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ギャラリー,イベントで出逢った作品

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偶然の出逢いも含めた、ギャラリーやイベントで出逢った作品たちを紹介した記事をまとめたマガジンです。
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2023年6月の記事一覧

[ヘラルボニー×成田空港] -新たな言葉と共に,想いを受け継ぐ

 成田空港、LCC利用者にはおなじみの第三旅客ターミナル。  第二ターミナルからの長い旅を終えて、セキュリティチェックに向かう通路に、そのスペースはある。  いつもは急いで通り過ぎがちなのだが、この日は少しここで時間を過ごそうと思っていた。 アート×休憩所 @第三旅客ターミナル  ヘラルボニーとは?  すでにさまざまなメディアで紹介されているが、主に知的障がいのあるアーティストととライセンス契約を結び、多様な事業を展開しているベンチャー企業。  事業は成功し、企業

札幌大通地下ギャラリー[500m美術館] -通行人と展示作品の"同期"

 まず、この作品の、ほんのさわりから。 地下コンコースの「美術館」  展示場所は、札幌大通地下ギャラリー「500m美術館」だ。  500mすべてではないのだけれど、かなり長く長く、作品は続く。 道行く人と作品が、やがてシンクロ  この展示は、500m美術館 vol.42 「The WALL vol.4 富樫幹展 – 平行する時間軸 – 」。  地下道の壁に、この作品が続く。なるほどと感じたのは、次第に、その存在が無視できなくなってくるところだ。  壁画が、「ただ

片山真理 個展 [CAVERN] -美,身体,独立と選択肢

 片山真理 個展、[CAVERN](-2023/06/24)。場所は西麻布交差点のギャラリー、GALLERY ETHER。  その作品をはじめて観たのは、森美術館だ。  「完璧とは?」 をストレートに問いかけられた。セルフポートレートで表現された作家の身体は確かに欠損してた。しかしながら、身体はさまざまな人工的なパーツによって補完、装飾され、1つひとつが美しさにあふれていた。そして身体そのものも、ほかのものと同じひとつのパーツにすぎないように思えてきた。  ちなみにウィ

新井碧[持続する線]@銀座 蔦屋書店(@GSIX) -身体の記憶,追体験

 新井碧 個展「持続する線」~6月20日@GINZA SIX内の銀座 蔦屋書店。 「身体の記憶で描く」  「眼でなく、手で描く。意識の記憶でなく、身体の記憶で描く。」作家はステイトメントで語る。  鑑賞する者は、まず全体を眺め、キャンバス上を走る線を追うことになる。いや、そうしないではいられない、と思う。  細い線、勢いよく太く駆け抜ける線。ダイナミックに動き回る線。1本1本の、その「筆跡を追体験」することになる。  この追体験をして(させられて)しまうところが胆だ

Kenichi Nakaya 作品展[虚歪民藝]@銀座 蔦屋書店(@GSIX)

 「Kenichi Nakaya 作品展『 虚歪民藝』(きょわいみんげい)」(06月09日まで)。終了間近になってやっと足を運べた。展示場所は、GINZA SIX内の銀座 蔦屋書店 スターバックス前。 民芸品→アートへの変換  興味を惹かれた理由は、サイトにあった下の紹介文だ。  「昔ながらの民芸品は、好ましくも飾りにくい」。短いながらも説得力がある。たしかに心惹かれるところはあるが、個性が強すぎるということなのか、自宅のリビングに置けるかというと悩ましい。 信楽焼の

[吹きガラス 妙なるかたち,技の妙]展②技術発展と,手仕事と

「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」@サントリー美術館。①では展示の中でも異色の「第Ⅴ章:広がる可能性 ――現代アートとしての吹きガラス」についてまとめた。  今回ははじめに戻り、ガラスという素材と、技術の進歩にともなう洗練の歴史を見ていく。  なお、館内は基本撮影禁止だが、各章で数点程度の撮影許可作品があった。その写真をもとに、感想とともに振り返っていく。 ■ ■■ 古代の吹きガラス-注ぎ口の作り方  解説にある「道具が限られた」時代とはいえ、ものの形として現代から

[吹きガラス 妙なるかたち,技の妙]展①[ガラス×現代アート]表現の追究

 「吹きガラス 妙なるかたち、技の妙」@サントリー美術館。古代ローマから現代に至る、繊細なガラスの世界。博物館的な、学術的で静かな世界が広がっていることを予想し、まずはその通りだった(ためになった)。  その中で、例外的に「展示風景も、展示作品も撮影OK」の第5室は、いい意味で全体の流れから外れた、現代アートの部屋となっていた。  まずそこから、振り返っていきたい。 「Amorphous 21-1」 横山翔平(2021)  わたしの受けた印象も、上の解説に同じく「巨