見出し画像

たぬきが死んでいた

台風の目に入る予定の街に住んでるから

車で買い出しに出た


車が多かった

多分帰省した車も増えた

いつもの道よりも騒がしい感じ


前の車が

右折、左折でどんどん減って

車間が開いた


薮のつづくみち

視界の左端



たぬきさんが死んでた



血は出てなかった

顔もきれいで

まだ新しかった

ふっくらしてて寝てるみたい

誰かが端に寄せてくれたのかも





かなしいかなしいかなしいかなしいかなしい




ドキドキし始めて

運転中だヤバイヤバイヤバイ


慌てて呼吸を確保すべく

口笛の形に固定して

うーっ(吸う)うーっ(吸う)うーっ(吸う)

同じペース

同じ音階

同じだけの空気を

繰り返そうとしたが

ドキドキのほうが勝ってしまった



油断していた



アレはぬいぐるみ!

あれはぬいぐるみ!

あえはういぐうみ!


頭で思うだけより

声に出したほうがいいと思い

大声で打ち消そうとしたが

喉がグーっと迫り上がって

まともに喋れない



涙も漫画みたいに👁💦って出るから

視界も確保しにくい

慌ててスーパーの駐車場に入る



お盆だから誰かと一緒に

いいところへ行ける

間違いなく

いい場所から来た人たちが

一緒に

連れて登ってくれる


どうか最後が苦しみでありませんように

えっ?!で終われてますように


どうかどうか

あの子に子どもがいませんように

居てももう独立して

あのこの手を離れるくらい

成長してますように

どうかお願いします



何分かなー

数年ぶりの久々だったから

体感は長かったけど

10分もたってないと思う


安全のため

エンジンを切った車の中で

固まりゆく手足の指を

壁や床に当てて伸ばしながら

すぐ治す、

すぐ治る、と

田中邦衛のように尖ってしまった唇で

呟いて抵抗していたら

戻った。


勝った。




生理がかなり重かったのと


この前の全否定が

自覚以上に辛かったらしいのと


初盆を迎える大切だった人の用事で

動いていた最中に

死に遭遇してしまったから


全てが積みあがって

慟哭してしまったんだと思う



いつもはこんなに弱くない

現に

ヤバいと思った時から

対処策を随時とっていけた

完璧だったと思う


自分を褒めたいくらいに

封じ込めれていた

だから

二度と起こらない

心配はない


私は子どもが親になるあたりまで

何があっても

死ぬことはできない

だから

図太く賢く生きる

これは決定事項なので

タヌキさんには悪いが

記憶から感情を切り取ることにした


人間である限り

エゴとおごりにまみれ

自然を荒らしながら

生きていくしかないのだ

よし、

そうだ、

そうしか行きていけないのだから

引きずられるな、

よし、

よし、と

逆巻く毛を落ち着かせて


帰路に向かったが

遠回りして

あの道は避けた。





警報が出ている

窓の外は強い雨だ

あの子は

もう、寒くない。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?