どれだけ会員数が伸びているかなどはIR資料から調べることができました。

競合他社が伸びているということは市場全体が伸びている可能性が高いので自社の事業のポジションの置き方も悪くないだろうと判断することができます。

流れを読めた人が勝つ

投資家とはキャピタルゲイン(株価の値上がりで得られる利益)や配当を得るために業績が伸びそうな投資先を探しています。

そのような人々向けに作られているのがIR資料のため、どこの企業や業界に将来性があるかということを知るための指標になります。

どこの業界や企業の業績が伸びていて資金が集まっているかを知ることができれば、
投資家だけでなくビジネスパーソンも日々の仕事を有利にするような行動を取ることができます。

細かいところまで読み込まなくても有益な情報がたくさん載っていますので、
興味のある会社の決算説明会資料からでもぜひアクセスしてみてください。

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