むぎちゃ

むぎちゃの物置

むぎちゃ

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最近の記事

日記

 遅すぎた恋だった。  高校3年間、枯れたJKライフを送ってきた私は恋愛という感情にかなり鈍くなってしまっていたのだろうなと今になって思う。  きっと好きだった。自覚するもっとずっと前から。ただそれに気付かなかった。  自覚した瞬間のことは今も鮮明に覚えてる。 「今月末で小木くん(仮名)辞めるから、仕事引き継いどいてもらってね」っていうパートさんの言葉。それを聞いた瞬間、私は——ありきたりな表現をすれば、自分の時間が止まってしまったような。そんな感覚をこの身に味わった。  彼

    • ぽっき〜げーむ SW

      ホームズさん、と呼ばれて。「何だ」と返す間も無くスッと伸びてきた白い腕によってシャーロックの相棒は奪い取られた。 「何すんだよリアム」 「……あなたはまたこんな体に悪いモノを」 自ら勧んで毒を体内に取り込む人間の気が知れない、と心底呆れたようにウィリアムは肩を竦めた。シャーロックの相棒はウィリアムの長いしなやかな人差し指と中指に挟まれ、一人寂しく煙を立ち上らせている。 相棒。それ即ちシガレット。煙草。 シャーロックの口寂しさを慰めてくれる欠かせないパートナーだ。 「返せよ」

      • 魅惑のプディング SW

        The proof of the pudding is in the eating. プディングの味は食べてみなければわからない 銀の匙の上、ふるりと揺れる極上の甘味。たっぷりの新鮮なミルクに、上質な砂糖をふんだんに混ぜ合わせ、その卵液をゆっくり丁寧に時間をかけて蒸しあげる。その上から甘くて苦い濃厚なカラメルソースを垂らして、最後にホイップクリームで化粧したならば……ほら、みんな大好きプディングの完成だ。ぷるぷるとした食感、なめらかな舌触り、鼻に抜けるカスタードの甘い香り

        • 抱擁 AW

          「ウィルの髪は綺麗だね」  兄さんの細く長い指が僕の髪を梳く。 「ふふ、兄さん本当にお好きですよね。僕の髪」  兄さんは僕の髪が好きだ。  兄さんのベッドで朝を迎えた日は、いつも「ウィル、おいで」と兄さんがその胸の中に僕を誘い、僕は兄さんに後ろから抱え込まれるようにして抱擁を受ける。その際に、決まって兄さんは「綺麗」と言いながら僕の髪に触れる。 「いつ見ても美しいと思うんだ。それに、とても良い香りがする」 「ん、……兄さん、ちょっと擽ったいです」  うなじに鼻頭を埋め、スゥ…

          火花 SW

          昼間の太陽の日差しの余韻を残す熱気を孕んだ夜空に、大きな花火が打ち上がる。 英国中の、たくさんの人々のこのひと夏の期待を背負って。 どこまでも果てなく広がる真っ黒なキャンバスに、鮮やかな花たちが咲き誇る。 「……はぐれんなよ」 人混みを掻き分けて、僕の手を引いて歩く君。 君の、シャーロックのその手は微かに震えていた。 掴まれた右手が熱い。 遠ざかる喧騒。人だかりを抜けて辿り着いたその場所に、僕たち以外の人の影はなかった。 切り取られた、ふたりぼっちの小さな世界。 確かめあう

          水玉 AW

          兄さま×人魚になったウィル 「おかえり、ウィル」 透明な水槽にそっと手を伸ばす。 指先に覚えたのは固く無機質な感触。ひやりとした冷たい温度。 こぽこぽと反響する水音を両の耳が拾い上げ、生み落とされた水の玉は次の瞬間弾けて泡沫となる。 見目鮮やかな鱗を纏った尾ひれが蒼く澄んだ水の中で気まぐれに遊び、規則的に繰り返される呼吸の狭間で金の糸がふわり舞う。 水の城に住む主は、未だ目覚めない。 僕はおとうとを愛していた。だから悪魔と契約を交わした。 ライヘンバッハの滝に落ちたウィリ

          ある夜のできごと

          アルバート兄さまの夢小説練習しました。 家出少女とアル兄さまのお話。 家出をした。 家出、といっても飛び出したというよりは抜け出したという表現の方が正しい。夜、家の灯りが消え、家族が寝静まったのを見計らって私はこっそり家を出た。 ダラムの夜は暗い。大都市ロンドンなら数え切れないほどの外灯が立っているだろうが、この田舎まちのダラムの外灯の数はごく少ない。 それにこんな丘の上まで来てしまったら灯りなどないも同然。 私が歩く道の先を照らしてくれるのは空に浮かぶ月の明かりただひとつ

          ある夜のできごと

          真っ赤なベールのハイミルク SW

          221年B組パロのシャーウィリです。ゲスト、アドラー先生。 「あら、ウィリアム先生。珍しいもの持っているじゃない」 「アドラー先生……」 放課後の職員室。多くの職員が出払っているせいか人影はまばら。 定位置のデスクで授業の資料を纏めていた数学教師のウィリアムは、向かいのデスクから掛けられた声に顔を上げる。 ウィリアムに声を掛けたのは保健医のアドラーだった。どうやら、ウィリアムのノートパソコンの横に置かれていたものが気になったらしい。 「チョコレート?」 「これですか?……え

          真っ赤なベールのハイミルク SW

          危険な兄弟

          某ねるねるして作る知育菓子で遊ぶ兄さまとウィルと安定の巻き込まれ大佐、そしておまけにフレッドの小話。 「兄さん、それはなんですか?」 ウィリアムが仕事を終え、モリアーティ邸のリビングへ向かうとそこにアルバートの姿があった。ただ、いつもと様子が違う。 アルバートは手に見覚えのない不思議なパッケージを携えており、その顔はどこか楽しげだ。ウィリアムはアルバートの珍しい様子に首を傾げた。 「おかえりウィル。これが気になるかい?」 実はさっきユニバーサル貿易社でヘルダーに会ったときに

          危険な兄弟

          コットンキャンディ

          ウィリアムと幼女の小話。 連日降り続いた雨が上がり久方ぶりに太陽が顔を覗かせた、そんなある日の昼下がり。 しかし、久々の青空が広がる気持ちの良い空模様に似合わず、数多くの人々が縦横無尽に行き交うロンドン市内の雑踏の上では一人の少女の悲しい泣き声が響き渡っていた。 「うわ〜ん!ママ〜!」 「ほらもう泣かないの……。また買ってあげるからね?」 「やだやだ!取ってきてよぉ!」 少女の年齢は見たところ2〜3歳。 頬を大粒の涙で濡らしながら、「あれじゃなきゃ嫌なの!」と小さな指先が指

          コットンキャンディ

          Happy Happy Birthday!! MW

          「バイバイ教授!」 「さようなら。気をつけて帰るんだよ」 教授もね!と言って軽やかな足取りで教室を出て行くテイトの後ろ姿を見送る。 放課後。一日の全ての講義が終わり、生徒が家路に着き始める頃。 僕も今、この時間にしては珍しく大方の仕事が片付いたので家に帰ろうと荷物をまとめている。どうやら今日は運が良い日らしい。 教室を出て中庭を歩く。 吹く風は温かく、春の訪れを感じられる季節となった。 寒くて長い冬を越え、ようやく聞こえてきた春の足音。 何気なく、すぅと深く息を吸い込んでみ

          Happy Happy Birthday!! MW

          卒業式 学パロSW

          生徒シャロ×ウィリアム先生 「ウィリアム先生一緒に写真撮ろう!」 「先生!色紙書いて!」 「先生にお手紙書いてきたの!読んで!」 卒業式が終わったあとのホームルーム。 満面の笑みを浮かべながら駆け寄ってくる生徒たち。 その一人一人と目を合わせ、みんなと3年間の思い出を反芻する。 3年前の春、大きな期待と不安を背負いながら入学してきたみんな。 このクラスの担任として初めて教壇に立ったとき、まだ初々しく緊張気味だったみんなの顔は昨日のことのように思い出せる。 この3年は長いよう

          卒業式 学パロSW

          リアム様は告らせたい♡ SW

          か◯や様は告らせたいのパロです。フォロワーさんと遊んでミリしらでやったので内容につきましてはどうかご容赦ください汗(こんなふざけた話書いてたら本当にシャロくんの中の人がfrkwさんになって焦ったむぎちゃ) 始まりは当生徒会の優秀な書記、ジョン・H・ワトソンが放った「そういえばもうすぐバレンタインデーですね!」という一言だった。 バレンタインデー。その言葉が生徒会室に響いた瞬間、生徒会室の空気は得も言えぬ緊張感に包まれた。 生徒会長であるシャーロック・ホームズが持つボールペ

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          ホットケーキの日 MW

          朝、目が覚めるとふわりと甘い香りがして。 キッチンの方へと向かってみれば。 「ねえモラン見て!」 上手く焼けたと思わない? そう嬉しそうににっこりと笑って俺の前に皿を突き出してくるウィリアムが。その皿の上には見事なまでにふんわりと膨らんで焼き上がったホットケーキが3枚。 今朝のモリアーティ邸内の甘い香りの正体はどうやらこれだったらしい。 「おお!いい感じだな!」 ふわふわのホットケーキの上には四角いバターが乗っていて、ホットケーキの熱さでじわじわと溶けてきている。 「蜂

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