マガジンのカバー画像

ギャラリー,イベントで出逢った作品

116
偶然の出逢いも含めた、ギャラリーやイベントで出逢った作品たちを紹介した記事をまとめたマガジンです。
運営しているクリエイター

#銀座

内面の闇,そして希望 -大河原愛[静けさの内に留まる羊は,いかにして温もりを手に入れたか II]

 某日、銀座。  大河原愛展「静けさの内に留まる羊は、いかにして温もりを手に入れたか II」(-6/20)@銀座 蔦屋書店 アートスクエア  ベールに包まれた女神像のようなモノクロ作品を中心に、左右に作品が展示されている。そのようすは、祭壇を思い起こさせる。 儚さと強い意思と  顔の一部を隠された女性たちからは、儚さや憂いのようなものが漂ってくるようだった。それとは対照的に動物たちの輪郭ははっきりと描かれ、その賢そうな眼差しからは、静かで強い意思のようなものが伝わって

新しい神話の断片- 久保寛子[鉄骨のゴッデス](-6/9)

 某日、銀座。  銀座一丁目。ポーラミュージアムアネックス。  作家のステートメントから。 青い尖底土器 シリーズ  自然光が射し込む空間。工事中のようにグリーンの網が張られ、入り込む光は柔らかだ。  「土器」が並ぶ。素材は工事現場などで見るブルーシートと糸。  土器は、土器であるがゆえに、(また、長い年月を経たり、出土したときに欠損することで)その形そのものの美しさを見ていなかったと思う。こうして違った素材で形だけが再現されることで、「用の美」であった土器の、シ

二次元上の三次元表現 -アレックス・ダッジ個展@銀座 蔦屋書店

 アレックス・ダッジ個展@銀座 蔦屋書店、5/15まで。Maki Fine ArtsのほうのPart1は見逃してしまったので、Part2のほうを。 奇妙な立体感に、嵌る  ポップアートの展示か~、などと、軽く通り過ぎようとし、  えっ? と思ったとき、もう作品世界にくぎ付けになっている。  作品は1枚のボードに描かれている。  それなのに、この立体感は?  画面のなかで、世界は楽しそうに崩壊していく。  そうかと思えば、  今度は画面に、階段が現れる。 手を

【写真】BIG CAT BANG@GINZA SIX

 大型連休某日、銀座。  GINZA SIX。  その中央吹き抜けに…  彼らはいる。 「岡本太郎の創作遺伝子」  説明にもある、大阪万博→岡本太郎「太陽の塔」、の連想は、初見であってもわかりやすい。  「創作遺伝子」、については、写真を撮っていて、納得できることがいくつか見えてきた。  この猫さんたち、  「かわいい」と一言ではいえない、ちょっと禍々しい?(否、神々しい?)パワーもある。  ここに来る前に見かけた、岡本太郎の立体作品を思い起こす。 さまざ

意味を纏った後に見えるもの -山本雄教(グループ展「ART NOW→FUTURE」)

 某日、銀座シックス。  蔦屋書店 銀座の展覧会で、面白い経験をした。 グループ展「ART NOW→FUTURE」(-3/6)  アーティスト・山本雄教の作品。 遠目からは、ピクセルのようだが  ドットで描かれているような、これらの絵は  近づいてみると、敷き詰めた1円玉の上を、なぞって描いたものだ。  子どものころ、そんな遊びをしたかもしれない、と、まずは、なつかしさを覚える。 既視感のある有名作品のシルエット  こんなふうに、  ああ、どこかで見

群衆,遠吠え -Yu Seto「HOWL」@銀座 蔦屋書店(-2/16)

 遠吠えするオオカミ。  親とおぼしき1頭と、  おそらくは子供たち?  Yu Seto「HOWL」@銀座 蔦屋書店(-2/16)彫刻家・瀬戸優の新作4点。  その等身大の野生動物の姿はリアルで、テラコッタで創造されたものだとわかりながらも、あたたかな血が通い、息づかいが聞こえてくるかのように、感じられてしまう。  遠吠えとは、コミュニケーション。  展示作品の周囲には、こんなふうにカフェに集う人たちがいて、彼らの多くは、スマホやPCの液晶を見ている。  彼ら

エネルギー,脱皮 -宮本果林 作陶展 [con anima]@銀座 蔦屋書店

 銀座 蔦屋書店で出会った、笠間焼の動物たち。  目を引かれるのは、まるで亀裂のような、その表面だ。 陶の動物に感じる生命、躍動感  彼らのポーズと相まって、非常に大きなエネルギーを内部に得た犀と牡牛が、自らの皮を破り、大きく成長していくような躍動を感じる。  どのように制作されたものなのか? 興味が抑えられなくなってくる。 “心、魂を込めて、生き生きと”  作家による、ステートメント。  “裂文”という手法は、はじめて知った。  最後のところで作家は手を放し

行き場を失う視線の先 -佐藤誠高[Reality -Dancing on the Edge-]@銀座 蔦屋書店

 佐藤誠高個展「Reality -Dancing on the Edge-」@銀座 蔦屋書店(-2/14)  まるで目隠しのように、顔を覆われた人の顔。  モノクロ写真への加工? とも思えるが、  近寄って観ると、写真でなく、手法を変えて描いているようだ。 視線の行き場  脳はエネルギー消費が非常に大きいため、できるだけ負担を減らそうとするという。  自分の場合に照らしてみれば、たしかに日常生活のなかで、人の顔を見るときは目を見る。そのほかのディテールは、よほど注

アートによる刺激の面白さ -荒木由香里[Talkative happy colors]@銀座 蔦屋書店

 日曜日の銀座、歩行者天国。 荒木由香里 個展「Talkative happy colors」@銀座 蔦屋書店 インフォメーションカウンター前 (- 02/16) へ。  展示の中で特に目を引いたのは、3足並んだ赤いハイヒール。  近寄って覗き込んでみれば、  そこにはさまざまな物たちが、挿し込まれている。 作家のステートメント  後になってステートメントを読み「なるほど」となったのだけど、わたしが連想したのはこんなことだ。 思わず靴を擬人化して  ハイヒ

言葉を刻み生命を吹き込む- 彫刻家 大森暁生展-血路-@蔦屋書店 銀座

  彫刻家 大森暁生展-血路-@蔦屋書店 銀座(-12/24) 動き出しそうな動物たちの像  展示会場でまず目をひくのは、2体の立体作品。生きているかのような、ほぼ原寸大とおぼしき動物たちだ。  なめらかな質感、どこか達観したかのような表情。森を支配する大型動物たちが、身を潜めている姿が再現されている。ゴリラ?のほうは「森神」という言葉が作品タイトルにあり、手負いではなく現実を超越した動物として創造されたのかもしれない、と思う。  そして今にも、次の動作が生まれそう

無垢,癒し,超越- タカハシマホ個展「MUYU MUFU (No sorrow, no wind」@蔦屋書店 銀座

 タカハシマホ個展「MUYU MUFU (No sorrow, no wind」@蔦屋書店 銀座  銀座シックス6階の、エレベーターで上がったすぐのところに、2カ所に分けて展示。まず、この立体作品に、ふわっと和まされて、  ふと背後のスターバックス横のスペースを見れば、このように作品が展示されている。  かわいい。 少女像→あの子(ANOKO)  概要を読んでみる。ただのかわいいイラスト、から超越したなにか、の理由が少し見えてくる気がする。 幼子→神へ  迷

"物語"の続き -[第八次椿会 あたらしい世界“ただ,いま,ここ”]@資生堂ギャラリー 銀座

「第八次椿会 あたらしい世界“ただ、いま、ここ”」@資生堂ギャラリー 銀座。  まず「椿会」とは、ということから。 シーズン3からの”ドラマ” afterコロナの「あたらしい世界」についての3年目の展示ということで、あたかも連続ドラマのシーズン1と2は概要だけ読み、シーズン3を観てみました、という状態になった。  とても練り込まれた企画展、ということは(たぶん)感じることはできつつも、理解がほぼ追いついていない。  資料は、公式サイトで公開されている「展示作品について

Ecology: Dialogue on Circulations Dialogue 1 [La Vita Nuova]崔在銀 展@GINZA MAISON HERMÈS

 11月某日、銀座。  GINZA MAISON HERMÈSで開催の展覧会へ。  インスタレーション作品を中心に、紹介していきたい。 大地からの返信 コンセプトありきの作品なので、説明文を先に。  埋め続けることによって生まれる「対話」。 White Death 次の展示室に入れば、  展示室に敷き詰められた、今は生命を失った珊瑚。  文脈は全く異なるのだけど、この展示は、森美術館で開催中の展覧会にある、帆立貝が一面に敷き詰められた空間を思い起こさせる。(本作

数の迷宮を彷徨う -宮島達男[Life Face on Gold]@AkioNagasawaGalleryGinza

 アーティスト宮島達男作品といえば、忘れえない直島の「家プロジェクト」。デジタルカウンターが時を刻み続ける、静寂の世界。  銀座で、一味違った宮島作品の展示が行われていると知り、足を運んだ。  実は、行ってみた日は残念ながらタイミングが合わず、  日を改めて再び。  訊ねた時間にはほかの鑑賞者はおらず、撮影OKとのことだったので、ゆっくりと鑑賞し、撮影し、という贅沢な時間を過ごさせていただいた。 「動かない」宮島作品  Life Face on Gold@ Aki