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翻訳としてのデータ分析#50 時間を味方につける

リルケと村上春樹の言葉

先日誕生日を迎えた。インド人の友人が、メッセージと合わせて詩を贈ってくれた。

Find patience enough...to endure, and simplicity enough to believe; that you may acquire more and more confidence in that which is difficult, and in your solitude. And for the rest, let life happen to you...
- Rainer M. Rilke

正直、意味を掴み切れていないのだが、

・どんな孤絶や困難な状況でも信じられるシンプルな何かを見つけろ
・あと我慢強くなれ
・そうすれば、自ずと人生開ける

だと理解した。そしてこれは村上春樹の言う「時間を味方につける」に似ているなと思った。

仕事と時間の関係について

分析職を10年続けて、自分の何が上達したかと言うと「目の前の人の欲求を満たす分析結果を出すこと」だ。その速度と精度が最も向上したと思っている。

もう少し言うと「求められた数字を直接的に提供するのではなく、ヒアリングして、実用的な落とし所をすり合わせること」もその過程に含まれる。

自分で言うのも何だが、どの職場に行っても、相手本位で分析を行う速度と精度にこだわり、磨き続けてきた。

結果、割とどの業界でも職人として食っていける自分なりの分析スタイルは一旦確立できたと思っている。自己評価だから全然違うかもしれない。あるいは世のツールが進化しただけで、僕はほとんど何も変わっていないかもしれない。けれどまあとりあえず、確立できたとする。

で、この10年間、念頭にあったのは「目の前の人をデータで感動させたい」というシンプルな願いだけだ。そしてあとは業務として、実践と技法の習熟に励んだ。

マネージャーとしてはさておき、手を動かすいち職人としては、それでよかったなという気がしている。

分析を活用する分野や組織を専門的に絞って、特化する方向もあっただろう。あるいは分析以外の何かを身につけて掛け合わせる方向もあっただろう。

ただ、自分が充実感を得られる形で、分析職務を遂行しながらスキルを高めてきたという意味で、僕は自分の歩んできた道を、後悔していない。

そして幸運にも、同じ方向で多様なキャリアを積み上げて、効果的に経験値を積むことができたと思っている。やっていることは同じデータ分析だけど、練度を高めてきた実感がある。3年前の自分よりも1年前の自分よりも、今の自分の方が、確実にいい仕事をする自負がある。

そんな具合に、これまでのところは概ね、時間を味方にすることができたと思っている。

学生時代はそんなことわからなかった。学習さえすれば大抵のスキルを身につけられるのだから、時間よりも努力がモノをいうと思っていた。爆発的に努力すれば何とでもなると思っていた。

だが、仕事というのはそうではなかった。

自分1人で実現できることなんてごくわずかで、途方もなく沢山の思いとリソースが絡み合う。例え自分をコントロールしても、仕事の結果はコントロールしきれない。仕事の質と時流が噛み合ったときにしか大きな成果は生まれない。

だから基本的には「信じられるものを、地合いが整うまで磨き続けること」が最良の戦術となる。

ただし、続けるだけでも大変だ。続ける価値があると、自分も周りも納得できないと続けられない。だからリルケの言う通り、シンプルな信念を見出し、周囲を納得させる我慢強さが肝要になってくる。

そうすれば時間が味方になって、何かを成し遂げられる……。

個人レベルの達成であれ、組織レベルの達成であれ、そういう構図が多かれ少なかれあるなと、10年働いてみて実感している。

だからこれからも、迷う局面があったら「時間が味方になりそうかどうか」を考えたい。そんな34歳の誕生日でした。

サポートされた者たちから受け継いだものはさらに『先』に進めなくてはならない!!