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ギャラリー,イベントで出逢った作品

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偶然の出逢いも含めた、ギャラリーやイベントで出逢った作品たちを紹介した記事をまとめたマガジンです。
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#散歩日記

直島 地中美術館,水面,モネ,そして鍵岡リグレ アンヌ -[Undersurface]鍵岡リグレ アンヌ@MAKI Gallery

 6月某日、天王洲。  この日を待っていた。  鍵岡リグレ アンヌ「Undersurface」(6/22-8/03) アーティゾン美術館での出逢い アーティゾン美術館で展示を観て、強烈に印象に残っていた。  アーティゾン~の作家紹介は、下のとおり。  説明文にもあるように、その作品は立体的だ。(もちろん、すべてのアート作品は写真に撮ったときには本来のパワーをはぎ取られてしまうけれど)、写真にはとても写し取れない魅力に満ちていた。  アーティゾンでの展示風景↓ 惹

自然の美,愛と自己肯定 -風能奈々「このために生まれた」(6/8-6/29)

 よく晴れた、6月某日。  風能奈々「このために生まれた」2024.6.8 [Sat.] - 6.29 [Sat.] アクリル絵の具から生まれる細密な世界  遠目からは、何かきらめいている画面、としか見えないけれど、  近寄れば、その緻密さに息をのむ。  解説にあるように、絵を前にすると、まるで金属のプレートを掘ったかのような、あるいは彫刻であるかのような、はたまた織物なのではないか、といった印象をうける。  読んでもなかなか信じられない。作品たちがアクリル絵の具

記憶のなかの夜景 -[ZONE-TOKYO] YUSUKE KITSUKAWA (-7/13)

 6月29日、品川から天王洲。   YUSUKE KITSUKAWA個展「ZONE-TOKYO」初日(-7/13)  作家のKITSUKAWA氏から声をかけていただき、お話することができた。わたしは薄暮の時間の湾岸の写真を撮ることに熱中していた時期があり、作品を前に自分の経験も蘇ってきた。伺いたいことは山のようにあった。  本稿の前半は個展のようすを、後半は、伺ったお話から蘇ってきた、私的な経験や感想も含めて記していきたい。 東京湾岸、みなとみらいの夜の風景  会場

「押す」で生まれる参加意識 -大嶋奈都子[ゴロゴロスタンプ](-7/7)

 某日。北参道から外苑西通り。  一度通り過ぎ、そして気になって戻ってきた。  大嶋奈都子 個展「ゴロゴロスタンプ」(-7/7)  昼どきのせいか、ギャラリー内にはだれもいなかった。  やがてスタッフの方が出てきて、展示してあるスタンプは自由に押すことができるので楽しんでいってくださいという。  作家さんが手掛けたスタンプ。観ているともちろん、押したくなる。  スタンプラリー開催中。こういうのには弱い。  独創的に押してみたが……  違う、違う。設問をよく読も

愛,ときおり困惑 -Hyangmok Baik " You know how much I love you"

 某日、天王洲。  Hyangmok Baik「YOU KNOW HOW MUCH I LOVE YOU」(-7/13) 困惑とユーモアと  展示作品には、ヌードの男性のモチーフが登場する。緊張した面持ちにも見える「彼」にじっと見つめられて、鑑賞がはじまる。  「彼」(同じ人物なのか、作品ごとに違う人なのかはわからない)は多くの場合、動物とともに描かれる。  困っているような表情と、しかしどこかユーモアを感じさせる色彩や姿かたち、描かれ方が、なんだか気になる。 「

静と動の均衡点 -[未来のかけら: 科学とデザインの実験室]03

「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」@21_21 DESIGN SIGHT  内容、展示数とも盛りだくさんで、今回はその3回目(=最終回)。 A-POC ABLE ISSEY MIYAKE+Nature Architects  まずA-POC ABLE ISSEY MIYAKE×Nature Architectsによる、1枚の布からできたブルゾンの制作プロセスを。  つまり、下の写真のマネキンの背後の布が→スチームストレッチ技術によって、マネキンが纏うブルゾンに

機械と身体 -[未来のかけら: 科学とデザインの実験室]02

 「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」@21_21 DESIGN SIGHT 比較形態学 本物の骨と、骨格模型を取り混ぜた展示品たち。  「関節」は、産業ロボットの腕でいえば「軸」にあたる、重要な部分。「関節する」という違和感のある書き方も、たしかに「関節」+「する」のだ、という納得感がある。  自分も一つ持ち、使っていながらも、日ごろ「頭蓋骨」を意識することは、ほぼないけれど、  例えば、こちらの頭蓋骨は本物で  こちらはフェイク。  自由に触れることがで

ロボットとデザイン -[未来のかけら: 科学とデザインの実験室]01

 某日、乃木坂~六本木。 「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」@21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー1&2 (~9/8) 科学とデザインの間 本展では特に、開催の意図とディレクターの言葉は重要なので、はじめにそれらを、自分のなかで整理しようとした。  タイトル「未来のかけら」のイメージはできただろうか? と確認してみる。 Cycroplos & tagtype  入口付近に展示された1作品目は、ディレクターの言葉に近づくための一歩となるような作品

フレームとその内部 -セルバン・イオネスク[Lisi]@NANZUKA 2G

 某日、渋谷。  セルバン・イオネスク「Lisi」(– 7/7)@NANZUKA 2G ポップなフレームに目を奪われて  今回の展示は6作品。  作品は原色の赤、青、黄のフレームに入っており、否応にも目を引く。フレームは帽子のようにも山のようにも、建物のようにも見える。 家と、その内部  ところで、描かれている人物?というか存在なのだけど、  目を奪われがちなフレームから視線を外して描かれているそのものを見るならば、そこにはまた別の印象がある。  描かれている

持続する線と身体性 -新井 碧 [AVOWAL]@Tokyo International Gallery

 某日。品川から天王洲アイルへ。  AVOWAL(〜6/29)@Tokyo International Gallery 生きてきた身体の記憶 1年の時間を経て  新井碧作品を初めて鑑賞したのは、昨年6月、銀座の蔦屋書店の個展だ。そのときの展示作品を思い起こしてみれば、展覧会概要のなかの「より身体の機能にフォーカスしたモチーフを描いた新シリーズの作品」という意味合いもわかる。  当時のnoteに、こんなふうに書いた。  1本1本筆跡の追体験に加えて、今回はその筆を繰

[虚構という現実]経由[虚構という現実] -グループ展”BOLMETEUS” (-6/23)

 某日、渋谷のMIYASHITA PARK。  多数のアーティストが参加しており、この展覧会も全体の世界観を味わうものと捉えた。ウエブサイトを出典とし、どんなアーティストが参加しているのか、そのプロフィールと作品の写真を、まず。 GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE(ギロチンドックスギロチンディ) 横手 太紀(Taiki Yokote) 梅沢 和木(Kazuki Umezawa) Hanna Antonsson(ハンナ・アントンソン) Hyunwoo

内面の闇,そして希望 -大河原愛[静けさの内に留まる羊は,いかにして温もりを手に入れたか II]

 某日、銀座。  大河原愛展「静けさの内に留まる羊は、いかにして温もりを手に入れたか II」(-6/20)@銀座 蔦屋書店 アートスクエア  ベールに包まれた女神像のようなモノクロ作品を中心に、左右に作品が展示されている。そのようすは、祭壇を思い起こさせる。 儚さと強い意思と  顔の一部を隠された女性たちからは、儚さや憂いのようなものが漂ってくるようだった。それとは対照的に動物たちの輪郭ははっきりと描かれ、その賢そうな眼差しからは、静かで強い意思のようなものが伝わって

境界を越え,調和する -グループ展[Connect #3]@MAKI Gallery

 某日、表参道。  5人展。まずはそれぞれの作家の作品から。 ジャスティーン・ヒル ミヤ・アンドウ 塔尾栞莉 山本亜由夢 ソフィア・イェガーネ 「作品とのconnect」 はじめに、あえて作家別に紹介をしたのには理由がある。5人展ということを忘れてしまいそうになるくらい、展示空間は調和していた。  それぞれの作家の作風は大きく異なるのだけど、展示の流れがあまりにも自然で、作家同士の作品の境界線がなくなっているかのようだ。  だから途中で、入口に設置されていた

躍動,エネルギー -Ryohei Yamashita [7MOTIONS] (-6/15)

 某日、天王洲アイル。 この1枚が観たくて  Ryohei Yamashita/山下良平「7MOTIONS」@MU GALLERY(-6/15)  展覧会案内に載っていたこの作品が観たくて、足を運んだ。 大いなる力から生まれ、エネルギーを纏って駆けだす  太陽に向かって駆けてゆく姿。夕景だろうか、朝焼けだろうか。駆けているうちに時間は過ぎ去り、今度は太陽を背にまだまだ駆ける。作家のテーマは躍動だという。まさに、そんな躍動感のある1枚だった。  展示作品のなかには、