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ギャラリー,イベントで出逢った作品

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偶然の出逢いも含めた、ギャラリーやイベントで出逢った作品たちを紹介した記事をまとめたマガジンです。
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#現代アート

フレームとその内部 -セルバン・イオネスク[Lisi]@NANZUKA 2G

 某日、渋谷。  セルバン・イオネスク「Lisi」(– 7/7)@NANZUKA 2G ポップなフレームに目を奪われて  今回の展示は6作品。  作品は原色の赤、青、黄のフレームに入っており、否応にも目を引く。フレームは帽子のようにも山のようにも、建物のようにも見える。 家と、その内部  ところで、描かれている人物?というか存在なのだけど、  目を奪われがちなフレームから視線を外して描かれているそのものを見るならば、そこにはまた別の印象がある。  描かれている

[虚構という現実]経由[虚構という現実] -グループ展”BOLMETEUS” (-6/23)

 某日、渋谷のMIYASHITA PARK。  多数のアーティストが参加しており、この展覧会も全体の世界観を味わうものと捉えた。ウエブサイトを出典とし、どんなアーティストが参加しているのか、そのプロフィールと作品の写真を、まず。 GILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE(ギロチンドックスギロチンディ) 横手 太紀(Taiki Yokote) 梅沢 和木(Kazuki Umezawa) Hanna Antonsson(ハンナ・アントンソン) Hyunwoo

内面の闇,そして希望 -大河原愛[静けさの内に留まる羊は,いかにして温もりを手に入れたか II]

 某日、銀座。  大河原愛展「静けさの内に留まる羊は、いかにして温もりを手に入れたか II」(-6/20)@銀座 蔦屋書店 アートスクエア  ベールに包まれた女神像のようなモノクロ作品を中心に、左右に作品が展示されている。そのようすは、祭壇を思い起こさせる。 儚さと強い意思と  顔の一部を隠された女性たちからは、儚さや憂いのようなものが漂ってくるようだった。それとは対照的に動物たちの輪郭ははっきりと描かれ、その賢そうな眼差しからは、静かで強い意思のようなものが伝わって

境界を越え,調和する -グループ展[Connect #3]@MAKI Gallery

 某日、表参道。  5人展。まずはそれぞれの作家の作品から。 ジャスティーン・ヒル ミヤ・アンドウ 塔尾栞莉 山本亜由夢 ソフィア・イェガーネ 「作品とのconnect」 はじめに、あえて作家別に紹介をしたのには理由がある。5人展ということを忘れてしまいそうになるくらい、展示空間は調和していた。  それぞれの作家の作風は大きく異なるのだけど、展示の流れがあまりにも自然で、作家同士の作品の境界線がなくなっているかのようだ。  だから途中で、入口に設置されていた

躍動,エネルギー -Ryohei Yamashita [7MOTIONS] (-6/15)

 某日、天王洲アイル。 この1枚が観たくて  Ryohei Yamashita/山下良平「7MOTIONS」@MU GALLERY(-6/15)  展覧会案内に載っていたこの作品が観たくて、足を運んだ。 大いなる力から生まれ、エネルギーを纏って駆けだす  太陽に向かって駆けてゆく姿。夕景だろうか、朝焼けだろうか。駆けているうちに時間は過ぎ去り、今度は太陽を背にまだまだ駆ける。作家のテーマは躍動だという。まさに、そんな躍動感のある1枚だった。  展示作品のなかには、

無理に微笑まなくていい -飯沼英樹 "Roulette / ルーレット"

 某日、天王洲アイル。  飯沼英樹 "Roulette / ルーレット"(-6/22)@gallery UG Tennoz 微笑んでいない女性たち  飯沼英樹作品との出逢いは、昨年の銀座蔦屋書店(@GsiX)。  木に彫られた女性像の、力強さに圧倒された。そして彼女たちが、よくありがちな「慈悲深く微笑む」ようなようすををしていない、という点にも強く惹かれた理由だ。  本展示にはかなりの点数がある。ギャラリーの方と言葉を交わしつつ、ゆっくり鑑賞することができ、無意味に

新しい神話の断片- 久保寛子[鉄骨のゴッデス](-6/9)

 某日、銀座。  銀座一丁目。ポーラミュージアムアネックス。  作家のステートメントから。 青い尖底土器 シリーズ  自然光が射し込む空間。工事中のようにグリーンの網が張られ、入り込む光は柔らかだ。  「土器」が並ぶ。素材は工事現場などで見るブルーシートと糸。  土器は、土器であるがゆえに、(また、長い年月を経たり、出土したときに欠損することで)その形そのものの美しさを見ていなかったと思う。こうして違った素材で形だけが再現されることで、「用の美」であった土器の、シ

光の予感, 音を観る-[GOMA ひかりの世界]@GYRE

 某日、原宿。  「GOMA ひかりの世界」(-6/29) 「ひかりの世界」  展覧会のタイトルどおり、作品には  光が広がっていた。 生と死の境界にある「ひかり」  その源泉は、作家のプロフィールにある。  会場で配布されていたパンフレットには、作家が楊枝のような細く尖った道具を用いて一筆一筆、作品を制作している静かな写真が載っていた。 映像作品に没入する  紹介文にもあるように、会場は「音」に満ちている(ウェブサイト内で聴くことができ、これを書きながら、

世界と内面を記す"絵日記" -モリマサト「ヒゴロノオコナイ」@NANZUKA UNDERGROUND

 某日、裏原宿。  モリマサト「ヒゴロノオコナイ」(~7/7)  エレベーターで階上へ。 自画像彫像作品  ギャラリー2階で目に飛び込んでくるのは、  ブロンズ製の自画像彫像作品と、その背後の自画像。  2階の展示は、作家が語るところの「絵日記」が、より掘り下がった感じを受けた。  本展は、ひとりの作家の内面を巡る旅だという気がしてくる。言語化されることを拒絶して、ダイレクトに迫ってくる何かがあった。

カラフルな抽象世界の散策 -大城夏紀[project N 94]@東京オペラシティアートギャラリー

 東京オペラシティアートギャラリー。  こんなふうに、廊下に広がる「風景」があった。 風景、その抽象化  風景のように見えるその展示に置かれている作品は……しかしカラフルに抽象化されている。 視覚的連歌の世界を散策  難しい……理解は無理なのだろうかと一瞬感じて、いや、そんなふうに下を向くべきではないのだろうと思った。だって、アウトプットされた世界はこんなに楽しいのだから。 カラフルな風景の一部に  カラフルな風景を愉しみながら、ぐるぐると散策する。「詩歌」を意

瞳のなかの世界 -yuta okuda solo exhibition

 某日、六本木ヒルズ。  このウィンドウに惹かれて、六本木ヒルズA/Dギャラリーへ。  作家はTAKEO KIKUCHIでの4年間の勤務を経て、2016年よりアーティストとして活動、という経歴。下のリンクのサムネイルが「線のみで構成された細密画」の作風ということだろう。 ”with gratitude”シリーズ  「混ざり合う絵具から生まれる偶発性とペンによる緻密な必然性を織り交ぜた世界」。近寄ると、ふんだんに使われた絵の具による立体感がある。  そこからくるふしぎな

抽象化された形,その中身 -ススム・カミジョウ個展@MAKI Gallery

 ある休日の午後、@天王洲アイル。  ススム・カミジョウ個展「帰って来たら When You Come Home」(-2024/06/08)@MAKI Gallery(天王洲, 東京) 抽象化で付与される、あたたかさ  ホワイトキューブを贅沢に使った展示空間は、鑑賞用に椅子も用意されていて、心地よい。  プードルは写実的に描いてもかわいらしいと思うけれど、解像度を下げて抽象化され、一本の線に収れんされていくうちに、その線と色塗られた丸みのなかに、かわいらしさが内包され

深い青色,画面から広がる宇宙 -伊藤咲穂[BEGINNING of WORSHIP ‒ First Beheld the Blue ‒]

 伊藤 咲穂 個展「BEGINNING of WORSHIP ‒ First Beheld the Blue ‒」@ Tokyo International Gallery(天王洲)(-2024.5.18) 「青色」の世界へ  作品はすべて青色。白い空間に、青い窓が開いているようにも見える。   距離、角度、光で表情を変える  「⾃⾝で研究を重ねた独⾃の漉き⽅によって⽣まれる錆和紙により、⾃然を想起させる⾊鮮やかな作品を制作する」と、さきの説明にあった。その制作手法

【写真】原美術館ARC-ウォーホル,奈良美智,ホスピタリティとメンバーシップ

 2021年1月11日、惜しまれて閉館した品川区の原美術館。同年4月、群馬県渋川市の別館「ハラ ミュージアム アーク」が「原美術館ARC」として再び開館したことは知っていたけれど、訪ねないままになっていた。 朝、バスタ新宿  午後からは快晴予報、の予報を頼りに、朝にバスタ新宿へ。  高速バスは渋川駅で下車。渋川駅から路線バスに乗り換えて30分ほど、停留所は「グリーン牧場前」。牧場、に縁のなさそうな服装のわたしがひとり降りようとしていく姿はふしぎに見えたらしく、「えっ?」