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エッセイ#3『空に残るもの』

外に出ると雲ひとつない晴天だった。

晴れた空が果てしなく広がっていて、こんな日には意味もなくただ歩いていたいと思った。太陽の光が眩しい。犬が散歩している。張り巡らされた電線は街の味になって、そんな上を鳥が飛んでいる。特に変わらない景色が良くて、それもきっと空が晴れているからだろう。足の蝶の羽を少し広げてまた歩いた。

外に出ると雲で溢れた晴れ空だった。

空の青さに雲の白がはっきりしている。この雲はいったいどんな街から流れてきたのだろうか。どんな景色を見てここに辿り着いたのだろうか。そんな事を考えながらゆっくりと動く雲を見ていると、また旅に出かけたいなと思った。風に流れる雲のように、時の流れに身を任せ、自由に生きて行きたい。それはきっとどんな形になっても綺麗なはずだから。

外に出ると雨が降る空だった。

雨に濡れるのではなく、雨を感じて生きたい。だから傘も刺さずに散歩した。服が徐々に張り付くのを感じながらゆっくり歩く。顔に溜まった雨を手で豪快に拭い、髪をかきあげる。まるで映画のワンシーンを生きているかのように。人とすれ違う時だけは、傘を忘れて急いで帰る人を演じた。帰宅後、水がある程度滴るのを玄関で待っている時には、自分が馬鹿らしくなったが、そんな繰り返しである。

これは決して大層な散歩ではない。言葉のひとつも発さなければ、誰に出会う訳でも、話しかける訳もないただの散歩である。しかし、ざっくりとした断片的な記憶を思い出し、膨らませ、なんとか文章として形に出来た時、あたかも豪華な散歩であったと思えるのが不思議だ。


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